9話 お呼ばれでお仕事 6
「キルコさんは、秀ちゃんのどこが好きなの?」
「やっぱり顔が最高です。もう、全部が好きすぎて……もう1人、アイドルで推しがいるんですが、もしかしたら皇さんの顔のほうが好きかもしれません。少し似てはいるのですが」
「掛け持ちなのね! 私もなの! 秀ちゃんと、秀ちゃんのお兄ちゃんと、パパ! みんな顔がいいのよねぇ。顔がいいって、それだけで最高よね~!」
「はい。それでいて萌えるような言動も時々するんです。普段とのギャップが大きくて、爆弾が投下されたような衝撃で、ドキドキが止まりません」
「萌える言動? 秀ちゃんが? なになに?」
「私の髪にサクラの枝を挿したり、『守らせてください』って言ったりしたときは最高に萌えました。ファンサも、指ハートや手を振ってくれるときがもう、たまらなく萌えて……」
「うそぉ! 誰それ知らない! 私の知ってる秀ちゃんじゃない! でも、ちょっと安心したわ! 秀ちゃん、小学校から中学校までずうっと男子校にいて、高校からは共学になったけど、クラスには男子しかいないみたいだから、女の子との関わり方が分からないんじゃないかって心配していたの。心配して損しちゃった! よかった……。ああ、でも、何か失礼なこととか、言ったりしたりしていないかしら?」
「まったくありません」
「よかったわ。まあ、顔がいいからなんでも許せちゃうのかもしれないけど。何かあったら言ってちょうだいね!
他には? 他には秀ちゃんのどこが好き?」
盛り上がっていたら、いつのまにか着付けが終わっていた。
金色の帯がお洒落でいい。髪も一つにまとめて花飾りをつけてもらった。透明のサクラの花びらたちがしゃらりと垂れ下がるかんざしだった。
「秀ちゃん。キルコさんの着付け、終わったわよ」
パソコンをカタカタしていた皇が、目を上げ、私を瞳に映すなり、固まった。
「どう〜? 可愛いでしょう?」
皇は少しの間何も答えず固まっていたが、やがて、再びパソコンをカタカタと打ちはじめた。
「ちょっと秀ちゃん! 何も言わずにパソコンを打つなんて失礼よ! おやめなさい!」
「適当な言葉を調べてるから待って」
「そんな……! 可愛いって一言いえばいいじゃない!」
「それは妥当な言葉じゃない」
「ああ、もう……。やっぱり心配していた通りだったわ。一緒にいてよかった!
いい? 秀ちゃん。こういうときは一言、可愛いって言えばいいの!
ああ、やっぱり女の子との関わり方に難ありだったわ……。ごめんなさいね、キルコさん。キルコさんはとっても綺麗で可愛いからね!
とにかく、写真を撮りましょう!」




