01.詐欺師なのに勇者PTに誘われた∑(°口°๑)
はじまりは俺の生業でもある行商だ。
と言っても俺は詐欺師なので手ぶらに近い格好で歩いていた。
俺、あんまり重いもの持てないんだよね(´・ω・`)
馬車とかも維持費とかで経費かかるし。
異世界ファンタジーだかろ亜空間ポケットとか四次元ポケットとかもあるけど、ストレージの問題とか登記とか色々あるからその辺りの中身も野営道具と食糧とちょっとの便利道具を入れたら限界だし。
ファンタジーなんだし折角の異世界なんだからもっと夢を膨らませて便利にしといてほしい。
中世ヨーロッパ風の異世界にじゃがいも芋とかフライドポテトとかあってもいいじゃない。
だってファンタジーなんだもの。
俺はそんな夢も希望もないファンタジー世界で行く先々で指名手配されない程度の行商(詐欺)をしながら生計を立てていた。
そんな訳で旅の道中出会う冒険者には安いものを高く売っていた俺だが、ある日そうも知らずにボッタクリ商品を売り付けた冒険者パーティーがどうやら勇者パーティーだったらしい。
女剣士や神官、魔法士に睨まれる中、俺はポーションなどのアイテムを街の相場の2倍で売った記憶がある。
「私の売る価格は輸送費込みだと思ってください。ご不満ならここから街へ行ってお望みの価格で購入するのも手ですね。無理に売ろうとしているわけではありません。しかし魔物も出る街から離れたこの場所では他にアイテムの入手方法などはないでしょう」
どうせここで買うしかないのだから金払えよいい装備持ってんだし金あるんだろ?
そんなこと思いながら、殴られないギリギリで煽りながらふっかけていると
「仰る通りです。我が身の危険も顧みずに冒険者達のために危険を冒してこんな場所でアイテムを販売してくださっている!あなたは本当に素晴らしい行商人です!!」
「へ?」
パーティーのリーダーらしい青年が輝く笑顔で俺の手を握ってきた。
え、何?なんなの怖い。
顔が整っていていかにも善人って顔をしてるだけに含みがあるのかないのかわからなくて、よりいっそう怖い。
「全て提示された価格で購入しましょう」
その時は金遣いの荒さからどっかの田舎貴族のボンボンの冒険者かと思ったが、2回3回と取引することになりそれが勇者だとわかった。
え、勇者やばくない?これが勇者でいいの?世界大丈夫?この国平気?
冗談はさておき。勇者パーティーは王国からも支援金が出ている。なので勇者パーティーからボッタクリしてると知れれば税金を巻き上げたとか思われてちょっと王国民から袋叩きに遭いかねない。
そんな訳で俺は勇者パーティーを避け始めた。
そうしたら
「フラウさん!行商人のフラウ・ダートルさんですよね!?」
勇者の方から寄ってきた∑(°口°๑)
「イイエ、人違イデス」
全力で逃げようとしたら手を握られた。両手で。
勇者が片膝付いててまるでプロポーズでもするかのような体勢だ。
勘弁してくれ。
「良かった!お会いしたかったんです。最近ずっと見かけないから何かあったのかと……心配で、俺……あ……たら、世……滅……」
「え?」
なに?最後の方聞き取れなかったんだけど。なんか鳥肌が立った。
勇者を見るといかにも光属性100%ですと言わんばかりの輝く笑顔だ。
「俺のパーティーに入ってください!」
「は?」
正気か?
だって勇者パーティーの仲間の皆様、すっごい表情で俺のこと見てますよ?
「是非、俺の仲間になってください!一緒に旅をしましょう!」
勇者は衆目を集めながら身分も隠さず大声で俺をスカウトし続けた。
俺の手を両手で握ったまま。
かなりの好条件高待遇をベラベラ話しているがその度に勇者パーティーの視線が冷たくなっていく。
断れば断るだけ条件が追加され何やら市民からの視線も冷たい。
お、俺は別に勇者パーティーから金むしりとるつもりなんかないんだからね!
優秀な詐欺師はギリギリ訴えられないラインを守るんだら!
トラブル避けたい!
しかし断り続けてもトラブルになる予感。
「勿論、俺ときてくれますよね?」
俺に拒否権などなかった。
ところでこの男、いつまで俺の手を握ってるんだ。
全然離れない。