7話 ウィルスでお仕事 1
推し。
それは、この世界で最も私を萌えさせ、私を幸せにする、私の生きる糧である。
そして、最も応援したい存在である。
永く永く、頑張ってほしい存在である。
存在している事実だけで尊い存在である。
つまり推しとは、私にとって、最も生きていてほしい存在である。
***
緋王様こそ、私の推しである。
皇を「推せる」などと思ったのは、ファンサのせいで気が狂ったからだ。
緋王様にファンサを頂き、正常な精神に戻す!
私はハデスに有給を取ると電話を入れると、緋王様のライブに向かった。
来た。日本武道館! ニッポンDANJI20XX年アリーナツアー「MUROMACHI!」ファイナル!
何年も映像だけで我慢し、本場に行くのは叶わなかろうと落胆していた夢の場所にいる……。その実感が湧き上がり、思わず、涙が溢れた。
同士たちが推しグッズを抱え、ツアーシャツとタオルを纏い、幸せそうな笑顔で集まってきた。各々、推しのイメージカラーを身に纏っていた。あたりを見渡すと、緋王様のイメージカラーの赤がやはり多い印象だった。
私も、会場でゲットしたツアーシャツとタオルを身に纏い、昨晩必死に作った『こっち見て』のうちわを握りしめていたが、皆ライブに来慣れているのか、工夫がすごい。うちわの周りをきらきらしたふさふさのテープで囲んだり、髪や化粧を派手にしたり。推しに見てもらうために、命をかけているのが伝わってくる。
昨日見たファンサ一覧以外で、面白いものもたくさんあった。
『大好き』『愛してる』『いつもありがとう』――要求ではない、こちらからの愛のメッセージ。
『投げキスして』『彼氏になって』『結婚して』――あの辺は、ガチ恋勢というやつか。
『脱いで』――ん? つい、凝視してしまった。
でも、皇がやったら萌えそうなものがいくつかあった。明日学校に行ったら、早速ノートに書いて――。
って、今は皇のことはなしだ!
緋王様! 生緋王様に集中!!




