(番外編)10話 皇 秀英の重要会議 5
けれど、僕は冷静にその焦燥心を抑え込んでいた。
僕の目標は、キルコさんと最期の時まで一緒にいること。
その目標を確実に達成するための計画を、僕はすでに立てていた。あとはそれを着実にこなしていくだけだ。
「キルコさんの僕への気持ちを確かめるための時間は確保しているので、そのほかの時間はキルコさんには純粋に楽しんでいただきたいと思います。
プランは23個考えました。皆さんには今の話を踏まえ、このうちどちらがより良いか、プランに穴はないかを検討してもらいたいと思います」
僕は、23のプランを説明した。
「すみません、もう少しゆっくりと。トメは坊ちゃんの言葉についていけません」
「坊ちゃん、明日試験じゃなかったでしたっけ……」
「坊ちゃんはいつも試験勉強をしないのよ。しなくてもできるから」
「羨ましいわね。うちの息子なんてしてもしてもできないのに」
「うちの娘なんてそもそもしないしできないわ」
「――以上です。何かありましたらお願いします」
「はい! はい!」
「なに、母さん」
「なんで絶対秀ちゃんのお部屋に招待することになってるの!? だめ! 秀ちゃんのお部屋だけは、行っちゃだめ!」
「じゃあ削除する」
「うん、お部屋は行っちゃだめね」
「それにしても、坊ちゃん、意外とプレイボーイってやつなのかしらねぇ」
「はじめての恋愛でどうしたらいいか分からないんじゃないかしらね」
ひそひそと話す家政婦さんたちの声の上を潰すように、頭を抱えていた母さんが低い声で唸った。
「ああ、心配だわ! こんな野獣のようなプランを立てて……女の子との関わり方が全然なってないんじゃないかしら!? 大丈夫なの? 失礼なことを言ったりしたりしていない? そもそもちゃんとアプローチできているの!? 心配で仕方ないわ!
はっ、そうだわ! 当日は私が一緒についているわ! そうすれば、アプローチのタイミングや、失礼な言動があったら教えてあげられるし!」
母さんが一緒に行動する……。
正直、嫌だった。僕はキルコさんと2人で過ごしたかった。僕は何度も断ったが、母さんは断固として訊かず、子どものようにいやいやを繰り返した。僕は諦めるしかなかった。
以前秋葉原で怖がらせるようなことをしてしまったし、今後そういったマイナス評価を得ることがないようにするいい勉強の機会だと思い直すことにした。




