野外民族と地中民族
「グネイル様、野外民族の族長殿がお見えになられました」
「分かった。今行こう」
民から報告を受けたグネイルは外界への出口へ向かった。
「どうも、お初にお目にかかるソルティエです。以後お見知り置きを」
外界と繋がる一本道を歩いていたグネイルを見て、頭を下げ言った。
「グネイルと申します。こちらこそよろしくお願いします」
グネイルにとってソルティエという男の印象は【冷】だった。何故か分からないが、そう感じたのだ。
そんなことを考えていると隣に立っていた大男が口を開き、話し始めた。
「ソルティエ様直属騎士団団長のギゼルです。お会いできて光栄です。グネイル殿」
ギゼルと名乗る男からはソルティエ殿の直属騎士団団長という肩書きには不十分に思える程の強さと"何か"を感じた。
「よろしくお願いします。ギゼル殿」
「では、今日グネイル殿の元へお尋ねしたのは、野外民族と地中民族との関わりを増やしていこうという御提案をしに来た為です」
ソルティエがそう言うと、グネイルは不意に顔をしかめた。グネイルの脳裏では様々な考えが巡っていた。
「グネイル殿が考え込んでしまうのも十分理解出来ます。我々野外民族は地中民族を虐げた歴史的背景が存在します。民を思う立場故、それは至極当然と言えるでしょう」
ソルティエ殿は1拍置いてから「しかし」と続けて口を開いた。
「外の世界には豊富な資源があり、地中では取ることのできない資源が多くございます。また、地中でしか取れない資源も様々です。民の豊かな生活を思うのであればこれからは野外民族と地中民族は手を取り合うべきでしょう。」
(そうだ、これが我々地中民族が野外民族に受けてきた歴史だ。だが、ソルティエ殿の言った通りでもある。きっと私は終止符を打たなければならないのだ。この、長き歴史に!)