(番外編)10話 皇 秀英の重要会議 1
昔から、美しいものが好きだった。
氷の結晶、味噌汁に浮かぶ六角形、適切な土の配合と太陽光を浴びて育った花……。
自然に溢れる美しいものや現象を見つけるたび、それがなぜ美しいのかを研究するのが好きだった。
僕は、美しいものを見るために、それがなぜ美しいかを知るために――つまり、美しいもののために生きていた。
人や生き物の造形に心が惹かれることはなかったけれど。
だけど、彼女を一目見た瞬間、僕は生まれてはじめて、人を美しいと思った。
直後、彼女のような美しい遺伝子配列になる可能性を計算した。銀色の髪に金色の瞳、通常の人の遺伝子には起こり得ない色が肉体に出る確率も含めながら。
1.762%。
彼女は、唯一無二の人だった。
「私、このもふもふに埋もれてみたいです」
不思議な人だ、と思った。
美しくありながら、不思議さを持って存在できる確率を計算した。
0.529%。
彼女は、奇跡そのものだった。
そんな奇跡が、僕に言った。
「一緒に死んでしまいましょう。ジャパニーズ・心中です」
その瞬間。
僕は、彼女と一緒に死んでしまいたい、と思った。
彼女と一緒に身を投げて、彼女とともに桜に堕ちながら――。
僕は、彼女と人生の最期を迎えることができる確率を計算した。




