14話 映画の後でお仕事 10
結局、二人で平らげる形になった。最後の一束は私に譲ってくれた。
皇は足りなかったのか、いつのまにか私と同じパフェを頼んでいた。
甘ったるい抹茶クリームを口に運ぶ。中のスポンジも抹茶味のようだった。
私の興奮は落ち着いていた。
「質問していいですか?」
皇を見た。メガネと前髪で顔が隠れている。許可を出し難い。
「顔を見せてくれたらいいですよ」
皇は、あっさりメガネを取った。そして、前髪を掻き上げた。
ドキッ――。
やっぱり、緋王様に似ている……。
落ち着いていた興奮がじわじわと復活してきた。
「比較検証に関する質問です。三点、質問させてください。
一つ目です。僕への反応と彼への反応には結構な差があるように思います。例えば、彼が登壇した時と話しはじめた時、キルコさんは、僕の腕をものすごい強さで握って喜びました。僕に対してはそのような反応はありません。その理由はなんでしょう」
皇のカーディガンの二の腕部分がわずかに伸びていた。私が握ったところらしい。あまりの興奮で、皇の二の腕を握ったことさえ自覚がなかったし、力加減もよく分からなかった。
「よく会えるか会えないか……あとは、推しでいる期間の違いでしょうか」
「なるほど。
二つ目です。彼に望むこと、僕に望むことに違いはありますか。また、それぞれに望むことを具体的に教えてください」
難しい。違いはあるが、これもやはり距離感の違いによるものだ。もし緋王様と皇の立場が入れ替わったら、皇に要求していることを緋王様に――いや、要求できない。恐れ多い! 緋王様が皇の立場になったら、私は私を見てくれるだけで、嬉しくて昇天するだろう……。
そう思うと、皇と緋王様への気持ちは、同じ推しでも違うもののように思える。緋王様へは崇拝の気持ち、皇へは――もしかすると、甘えてしまっているのかもしれない。そしてそれが心地よい――そんな気持ちなのかもしれない……。
そう考えたことをつらつらと呟きながらパフェにスプーンを刺すと、中から一口サイズの餅が出てきた。
だが、白くない。透明だ。
これは……?
「わらび餅です」
これが、ジャパニーズ・わらび餅……! 口に入れると、やわらかくてとろけるような餅食感で感激した……! 甘さも控えめ……! まさにジャパニーズ!
皇の口元が、ふっと緩んだ。突然の微笑みにキュンとする……!
だが、皇はすぐにまた真剣な顔に戻った。そして自分のパフェをどかし、パソコンを開いた。




