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死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第3話 帰り道でお仕事
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3話 帰り道でお仕事 2

 今日は地獄の時間割であった。

 化学、古典、物理、数学、世界史、生物。

 全て座学で皇に何も仕掛けられないし、そもそも、いわゆる理系科目というものに面白みを感じない。

 万物のあらゆるものには定義がある、あらゆるものが数字の配列でできているなどとのたまう人間の至らない思想など、阿呆らしくてくだらない。我々神の存在さえ認識していないくせに、世界の全てを分かったつもりでいるなど、本当に愚かだと思うばかりだ。

 唯一の救いは古典であった。日本の古代の文学! 言葉! ジャパニーズ・ロマンティック……!

 

 だが、その幸福な時間も一時間で終わり、再び退屈で価値のない時間が続くことになってしまった。

 その上、皇は昨日の朝の状態にすっかり戻っていた。

 前髪でメガネの下のきれいな顔を隠し、休み時間は一人ぽつんとパソコンを叩くコミュ障具合。

 私の周りに臭いブタどもがブヒブヒと寄ってきても微動だにしない。

 昨日の「守っていいですか」と言う言葉はなんだったのだ。苛立たしい……。

 しかも、その背姿を撮った運命写真に浮かんだ運命には使えるものがないときた。

 

 退屈と苛立ちとで、私は三限の物理以降、皇のことを考えていた。

 あの美しい顔を長い時間眺めるための方法を――考えそうになったが、頭を振って中断した。


 これまでの失敗と東洋支部からの情報から、皇秀英の魂を狩る方法を冷静に考えようと思ったのである。

 私は死女神。皇秀英は、魂を狩るべき私の標的。奴の魂を狩ることが、私の任務なのだから。


 まず、奴に効果のない方法と、効果がある可能性がある方法とに分類する。

 効果のない方法は、物理的な攻撃全般。物が落ちてきたり、事故が起こったり、爆発が起こったり、銃撃に巻き込んだりといった東洋支部の仕掛けをはじめ、毒物や食中毒、感染症なども結局治ってしまったらしい。高いところから落とすといった私が行った仕掛けも効かない。

 加えて、私が行った洗脳も無効だった。

 

 一方、効果がありそうなのは、ゼロ距離からの攻撃。

 だが、美しい顔と萌え言動によって回避させられてしまう……。


 裏を返せば、顔を見ず、萌え言動をさせなければ簡単に仕事を終わらせることができるということだが、どうにもタイミングが悪くうまくいかない。せめて、萌え言動を抑えられればいいものの、洗脳が効かないのでそれもかなわない。

 

 そもそも、皇はなぜ私の洗脳が効かないのだろう。

 神の力が効かないものなど、自分の力より大きな力をもつ神しかない。私の場合は、それが存在しないのだ。ハデスさえ私の力に及ばないのだから。

 安易に新しい方法を考えるより、奴が洗脳を回避した理由、死を回避できた理由を調べることが先決かもしれない。

 ハデスからうるさく言われるかもしれないが、確実な結果を手にするためには必要な段階だ。

 

 今日は、皇秀英を調べよう。

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