表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
62/120

9話 お呼ばれでお仕事 10

 13時ぴったりに、「行きましょう」と皇が立ち上がった。

 畳12枚ほどの書道の部屋に連れられた。真ん中にテーブルが置かれ、その周りに座布団が4枚敷いてある。

「どうぞ」と座布団に座るよう促されて座る。

 後ろの襖が開いて、化粧を直した皇の母が現れ、私の隣に座った。

 皇が私の前に黒い布を敷き、筆と墨の入った丸い器を置いた。

 ジャパニーズ・筆……! 私は手に取り、じっと眺めた。緋王様の愛用の筆に似ている。なんだかたちまち欲しくなってきた。推しとお揃いのものが欲しいというオタク心がくすぐられる……!


「何か書きたい字はありますか?」


「そうは言ってもはじめてなんだし、なるべく簡単な字がいいんじゃない?」


「皇で」


「え?」


 推しの名前を書く。それぞ、小さいながらも推し活の基礎基本! 「緋王」も書きたいところだが、今日はせっかくの皇dayなのだから、皇縛りでいこう。


「一字だし、簡単だし、いいアイディア! 秀ちゃん、お手本書いてきて」


 皇は困惑した顔のまま奥の机に正座した。そこは、皇の特等席らしかった。筆に力を込めながら書をしたためる皇の広い背中に、恍惚とした。

 皇が、書き上げた。私の横に置かれた皇の「皇」に、ドキッとした。あまりに均等で美しかったからではない。皇の字がデカデカと……! もはやこれは、サインでは……?


「これ、もらってもいいですか……?」


「こんなものでよければ……。いや、もう少し書いてみます」


「待って! まずは持ち方とか、書き方とか、そういうのを教えてあげて」


「すみません。では、まずは持ち方ですが、右手首を28度ほど曲げ、中指、人差し指を10度ほど曲げで……」


「ああもう! そうじゃなくて、手取り足取りすればいいの!! キルコさん、こう! こう持つ! 姿勢はこう! こぶし一つ分! で、いい? 秀ちゃん。こうやって、手を握って、一緒に書いてあげるの。力加減とかも分かるし、一石二鳥でしょう!?」


「大丈夫です。そこまでしなくても、書けると思います」


 私は、墨で筆を整え、筆先をそっと紙に乗せた。筆の三分の一ほどを紙に沈めて、ゆっくり手首を上げながら下に描く。皇の一番上の点ができた。同じようにして、四角や横線を、手首を回しながら書いていく。


「あら……上手だわ……」


「さすがです」


 当たり前だ。私は神。できないことなどない。


「じゃあ、秀英まで書いちゃう?」


「え?」


「書きます」


「え?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ最後で笑ったのじゃ!書いちゃう?じゃないのじゃ!キルコも書きますと平然と言っておるのじゃ!面白いのじゃ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ