犬狩家の人々
ペットの犬をなくしてから。
数年は心がからっぽになって、死んだあの子を思い出して涙が勝手に出てきたり。
でも、そろそろ、気持ちが前向きになってきた頃。
公園や、多摩川沿いに行くようになった。
そう、そこは、犬の天国。
朝早く、ウォーキングをするふりをして、犬を探す。
ああ、いた、いた!きちんと飼い主さんの真横にはりついて。
そして、犬の飼い主同士の会合で、3,4匹、運が良ければ10匹くらいたむろっていることもある。
「あ~ん、眼福、眼福」
潤ませた瞳を見張って、私は犬たちをじっと、さりげなく見る。
「最近は犬の盗難もあるっていうから。気をつけないとね」
そんな時。彼を見つけた。
ベンチに座り、犬連れを見る男。
明らかに犬を見る目がおかしい。
「犬の窃盗犯……?」
飼い主たちが男の視線に気づき、「じゃ、また」と言いながらほうぼうに散っていく。
ちょっと!ここは犬の絶景ポイントなのに!
これが、私と夫の出会いであった。