表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
102/120

14話 映画の後でお仕事 9


 放心しながら劇場を出る。


 よすぎた…………。


 幸せ。幸せの極み。

 ああ…………。

 緋王様こそ私の幸せ……。

 緋王様を推していてよかった……。

 まさかこんな近い距離で、こちらを見てくださる日がくるなんて……。

 我が2000年の人生で、今日が最高に幸せな日かもしれない……。


 あぁ、おなかいっぱい……。

 酒も何もとらなくていい。この幸せな気持ちのまま眠りたい。

 だが、そうもいかないのが私の仕事のつらいところだ。

 

 ビル風に吹かれながら、人の多い光の街を、皇に導かれるままゆらゆらと歩く。

「このまま死んでしまいたい……」と呟くと、皇が私の顔を覗き込んだ。


「キルコさんの幸福度はとても高いように見えますが」


 うん、目の前に好きな顔もあるし幸福度は最高だ。


「だからこそ死にたいのです。最高に幸せな瞬間に死んでしまえば、その幸せは永遠のものになりますから」


 皇は、ほぅ、と息をついた。

 

 到着したのは和風のカフェだった。

 半個室のような空間に入る。座ると、一気に脱力した。

 皇が開いたメニューをちらりと覗くと、茶のメニューが多いようだった。ちょっとした食事もデザートもある。

 皇は茶蕎麦を、私は抹茶のミニパフェを頼んだ。


「今日はありがとうございました。はじめて映画をみました」


「はじめて?」


「はい。あまり興味がなく」


「それはもったいないです! 緋王様の出ている映画のDVD、今度貸すので観てください! 緋王様、すごかったでしょう? 登壇した時と演技の時の差……! 同じ人なのに、違う人のようで! 表情一つ、息づかい一つで感情を表現して……まさにプロです!」


「すみません、そこまで注目していませんでした。キルコさんを見ることを優先していて」


「もったいない! 今回の映画もDVDになったら手に入れるので、貸したら観てください!」


「分かりました」


 皇の前に、蕎麦が運ばれてきた。

 おお……これが、ジャパニーズ・蕎麦……。

 緋王様が長野県に行った時に食べていたものだ。あの時の蕎麦と違って緑色なのは、茶が練り込まれているかららしい。


「食べてみますか?」


 皇が箸とつゆを差し出してきた。

 3本ほど箸で取り、持ち上げる。たしか、つゆにつけて、すするのだ。

 しゅるっと口の中に入れると、ふわっと茶の香りと、違う香ばしさが口の中に広がった。つるつるで噛みごたえもいい。つゆのしょっぱさもちょうどいい。

 もう少し……と箸を伸ばすと、皇が店員につゆが入ったカップをもう一つ頼んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ