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死女神キルコの推しごと  作者: 鈴奈
第7話 ウィルスでお仕事
100/120

14話 映画の後でお仕事 7

 終会が終わって一時間後の十七時。新宿の映画館で待ち合わせた。

 皇は、白いシャツの上に黒い薄手のカーディガン、黒いパンツという格好だった。スタイルがいいだけに、メガネと長い前髪で顔が隠れているのがもったいない。


「メガネを……」


 と手を伸ばしたが、メガネを押さえられた。暗い中なのでメガネを外すといっそう周りが見えなくなるらしい。

 まぁ、この時間は緋王様がメインだからいいか。

 せっかくなら、私服皇を写真に納めたかったのだが。

 準備していたスマホを鞄に戻すと、指先が運命写真機に触れた。

 そういえば、今日はまだ撮っていなかった。

 パシャリと皇を撮る。スマホで撮られ慣れているからか、突然の撮影にも皇は何も言わない。

 出てきた運命写真をみて、ため息をついた。

 今日は緋王様に浸ろうと思っていた矢先に……。


 まあいい。一日一仕事は決めていたことだ。

 今日はこのチャンスを使う。

 

 だが、まずは緋王様に集中する。


 劇場に入ると、緋王様のファンらしき少女たちが和気藹々としていた。皆、きらきらしたうちわを持ってキャッキャと話し合っている。微笑ましい。

 のほほんとした気持ちで皇についていく。前から二番目の席だった。

 ち、近い……! 映画後の登壇が楽しみで仕方ない!


 映画は、最高だった。

 ミッションだけを淡々とこなす、冷酷な殺し屋……。

 ミッションのためにとある少年を殺すことになるのだが、それは自分の弟だった――という物語。

 わけあって親に捨てられた緋王様は、弟とは顔を合わせたことがなかったが、ふとしたタイミングで弟と交流し、心を通わせてしまう。

 憂いのある表情で錆びたビルの屋上から汚い街を見下ろすシーンの儚さたるや……。

 緋王様が映るたびに美しくて惚れ惚れした。

 しかし、映画が終わり、私は沈鬱な気持ちでボロボロに泣いていた。


「大丈夫ですか」


「うっ………………うぅ……………………」


 皇が差し出したハンカチに顔を埋めて泣く。

 また、緋王様が死んでしまった……。

 緋王様が死んでしまう映画はこれで二作目だ。ひどい。なぜ緋王様を殺すのか。私は悲しくて、許せない気持ちでいっぱいだった。

 しかも、最期の言葉が「愛してる……」。助けた弟に向けた言葉だったが、カメラ目線で画面いっぱいに映った緋王様が美しかっただけに、死んでしまったことへの悲しみが深くてならない。


「本当に死んだわけではないです。この後、登壇しますから」


「そうだとしても、いやなんです……。推しを失うなんて、世界の終わりです…………。推しには、永遠に生きていてほしいんです…………」


「…………永遠に…………」



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