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死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
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9話 お呼ばれでお仕事 5

 皇の母に促されるまま、奥の和室に向かった。

 美しい花柄の、鮮やかな着物が五着ほど並んでいた。赤、濃いピンク、淡いピンク、橙、青。どれも可愛い……。


「せっかく若いんだし、日本文化を楽しみにきたんだし、鮮やかな色の方がいいかと思っていろいろ揃えて見たの。

 だけど、私の一押しはこれ! 秀ちゃんからお写真を見せてもらった時、この着物がぱっと浮かんだの!」


 家政婦たちがモノクロの着物を運んできた。

 左半分が白、右半分が白黒の花和柄。鱗のような上品な質感は、「しぼり」というものらしい。

 シックで美しい……。私好みだ。

 

「これがいいです」

 

「よかった! じゃあ、着替えていきましょう」


「その前に」


 私は、カバンから黒い包みを取り出し、彼女に手渡した。


「今日のお礼です」


「え? そんな、いいのよ」


「もらっていただきたいんです。開けてください」


 彼女が包みを開くと、黒い羽の髪飾りがあった。私がいつも身につけているもの――つまり、死神の鎌である。鎌には、標的が隙を見せたときに持ち主の意識と体を操り、魂を狩るよう、神力を込めている。

 家人――ことさら母親であれば、ある程度の時間はともにいる。これなら、きっと成功するだろう。


「綺麗。じゃあ、大切にするわね」


 彼女はそっと胸に抱く仕草をすると、そのまま懐にやさしくしまった。

 

 皇の母と家政婦3人が着付けをしてくれた。

 胸や腹の周りになぜかいくつもタオルを当てられ、何本もの紐でぐるぐる巻きにされていく。過程を見ていると、ワクワクしながらも目がまわりそうだった。


「キルコさんは秀ちゃんのこと、どう思ってるの?」


「推しだと思っています」


「推し……! 私と一緒ね! 私も秀ちゃんのこと、推しなの!」


 なんと……! こんなにたおやかなジャパニーズ・ヤマトナデシコが、推しという言葉を使うとは! 推しという言葉は日本のサブカル文化だと思っていたが、今や広く浸透しているようだ。


「同担拒否派?」


「同担歓迎です」


「じゃあ私たち、同担仲間ね!」


 同担仲間……! はじめて同担仲間ができた。嬉しい……!

 緋王様のライブに行って、仲間同士で参戦している周りのファンたちをみて、実は少し羨ましかったのだ。推しのいいところを語り合う仲間がいることが……。

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― 新着の感想 ―
推し活仲間ができてしまったようじゃな!
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