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どうやら私は騎士爵夫人らしい。  作者: 中谷 獏天
誰が彼女を殺そうとしたのか。
1/22

目覚め。

2万文字以内で終わらせるつもりが、勢いって不思議ですね、分割したので20話位は続きます。

 目覚めたら他人の姿になってるの、何これ、夢かしら。


 と言うかココは、西洋の、中世?

 凄い鏡台。


 あ、私、布おむつしてる。


『ヴァイオレット、あまり動き回らない方が良い』


 凄い、記憶喪失だ、この人が誰なのか全く分からない。

 と言うか私、ヴァイオレットって名前なのね。


 多分、私は初めての記憶そう。

 あら、初めての記憶喪失かも分からない。


 凄い、前世らしき記憶も今世の記憶も無いって、詰んでるのでは。


「あの、私、頭を打ったみたいで」

『あぁ、そうだよ、しかも君は浴槽に頭から浸かっていて生死を彷徨っていたんだ』


 あらハードモード。

 殺されかけたのかしら、私。


「私、記憶が、ごめんなさい、アナタの名前も分からないの」

『良いんだよヴァイオレット、無理も無い。ゆっくり、徐々に思い出してくれれば、けれど先ずは体を治そう』


 本当、歩くのもシンドイし、ガリガリ。


「はい、ありがとうございます」

『さ、ベッドに戻ろう』


「いえ、あの、お手洗いに」

『ぁあ、じゃあ抱えて行こう、またケガをされたら困るからね』


 でもだからって目の前でするのは、ちょっと。


「あの、終わったらちゃんと声を掛けますから、戸を閉めさせて下さい」


『良いけど、無理をしないで』

「はい」


『はい、じゃあね』


 ヴァイオレットさん、凄い愛されてる様にも見えるけれど。

 何で殺されそうになったのかしら。


「終わりました」


『使い方は分かるみたいだね』

「何となくですが、はい」


 全部忘れるタイプの記憶喪失じゃなくて良かったですよ、本当。

 コレなら自転車にも、自転車、ココに有るんですかね。


『じゃあベッドへ良いかな』

「はい、お願いします」


 コレは致し方無く、介護的には当たり前。

 あ、もしかして愛じゃなくて、単なる介護なのでは。


『ぁあ、僕の名前はどうかな?』


「分かりません、すみません」

『良いんだ。僕はセバスチャン・アールバート、そして君はヴァイオレット・アールバートだよ』


「夫様ですか」

『そうだよ』


 天はヴァイオレットに何物与えたのでしょうか、美丈夫の優しい夫様と地位と容姿と。

 それと多分、お金持ちですコレ。


 あ、そうなると別の問題が、だから殺されかけたのでしょうか。


「あの、私以外、お妾さん等は」

『居ないよ、君だけだ』


 あー、せめて前世の記憶が有れば喜べたのでしょうけど、いきなりの赤の他人ですからね。

 つい、疑ってしまう、何か裏が有るんじゃないかと。


 あ、前世の私は疑い深いのかも。


「すみません」

『いや、構わないよ。飲み物を飲んで待っていておくれ、直ぐにスープを用意させるから』


「はい、ありがとうございます」


 そうして少ししてから、メイドさんがスープを持って来てくれた。


《私の事は?》

「すみません」


《いえ、メアリーと申しますどうぞ》

「はい、ありがとうございます」


 ミルク入りの優しいポタージュ、多分、豆とジャガイモ。


 そこは分かるんですね、不思議。


 と言うか、ジャガイモ?

 この時代の西洋には無い、と聞いた様な。


 あ、私、歴史を知ってる系統の女せ。

 そこも記憶に無い、女だったのか男だったのか。


 あら、物語みたいに上手くいかないんですかね、やっぱり。

 やっぱり?


 ん?


《どうかされましたか?》


「あの、私の事を教えて頂けませんか?」


《そうした事は話すなと、不要な負担を掛けるべきでは無い、とご当主様が仰ってまして。ですので他の事なら、分からない事が有りましたら、いつでも仰って下さい》


 コレ私、やっぱり、もしかして夫様に殺されかけたのでは。

 いや、ならこれだけ痩せ細る前に殺してた筈。


 それとも言い争いの末の事故?


 うん、どっちにしても怒らせない様にしよう。




 【はわわ、ごめんなさい、またドジをしてしまって】


 僕の記憶の中に有るヴァイオレットは、落ち着きが無く、ある意味で天真爛漫で天衣無縫。

 悪意は無いが手抜かりや不器用さが相まって、良くケガをしたり物を壊したり、口が滑ったり。


 悪意は無いんだと自分を誤魔化しながら、離縁か外部で再教育をさせるかを悩んでいた時、彼女は浴室で死にかけているのをお付きの侍女に発見された。


 それから1ヶ月、寝たきりで垂れ流し状態だった彼女が、急に目覚めた。

 しかも記憶が無い、とまるで別人の様に落ち着いて話す姿に。


 思わず、コレなら、と。


《ご当主様、お飲み物をお淹れしましょうか》

『あぁ、メイソン、紅茶を頼む』


 便利そうな、影の薄い、欲の薄そうな女を探していた時。

 虐げられているとの噂を聞き、事前調査もし、直接顔も合わせた。


 そこで亡くなった婚約者にそっくりで、もう半ば勢いで結婚した。


 だが中身があまりにも幼く、幼稚、元婚約者に似ている事に苛立つ日々が増えた。


 そして虐げられていたかどうかも、不明なまま。

 学が身に付かないからと、ありとあらゆる事をさせたが、コレが限界だったと。


 しかも、本人は虐げられた覚えは無いと、笑顔で。


 コレはもう産ませる為だけ、次は賢い妾を、とも思ったが。

 あまりにも良い思い出が無さ過ぎるのと、幼さと貧弱さに、全く抱く気になれず。


《どうぞ》

『あぁ、どう思うメイソン』


《暫くは様子を見るべきかと》


 離縁も再教育も妾もタダでは済まない。

 しかも領地無しの軍人と言えども、警備隊としての賃金の出処は国民、無駄遣いをするワケにはいかない。


『あぁ、そうだな』


 いっそ死んでくれないか。

 使用人に殺させるか放置して死なせるか、そう悩んでいた中での目覚めが、良い事なのか悪い事なのか。




「あ、夫様」

『調子はどうだい』


「お陰様で、一通りの事は1人でも出来る様になりましたので。そろそろ庭にお散歩に出ても良い、そうなんですが」


 リハビリ、無理せず超頑張りましたからね。

 最悪は殺されそうになったと仮定すれば、大概の事は出来ますよ、しかも秘密の日記帳には実家での事が詳細に書かれてましたし。


 あの家に戻っても、多分、良い事は無い。


『あまり日が強くない時に、無理をせずに』

「はい」


 目下は殺されない様にする事、次に職を得られる何かを模索する事。

 刺繍は異様に褒められ、比べてみると確かに他より手が早いので、お針子が第1希望。


 第2は掃除婦、と言うか掃除専門の使用人。

 第3は、最悪は体を売るしか無い、前の実家でも散々言われ。


 あれ?前?


 あ、コレ前世の記憶ですね、成程。


 ヴァイオレットの記憶は着々と蘇ってるんですけど、前世っぽいのは知識や単語がこうして偶に浮かんで来るだけ。

 女だったのか男だったのか、何をしてたか幾つでどんな風に亡くなったのか、一切不明。


 と言うか、有ったのかも怪しくなってきましたよ、私の前世。

 けどココには自転車が無いんですよ。


 あ、もしかして前世はカラスとか犬とかなのかも。


 なら、縫い物が出来るのはおかしいし。

 猿だった?


 うん、相変わらず前世の事は何も分からないので、今出来る事を磨かないと。




『本当に、頭を打つと人は変わるモノなのだな』


 大きなドジも失敗も一切、無い。

 落ち着いた物腰で話し方まで違い、聞き苦しくも無い。


 ただ、そう歓迎してばかりでもいられない。

 今までとは全く違うのは本当に、頭を打ったからだけなのか。


 もしかして、今まで僕達の方が試されていたのでは、と。


《少し、お出掛け等をして様子見すべきかと》


『あぁ、だな』


 コレまで一切、外にも出した事が無い。


 出せば恥になる、苦労したくない、次の相手に困る。

 そうした問題点から一緒に出掛ける事は勿論、お茶会の開催も無し、相変わらず病弱で体調を崩していたとして外には出さなかったのだが。


 何かして下手に記憶を思い出され、前と同じ状態に戻られても困る。


 だが、有用なら閉じ込めておくのは勿体無い。

 子を成し、妻としての役目を負って貰う為、婚姻を成立させたのだし。


《では何か有れば直ぐに馬車に戻れる案を、コチラで検討させて頂きます》

『ぁあ、頼む』

名前は本当に適当な場合と、敢えて自作品と共通している場合も有ります。

大変ですよね、名前を考えるの。

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