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死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
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8話 銃撃でお仕事 7

 ――いや、終わらせまい。


 どんなに萌えても、この男は私の標的。だから、運命写真を撮った時点で決めていた。

 今日一番のチャンスであるこのタイミングで仕掛けると。

 私は、男の脳に念じた。

 

 ――銃を取りなさい。そして、撃ちなさい。


 男が、銃を握った。そして、銃口を皇に向けた。

 音に反応して、皇が振り向いた。


「皇さん」


「キルコさん!?」


 階段から顔を出した私に、注意がそれた。

 男が、引き金を引いた。


 パァン!


 銃弾が皇の肩をかすめた。男の気配を察知して、身を避けたらしい。

 直後、皇が水鉄砲を構え、引き金を引いた。

 男の手の甲に、濃硫酸が直撃する。


「あぢぃいいいいいいいいい!!!!」


 男の手が赤く溶ける。長銃が、からんと落ちた。


「キルコさん!」


 皇が私のところに全速力で駆け寄ってきた。


「怪我はありませんか!? 流れ弾は来ませんでしたか?」


「大丈夫です」


「そうですか……。よかった」

 

 風が吹いた。皇の前髪が上がる。皇の微笑に、ドキリと、胸が高鳴る。

 皇は破れた肩をそのままに、「もう少し待っていてください」とやさしく微笑み、男の方に向かっていった。

 

 萌え……。やさしい微笑み、萌え……。

 というか、自分のほうが怪我の心配があるのに、私を優先して……。

 や、やさしい……。


 いや。だめだ。こんなことでほだされては!

 今が最高の好機。もう一度、今度は確実に仕留める!

 

 当たりに散らばる弾丸に念を送る。

 三つの弾丸が、私の念によって浮遊する。先端が、皇の心臓に向いていた。

 さあ、飛べ。そして、皇の心臓を貫くのだ!

 銃弾が私の思い通りに、皇に向かって飛んだ。


 その時だった。

 皇が、男のかたわらに膝をつき、男の赤くなった手を取った。

 鞄から出した応急処置バッグのようなものから包帯を取り出し、巻きつける。


「大丈夫ですか。すみませんでした。応急処置ですが。病院、必ず行ってくださいね」


 ……え?

 ちょ……え。さっきまで自分の命を狙っていたやつを、助け……? 

 え……っ。


 や……やさしい――――っ!!

 なんてやさしさ! まさに、無償の愛! 最高の人間性! もはや神――っ!


 ずきゅうぅうん! と太い矢のようなものに心臓を貫かれ、私の体は固まっていた。

 そして、弾丸も。皇の背後で、ぴたりと止まってしまっていた。

 

 はっと気付いた私は、首を振った。


 ――だ、だめだ! ときめきを越えろ!

 

 こいつは、推し代行。推し代行、推し代行、推し代行、推し代行……!

 こいつがいなくなっても、緋王様がいる!

 

 こいつが、いなくなっても――――。


 …………む、無理……。


 私は、ぺたりとその場に崩れた。

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