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死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
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8話 銃撃でお仕事 4

 皇が復帰した。私が様子を見に行ってから二日が経っていた。

 靴箱に、皇からの手紙が入っていた。


『キルコさん


 キルコさんと昼食をとった後、高熱が出てしましました。キルコさんは体調、大丈夫でしたか? 僕の罹患したウィルスに、キルコさんが罹っているのではと心配していました。

 今日なのですが、念のため、一日マスクをつけています。顔を見せられないと思います。なので、昼食も今日は別でお願いします。

 マスクを取れる段階になりましたら、また手紙でお知らせします。すみません。


 皇 秀英』

 

 くそ……。もうウィルスは使うまい。

 

 退屈な授業中、皇の後姿をぼんやり眺めながら、ふと、皇に対する気持ちを整理しようと思い立った。

 最近、「推せる」や、「死んでほしくない」など、萌えを越えるような感情が湧いてきている。

 「推し」という好きカーストの頂点に君臨する緋王様の王座に、皇が片足を置いているかのよう……。

 失礼! 緋王様に失礼! 背徳感……!

 大体、緋王様という推しがいながらそんなことを思うなんて、不純極まりない……! 浮気だ! 美しくない!

 皇と緋王様への気持ちを整理し、皇への気持ちに一線を引こう。

 

 まずは、皇についての感情を、頭の中で一覧にする。

 

 顔が好き。

 普段は無表情なのに真面目な顔をしたり微笑んだりするときゅんとする。

 顔が見えている時に繰り出す甘めの言動に萌える。

 つまりギャップ萌えの宝庫。

 もはや、もそもそしているところも可愛い。それでいて色気も時々繰り出してくる。

 私のために慣れないことを頑張ってくれる努力家なところが、応援したくなる。


 次に、緋王様への感情を整理する。


 顔が好き。

 常に微笑みを称えていて、存在中からやさしさと色気が溢れ出していて素敵。

 普段萌えるような言葉を言わないからこそ歌詞や演技でぽろりと萌え台詞を出した時が爆発的に萌える!!

 いつも周りへの感謝を忘れず、礼儀正しく、謙虚な物腰が日本人の鏡!

 演技や歌、ダンスの才能に溢れている上、見えない努力も欠かさない努力家なところが応援したくなる……。


 こう考えると、「応援したくなる」という気持ちが「推せる」という気持ちにつながっているようだ。

 だが、こうして比較すると、皇に惹かれている点と緋王様に惹かれている点には明らかな違いがあることが分かった。

 

 皇に惹かれているのは、主に顔とギャップ。

 緋王様に惹かれているのは、美しいお顔ときゅんとする笑顔と最上級の才能、そして、素晴らしい人間性。

 緋王様はとにかくやさしい。周りをとても大切にしていて、静かな気配りと知的な言葉で周りを温かく明るい気持ちにさせてくださる、愛に溢れた人格者! それでいて謙虚で誠実で努力家で……人間的魅力が止まらない!

 そうだ。私が緋王様を「推し」だと思ったのは、緋王様の人間的魅力を知ってから。

 私にとって「推し」とは、人間的魅力があるか否かだ。

 

 では、皇には性格面での人間的魅力があるだろうか?

 ……思いつかない!


 よし! やはり、私の推しは緋王様! 皇は推しではない! 

 空想の中で、緋王様の王座に片足をかけていた皇を、ピンと跳ね飛ばす。

 安心した。これまで通り、美しい一途の愛を緋王様に抱いて生きよう。

 

 皇は、いうなれば萌え供給機。緋王様からの萌えを摂取できない地獄のような仕事場で、萌えを摂取できる相手。推し代行といったほうがいいかもしれない。

 推し代行……うん、しっくりくる。

 そうだ。今度から、皇への鎌の手が止まりそうになったら、「こいつは推し代行、こいつは推し代行、殺しても本命の緋王様がいる……」と頭の中で繰り返そう。

 なんだか、皇を殺せるような気がしてきた。


 運命写真を撮る。皇の後ろ姿が浮かび上がる。

 このタイミングなら、確かめたいことも確かめられる。

 今日の仕事は、放課後に行う。

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