表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
59/120

9話 お呼ばれでお仕事 7

 中庭に向かう。晴天の下の柳のような木の枝が、風を受けてそよそよと靡いていた。

 皇の母が、私に耳打ちした。


「あれ、枝垂れ桜なんだけど、もう葉桜になっちゃったの。また来年、ね」


 草履を穿いて、庭に出た。胸に抱いていた運命写真機を、先に出ていた皇に向ける。

 皇も私にスマホを向けていた。


「撮らせてください。私が先に撮りたいと言ったので」


「はい……」


 皇はスマホを帯に挟め、気をつけをした。


「硬い! もうちょっとキメたポーズとって! こう、こう、体を斜めに向けて、顎の向きを、こう!」


「何度くらいか指定して」


「知らないわよ、数字なんて! とりあえずカッコつけちゃえばいいじゃない! ああ、もう! はい、力抜いて! こう、こう、こう! どう? よくない!?」


 皇の母が皇の体の向きを手動で調整してくれたら、かなりよくなった……! う……よすぎる、ちょっと困った顔も、むしろセクシーに見える!

 確実に、持ってる中で一番いい写真だ。

 最高のブロマイド、ゲット……!

 ホクホクしていると、「次は僕が撮ります」と皇が言った。


「僕のスマホで撮って、あとで送ります」


「私、スマホは持っていません」


「えっ、そうなんですか」


「じゃあ、撮ったの、印刷してあげるわ」

 

 池の脇に立って、さっき皇がやったのと同じ角度に体を向けた。カシャ。体の向きを変えると、また、カシャッと鳴った。少し表情をかえると、それもまたカシャッと撮られた。

 いいな、スマホ。私の写真機は一日一枚しか撮れない。こんなに連続でカシャカシャと撮れたら、四六時中萌え放題じゃないか……。


「じゃあ、次、ツーショット!」


 皇が私の横に並んだ。見上げると……か、カッコよかった。至近距離の着物皇、尊すぎる……!

 皇が私の視線に気付いたのか、私を見下ろした。

 ひっ! し、し、至近距離で、好きすぎる顔に、見つめられている……っ!! しししし、心臓が、バクバクする……っ!

 カシャッ。


「キルコさん! これは撮影会よ! 好きなリクエストしていいのよ! 手をつないだり、腕組んだり!」


 撮影会……! 昔、ニッポンDANJIのファンクラブ限定イベントだったものだ。ファンクラブ加入者のうち、抽選で当たった数名が時々招待される推しのメンバーと一緒に写真が撮れる機会だ。今はもうあまりの人気にやめてしまったが。

 だが、たしかに推しとツーショットを撮れるというのは、そのくらい貴重な機会なのである。そんないい機会を逃すわけにはいかない。

 リクエスト……。何があるだろう。皇と――推しと二人でしたいポーズ……。


 「指ハートをお願いします。一緒に」


 カシャッ!


 いい……。推しの決めポーズを一緒にする感じ!

 推してます! って感じがする! 推し事をしている感じがする!

 ギャルピと2人でハートをつくるポーズをとって、撮影会は終わりになった。


「ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました」


 お互いにお辞儀をしあい、離れの茶室に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
推しを殺しに来ねばならん立場のキルコじゃが、もはや籠絡されておるのう!面白いのじゃ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ