(番外編)16話 皇 秀英の感情パーセンテージ 3
廊下から、ドタバタと騒々しい足音が聞こえてきた。
「大変です、坊ちゃん!」
バァンと襖が開く。
傷だらけの警備員三人がなだれ込んだ。
「また、あいつが来ました!」
「警備員は全員やられて……!」
「かろうじて抑えてはいますが、抑え切れるか……!」
「あら。またなの?」
またか。
玄関に行くと、金髪の男がいつものように腰に縋りつく警備員たちを乱暴に引き剥がしていた。前開きの黒いシャツから、筋肉量50㎏とみられる胸筋が見えていた。
「皆さん、離してもらって大丈夫です。僕が相手をします」
「来やがったな! 今日こそお前をぶっ殺してやる!」
警備員たちが手を離すと、やつがこぶしを唸らせ、僕に向かってきた。
こぶしが僕の右頬に触れようとした直前、パッと手のひらで受け止め、そのまま手首を捻り上げる。「いっでででで!」と嘆く隙に、足を払う。転んだところをすかさず組み伏せる。
何日同じことをやっているんだろう。キルコさんのストーカーであるこの男は、学校の屋上で雷に打たれた次の日から、毎日毎日こうしてやってくるようになった。こうして組み伏せた後、警察に身柄を突き出すのだが、いつのまにか脱走しており、この繰り返しだ。
「キルコさんは、僕の恋人になった」
「……は?」
「だから、何をしようとキルコさんはお前のものにはならない。僕がさせない」
「キ、キキキキ、キリィが、こ、こ、こ、こ………………コォッ」
やつは泡を吹いて気絶した。首は締めていなかったのに。




