表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
44/120

7話 ウィルスでお仕事 4

 ……その前に。

 

 「脱いで!」……ってファンサ要求、しても、いいい、いいだろうか……!

 浴衣がはだけて、うっすらと胸板が覗いていて――もちろん緋王様に比べたら貧相なものに違いなかろうが……!

 この世には、顔のいい男の上裸からしか得られない萌えがあるのだ……。

 それに、何でもすると言ったわけだし……?

 

 ごくり。


 皇の横に膝をつく。

 鎌を置いて、そっと、皇の襟をつまむ。


「……う………。………キルコ、さん…………?」


 ――え?

 どう、して……。

 

 うっすらと開いたうるんだ皇の瞳——そのまなざしの先には、確かに私の瞳があった。

 だが、おかしい。私は今、人間に見えない死神の姿。死に至る寸前の、生と死のはざまにいる人間でも、死神を視認することはできない。それなのに、どうして……。

 皇の手が、私の手の上に乗った。ひどく熱かった。


「……嬉しい……会えて……。

 もう、死んでもいい……」


 皇が、溶けるように笑った。

 

 ……も…………萌え――――っ!!!!

 かかかか、可愛いっ! 可愛すぎる! いや色っぽい! いやでもかわ……色気と可愛さのマリアージュ!!!!

 だが、ダメ! 死んだら! 死んだら――!


「だめです坊ちゃん!」

「お気を確かに!」


 バーン! と横扉が開き、白装束の人間たちが十数名ほど入ってきた。

 顔をガスマスクのようなもので覆っていて、男女もわからない。

 一人の白装束が、私の横に座り、皇の手を握った。


「秀ちゃん! もう大丈夫よ!」


「キ……キルコ、さん……」


「秀英さんのおっしゃる通りに調合した薬ができました! これで前例のないウィルスの撃退ができます!」

 

 ……え?


 白装束たちがぞろぞろと皇を取り囲み、医療器具を手にする。

 注射をし、点滴を打ち、氷枕を変え、額のタオルを変え、二枚の毛布で体をぐるぐるに包まれた皇は、白装束たちが去ることろには、すうすうといつもの白い顔で眠っていた。


 皇に病気が効かない理由は、これか……。皇の薬の調合力と、それを速攻実現できる財力……。

 ウィルス以外の病気も、おそらく完治させられるだろう。


 だが、「もう死んでもいい」という言葉……。

 重い病気を患えば、「死んだら悔しい」という気持ちも削ぐことができる、ということがわかった。

 そうであるなら、今回のように、意識がもうろうとするほどの症状がでるウィルスを忍び込ませ、薬が調合される前に鎌を振り下ろせば……。


 いや。

 だめだ。きっとまた可愛くも色気たっぷりなとろけ顔になる!

 何だあの笑顔は! 今まで見たどんな顔のいい存在の笑顔より魅力的じゃないか!!

 萌え! 萌えすぎる! あんな萌えの塊を手にかけるなんてできるわけがない!!


 くっ……。

 皇 秀英……。なぜ、こんなに私好みの顔に生まれてしまったんだ……。


 もっと見ていたいと――死んでほしくないと、思ってしまったではないか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ウィルスで殺すことも失敗したのう。じゃが、最後にキルコに会えてもう死んでもよいという意味で呟いたんじゃろうかのう?死の瀬戸際で死神の姿のキルコを見られた皇じゃったのかもしれんのう。次の話も気になるわい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ