(番外編)16話 皇 秀英の感情パーセンテージ 2
「何はどうあれ、恋人になったのだから、することは三つよ。
一つは、キルコさんに好きになってもらうこと。努力なさい。本物の努力は自分を変え、周りを変える。そうして必ず結果につながる。自分も周りも変わらず、結果も出ていないうちは、本気の努力をしていないということ。結果が出てないうちは、決してくじけず、努力を続けなさい。それでもだめなら、汚い手を使って結構。とにかくなにがなんでもキルコさんを手放さないよう、秀ちゃんのとりこにさせなさい。
あとの二つは、簡単よ。キルコさんを大切にして、何より愛してあげること。そして、とにかく楽しむこと。愛とは理性、そしてやさしさなんだから。
アオハル、エンジョイ!」
アオハル、エンジョイ。文法的に間違えている。エンジョイが動詞、アオハルが名詞だから、「エンジョイ、アオハル」になるはずだ。
でも、努力についての話は、たしかにそうかもしれない。僕はこれまで大して努力をしてこなかったけれど、どれも確実に結果を得られた。結果を得られないことなんてこの世には存在しない。得られなければその過程での努力が足りないだけ。結果を得られるまで、もっと努力をするだけだ。
キルコさんは素敵で、不思議な人だ。一筋縄ではいかない。これが人生はじめての、最大の努力になるだろう。
幸い、恋人になったことで、一緒にいられる時間は確保された。この時間を使って、恋愛感情として好きだと思ってもらえるよう、全力で努めよう。
食べたら早速、研究しよう。恋愛感情をどうすれば抱いてもらえるかを。
あとは、恋人としてのルールも決めておいた方がいいかもしれない。交際をやめたいと思われてしまったらそのチャンスさえなくなってしまうから。安心して快適に、かつ楽しく交際するために、巷の恋人たちがどういうルールで交際しているのか、この後データを取りに行こう。
よく考えたら、いつもの僕ならすぐにそう思っていたはずだ。昨日、キルコさんに断られた後、エレベーターが落ちる中で、僕はこのまま死んでしまいたいと思った。結局、キルコさんと一緒にいたいという思いが諦められなくて助かる方法を取ったけど、あの時の僕の気持ちは、生きる意味なんてもうないと思うほど、どん底に落ち込んでいた。そこからまだ這い上っていないために、思考がおかしくなっていたのかもしれない。
でも、もう大丈夫。落胆した感情は12%までにしぼんだ。やってみせるという強気な気持ちが30%湧き上がる。
頑張るのはこれからだ。
早く動きたくて、赤飯を一気に詰め込んだ。
母が、くすりと笑った。




