マジカルバナナで世界最強
どうも皆さんこんにちは。マジカルバナナとは????
事の始まりは小さな、本当に小さな微粒子だった。
発見したのはアメリカのハーバード大学のクリス・M・バナライアン教授。この粒子はマジカル教授の名前にちなみ、MB粒子と名付けられた。この粒子はイメージした物を、任意の相手にぶつけることが出来るという特殊な力を有しており、そのイメージが具体的であれば具体的であるほど、巨大化し、質量を持つという特徴を持っていた。
この粒子は様々な科学技術に応用されたが、1番効果を表したのは、日本に古くから伝わる連想ゲーム、マジカルバナナをしている時であった。
連想ゲームとは即ちイメージによって戦うもの。イメージを多用するマジカルバナナとMB粒子との親和性はとてつもなく高かった。
MB粒子を用いたマジカルバナナは世界中で大ヒット。しかし、そんな尊い技術も悪用するのが人間である。
世界各国で通りマジカルバナナが発生。道行く人に強制的にマジカルバナナを仕掛け、一方的に勝利し、金品を奪う輩が続出。
また、テロリスト集団にもマジカルバナナは悪用され、世界は大きく混乱。それに対抗するため、各国はマジカルバナナ部隊を編成。何とか鎮圧した。
これを受けて国連はMB粒子を用いたマジカルバナナを一年に一度の大会の時以外の使用を禁止。世界に混乱をもたらしたMB粒子を発見したクリス教授は学会から追放。ひっそりと姿を消し、クリス教授の一家は離散した。
時は流れ、40年後。マジカルバナナは今や世界的にも人気の競技となり、その世界大会はオリンピック以上のものとなっていた。
そして今年も、世界一のマジカルバナリストを決めるための戦いに向け、世界各国では猛者達が動き出していた。
「ガッハァ・・・こ、拳と言えb・・・」
『ここでマジカルバナナのために明日を捨てた男が崩れ落ちた~~!!優勝は~~アメリカ裏社会最強のマジカルバナリスト!ヴェイドに決定ーー!!!』
「ふんっ!誰か俺を倒せる奴はいねえのか?!」
「ば、バナナと言ったら・・・~~」
「なっ・・ば、ばかな・・・グアアァァァア!!!」
『けけけ決着~??!!なんと、開始10秒で、可憐な女性の前に優勝候補の佐藤が潰されたーーー!!!優勝はスガワラ・ミサキ~~~!!!』
「バナナと言ったらきい・・・」
「黄色と言ったらレモン」
「れ、レモンと言ったらすっp・・・」
「酸っぱいと言えば柑橘類」
「・・・っギブアップだ・・・」
『圧倒的だ~ボキャブラリーの豊かさもさることながら、相手の答えを待たずに答える。南極からの刺客、スピード・スピーダーが優勝だ~~!!!』
「くっ・・・む、ムガル帝国第五代皇帝と言えば・・・た、タージマハル!!」
「タージマハルと言えばラジャースターン地方のジャイプル産の大理石」
「ぐっ・・ラジャースターン地方のジャイプル産の大理石といえば・・・・・うわああああ!!」
『決着~~最高の脳を持つ男、武田。ラジャースターン地方のジャイプル産の大理石に押しつぶされました-!!何という圧倒的な知識!!流石頭にスーパーコンピューターを搭載した男、鈴木治~~!!!』
「・・・バナナと言えば…」
「なっ・・・あああああああ!!!」
『ななななんということだ~!!我々は何を見せられたのかッッ!!!何をしたのか分からないが、気がついたら決着が付いている~~~!!勝者ミスターMB!!!!』
「ジャングルと言えばゴリラ」
「ゴリラと言えば猿人類」
「類人猿と言えばサル」
「サルと言えば温泉」
「温泉と言えば日本」
「日本と言えばオタク」
「オタクと言えば・・・っく・・・ギブアップだ・・・」
『試合終了~~!!2時間にわたる激闘を制したのは第14回世界大会優勝者マジカル・カイザーだぁぁぁあぁ!!!』
「銃と言ったらMP40総員、放て。」
「お、おい、待って・・・ぎゃああああ!!!!」
「し、し、し、試合終了ーーー!!なんと対戦相手が蜂の巣になってしまったーーー!!!勝者アデレー・ガルザーーー!!」
世界中から続々と決勝大会出場者が決まって行く。参加者の一人であり、クリス教授の孫であるピーター・M・バナライアンは物思いにふけていた。
(いよいよ、明日。ついにこの時がきた。爺ちゃん。母さん。父さん。俺達の家族をばらばらにしたマジカルバナナ。明日、俺が終止符を打つッッッ!!)
戦争の引き金ともなりかけたクリス教授の一家は離散。孫であったピーターは孤児院にて育てられ、自分の両親の顔すら覚えていない。ただ、自分がクリス教授の血を引いているということだけは分かっていた。
彼は生きてきた17年を全てマジカルバナナに費やしてきた。戦ってきたのはストリートのみならず、裏社会、果ては密林の奥地に住む森の賢者とのマジカルバナナまで、度重なる異種マジカルバナナ戦をくぐり抜けてきた。
今回、自分の一家をばらばらにされた原因となったマジカルバナナに終止符を打つため、彼はマジカルバナナの大会に挑む。
・・・・・
・・・
『ここに集うは世界各国から選ばれた世界最高のマジカルバナナのスペシャリスト!!』
八名の男女が観客席に向けて各々礼をしたり、睨み付けたりなど、様々な反応を見せている。
『ではここで!世界中から選び抜かれた猛者8名の紹介へ移ります!』
実況が、各選手の紹介をする。
『アメリカのストリート最強の男がやってきた!向かってくるものは恐怖で潰せ!!女だろうと容赦はしない!アメリカの裏社会マジカル・バナナ優勝者、ヴェイド・アルバータがやってきたァァ!!』
観客に向けて凶悪に笑うヴェイド。その邪悪な笑みに観客は恐怖の声を上げる。
『MB粒子を発見したクリス教授の血を引くサラブレッド。偉大なる祖父を超えるため、キングオブマジカルバナナの称号を得るため、やってきた!!ピーター・M・バナライアンの登場だー~!!』
観客に向け、笑顔で手を振るピーター。
『勝てるのならば人を超えた演算能力を!!その考えを有言実行した者がいただろうか?!!自分の脳にスーパーコンピュータを搭載した男、生粋の秋葉系オタク、鈴木治!!!』
黒縁のメガネを中指でクイッと上げながら無表情でいる鈴木。
『地上最速のマジカルバナナを見せてやる!試合は全て1分KO!!即座に返すその答えはまるでボクサーの高速ジャブ!!スピード・スピーダーが南極の奥地から緊急来日!!』
バク宙を繰り返しながら登場するスピードに湧く観客席。
『なぜこんなところに一般女性が?!清楚な服装の下に隠れるのは猫か、獅子か、それとも悪魔か?!告白された数は本人でさえ覚えていない!魔性の女スガワラ・ミサキがやってきたァァ!!』
紹介されたミサキは恥ずかしそうに顔を赤らめる。彼女に振られたと思わしき男性達は、スタジアムの客席で密かに涙を流している。
『男なんかはただの下僕!!私より強いやつはいないのか?!逆らうものなら容赦はしない!鬼女の二つ名を持つ、ドイツの女将軍、アデレー・ガルザーの登場だ~~!!!』
軍服を身にまとい、幾つもの勲章を付けた女性が敬礼をする。観客席にいる彼女の部下たちは、彼女に向かって最敬礼をする。
『経歴、素顔、年齢、出身一切不明!お前は一体どこから来たんだ!ミスターMB!!!』
全身バナナ柄の服を身にまとい、バナナの形をしたサングラス、そして黄色のマスクをつけた怪しげな男が実況の言うことにも意に介さず直立不動の姿勢でいる。
『そして最後に、今回の優勝候補!前大会優勝者!マジカルバナナの帝王!!マジカル・カイザー!!』
カイザーが紹介された瞬間、観客全員がカイザーコールをする。カイザーもそれに対して手を振り応える。
『以上八名!今回の大会でどのような戦いを見せてくれるのか?!?!皆様、選手達の検討を祈り、今一度盛大な拍手をお願いしますッッッ!!!!』
スタジアムが盛大な拍手に包まれた。
・・・・・
・・・
『それでは第一試合、清楚女子の代表格?!スガワラ・ミサキ 対 アメリカンストリート最強の男ヴェイド・アルバータ』
『それでは・・・試合開始!!』
「マジカルバナナァ!!!」
試合開始のゴングが鳴り響き、後攻であるヴェイドがマジカルバナナの音頭を取る。その瞬間、虹色に輝くバナナが両者の頭上に洗われた。
この時のヴェイトのには若干の余裕があった。何せミサキはかなり大人しそうな女性だ。暴力的な物には抵抗がないはず。
そう、ヴェイドは力尽くで目の前のか弱そうな女子を暴力的なイメージで捻じ伏せようとしていたのだ。
「バナナと言ったら・・・」
目の前の女子は先行のためバナナから連想される物を言おうとする。
ヴェイドは三崎の口が輪を描いたことで、バナナから連想される母音が“お”である事を推測し、ミサキが言おうとしていることを想定し、自分の答えの候補を幾つも考える。
(サア来い!お前の表情を恐怖で歪めてやるぜ!!)
自然と口角の上がるヴェイド。それに対してミサキの表情は変わらず。そして、この海上の誰もが想定していなかったバナナからの連想を口にする。
「道祖神」
水を打ったようにスタジアム内が静かになる。そして次の瞬間、突如としてヴェイドの真上に巨大な道祖神の像が出現した。
『~~~ッッッな、なんとおお!競技場の真上に男性器の形をした道祖神がっっっ!!スガワラ・ミサキ、一発目からド下ネタをぶち込んできたアア!清楚な見た目からは考えられないとんでもない先制攻撃だアアアア!!』
実況も驚きのあまり一瞬言葉を失う。
「~~~~ば、馬鹿なッッッ!!!」
ヴェイドは目を見開き驚愕する。目の前の清楚な女性からは想像も出来ないようなえぐい物が出てきた。そして、その巨大さたるや、スカイツリーもかくやというレベルである。それだけ相手の実力が高いと言うことがうかがい知れる。しかし、これを返せなければ敗北は必須。ミサキの道祖神空連想される物を考え・・・
「道祖神と言えば・・・りょっ旅行!」
かろうじて潰される寸前で返す。超弩級の道祖神像は通常サイズの旅行鞄へと姿を変える。
(落ち着け。向こうの土俵へ入れられたら終わりだ。何とかこちらの土俵に戻せれば・・・)
ヴェイドはなんとか体勢を立て直そうとする。
だが
「旅行と言えば・・・ワンナイトラブ」
ミサキがそう言った瞬間、旅行鞄は超巨大なベッドが出現し、ヴェイドへと落ちていく。
(これが・・・世界レベル・・・!!妄想力も何もかも・・・)
ズガァァアン!!!
『ヴェイド選手、ウルトラスーパーキングサイズのベッドに押しつぶされました!何とか生きているようですが、立ち上がれそうにありません!勝者スガワラ・ミサキ~~~!!!』
大きな歓声がスタジアムに響き渡った。
こうして世界の覇権を決める第15回マジカルバナナ決勝大会が始まった。
・・・・・
・・・
『驚愕の第一試合でしたが、次もすごいぞ!!人類最速の早口、スピード・スピーダー!対するは、脳にコンピュータを搭載した男、鈴木治・・・先行は鈴木から・・・では試合・・・開始!!』
二回の手拍子の後、マジカルバナナが始まる。
「バナナと言ったら被子植物単子葉類ツユクサ類ショウガ目バショウ科バショウ属」
「被子植物単子葉類ツユクサ類ショウガ目バショウ科バショウ属といえばマレーヤマバショウ」
「マレーヤマバショウといえば東南アジア」
「東南アジアと言えばルイジ・アロイシャス・ルッコラ」
ここまで0.5秒。秋葉オタク特有の早口と、世界最速の早口が激突する。
『鈴木の脳に搭載されているコンピュータからはじき出された難題を苦も無く返していくスピード。また、スピードの0.1秒以内に出される答えにも対処していく鈴木!!この2人、恐ろしく強い!!』
スピードの早すぎて聞き取れない言葉を聞くことを放棄した鈴木は、スピードの妄想によって出来た幻をコンピュータの演算能力によって幻の正体を算出。秋葉オタク特有の早口で返す。対するスピードは常人の5倍の速度の脊髄反射で、鈴木の出した難題を0.05秒で応える。
まさに死闘。人類史上最速の高速マジカルバナナ。観客は冷や汗を流しながら2人の戦いを見守る。
そして、2人のマジカルバナナの戦いが3時間を超えたところで、2人に異変が生じ始めた。
スピードは激しく咳き込み口の端からは血が垂れる。一方鈴木の方は何の異常も無いように見えるが、頭からは異常な程の熱を放ち、陽炎まで見えている。
『な、なんと!2人とも死力を尽くしております!!スピードは喉から出血が!陽炎の出ている鈴木の脳はオーバーヒート寸前だアア!!!』
口から血を吹こうが、頭から陽炎が出るほど発熱しようが、2人のマジカルバナナは止まらない。
決着が着くのは2人のうちどちらかが止まった時。鈴木の脳に搭載されたコンピュータがオーバーヒートするのか。はたまたスピードの喉が限界を迎えるのか。
決着はすぐ後だった。
「繝舌みどリ繝翫と言ったら→險?縺」縺針葉樹溘i鮟?牡」
「ヒュッ……ゴハッ……し、針葉・・・・」
言語機能にエラーが出つつもかろうじて答える鈴木。それに対し、限界を迎えたのはスピードの方だった。声帯が完全に破れ、声も出せなくなってしまい、体力も限界だったのか、スピードは地面に倒れ伏した。
『た、倒れた~~~!!地上最速のマジカルバナナが地上最高のスーパーコンピュータに破れたここで破れた~~~!!試合終了!!』
担架で運ばれていくスピード。そんなスピードに対し鈴木は礼をし見送った。
・・・・・
・・・
『さあ!続いて第三試合!!ドイツが生み出した鬼女アデーレ・ガルザー 対 天才の血を引くピーター・M・バナライアン!!』
ピーターとアデーレが並び立つ。ピーターに対しアデーレは
「精々人生最後のマジカルバナナを楽しむが良い。」
と、犬歯をむき出しにして挑発する。ピーターはそんな挑発を意にも介さず、手にしていたミネラルウォータを飲む。
『試合開始!!!』
試合開始のゴングが鳴らされる。
「「マジカルバナナぁ!!!」」
先行はピーター
「バナナと言ったら黄色」
とりあえず、ピーターは無難な連想で相手の出方を探る。ピーターが黄色をイメージすると、二人の真上に黄色の旗らしき物が出現する。色などを連想すると、このような旗らしき形状でイメージが具現化する。それを見て、アデーレは怪しげな笑みを浮かべた。
「なんとまあ・・・自ら死地に赴くとは・・・阿呆め!!!黄色と言ったらドイツ軍の攻撃命令!!!全軍一斉掃射!!!!」
アデーレガ連想した瞬間、黄色の旗から次々とマシンガンを構えたドイツ兵達が出現。ピー谷向かって機関銃を一斉に掃射する。土煙が舞い上がり、ピーターの姿は確認できなくなる。
『なななんと!!黄色の中からドイツ兵が出現!!ピーターの姿が見えないが勝負あったか~~???』
「マジカルバナナで勝利するため、我がドイツ軍はバナナから連想しうる物全てに作戦コードとしている。我が軍に求められる破勝利のみ!天才の孫だかなんだか知らないが、始めから貴様に勝利など無かったのだ」
ピーターが倒れ伏しているだろう土煙に向かって言い放つアデーレ。しかし
「はっ!そんな物予測済みだ!!」
土煙が晴れ、そこにはピーターが無傷で立っていた。愕然とするアデーレ。
(ば・・・馬鹿な・・・あの一斉掃射を無傷だと・・・っ!!!)
「いかに苛烈な攻撃といえども、逃げ道はある。そう、ドイツの攻撃命令と言えば、ダンケルクの奇跡!!!」
「そ、それは・・・!!!」
ダンケルクの奇跡とは、ドイツ軍にダンケルク港まで追い詰められた多くのイギリス兵が、兵器などを捨てながらも生還することの出来た、第2次世界大戦中に起きた出来事の一つである。
ピーターはこれを利用し、ドイツ兵からの一斉掃射を生き延びたのだ。
「ぐっ・・・ダンケルクの奇跡と言えば・・・空爆!!」
アデーレのイメージが具現化し、ドイツ製の戦闘機がピーター一人に向けて空爆をする。だが
「空爆と言えばベルリン空襲!!!」
即座に答えたピーター。すると、ドイツ製の戦闘機はイギリス製の戦闘機へと代わり、アデーれに向かってまっすぐ飛んでいく。
「ぐっ!!ベルリン空襲と言えば・・・・」
返すべき答えが見つからず、固まるアデーレ。そんなアデーレに対してピーターはこう言い放つ。
「もしアンタがただの”空爆”ではなく、”ドイツ軍による空爆”と返していたら、俺に勝ち筋は無かった。」
「くっそおおおおおお!!!!」
アデーレの叫びと共に、スタジアムでは幾つもの爆弾が爆発し、土煙が晴れた頃にはアデーレは地面に倒れていた。
『勝負あり!!!最早擬似的戦争とも言えるマジカルバナナを制したのは天才の血を引くサラブレッド、ピーター!!!』
・・・・・
・・・
試合後、選手控え室へと戻ったピーターは考えていた。マジカルバナナとは元々誰もが楽しめる連想ゲームだったはずだ。なのに
(どうしてここまで傷つかなければならない!!こんな物のために国の威信を背負わなくてはならない!!!)
やはり自分がマジカルバナナを終わらせなくては。そう、決意を新たにしたその時
ワアアアアアアア!!!
海上を揺るがすほどの歓声が聞こえてきた。一体何が起きたのか、慌てて確認しに行ってみると。
(ま、まさか・・・カイザーが・・・!!知識、体力、妄想力、全てにおいて高水準にバランスの良いカイザーがッッッ!!)
スタジアムの地に倒れ伏す世界最強のマジカルバナリスト、カイザー。そしてそれを悠然と見下すミスターMB。その光景に、会場は響めきが広がっていた。
『ななななんということでしょ~~~!!前大会優勝者マジカル・カイザーが開始1ッ分で敗れた~~~!!!何という強さだミスターMB!!!!』
・・・・・
・・・
選手控え室に悠然と戻ろうとするミスターMB。だが、選手控え室に入ろうとしたところ何者かに待ったを掛けられた。
「初めまして・・・じゃないわよね?ミスター?」
「・・・」
待ったを掛けたのは清楚な服装をしたスガワラ・ミサキだった。先程までの自身のなさげな表情ではなく、怪しげな、まるで女スパイであるかのような目をしている。
「沈黙は肯定と受け取るわよ?」
「・・・」
「まあいいわ。決勝で会いましょう。その時に全部話して貰うわよ?40年前のこと。」
そう言ってミサキはMBを背に自分の控え室へと戻っていった。その光景をMBはどことなく、哀しげに見ていた。
・・・・・
・・・
『さあ、出そろいましたベスト4!!これより二回戦を始めます!!!』
予期せぬ展開や、すばらしいマジカルバナナがあったこともあり、観客のボルテージは昂ぶったままだ。
『それでは二回戦第一試合!!見た目は清純中身はサキュバス スガワラ・ミサキ 対 世界最高最速の演算能力を持つコンピュータを脳に搭載した男 鈴木治!!』
『それでは試合開始ィ!!!!』
「「マジカルバナナ!」」
先行は鈴木。ミサキの得意分野であるアダルティな分野へと引きずり込まれないために演算を繰り返す。そして
「バナナと言ったら南国」
とりあえず、当たり障りのない内容で軽く様子を見ていく
(これなら68%の確率で、ハワイと答えるはずッッッッ!!)
第一試合でヴェイドを潰したアレ。あれから分かる妄想力はすさまじく、あそこに引きずり込まれたら一巻の終わりだと世界最高のコンピュータは判断していた。
「な、南国と言ったら・・・トリニダード島」
しかし、鈴木の予想に反して、ミサキは西インドにある島、トリニダード島と答える。すかさず鈴木は
「トリニダード島と言ったらリンボーダンス!」
と答える。すると、ミサキの目の前に火の付いたリンボーダンスの装置が出現する。水平に保たれている棒の位置はかなり低い。
ミサキはそれを見て、一瞬怪しく笑うと素手で自身のロングスカートを膝上まで破り捨て、二~三回軽くジャンプした後にリンボーへと挑んでいく。
(ば、馬鹿な!!!勝負を捨てたというのかッッッッ!!!)
素養には無かった行動に動揺する鈴木。
「あっ・・・くぅう・・・んっ・・・」
それに対して、汗をかきながら腰を曲げリンボーダンスをしていくミサキ。その姿はどこか艶めかしい、官能的な雰囲気を漂わせている
(ぐっ駄目だ・・・性的興奮値が上がり始めている!!このままではオーバーフローを・・・・!!)
ミサキの声と姿にたちまち鈴木のコンピュータは熱を持ち始め、頭から湯気が立ち上る。コンピュータの冷却が追いついていない。
そしてコンピュータを搭載したことによって動体視力が人間の5倍以上となっている鈴木は見えてしまった。ミサキがリンボーダンスをする前にスカートを短くしたことで見えてしまったのだ
(し、白・・・・)
次の瞬間、鈴木は大量の鼻血を噴水のように吹き出し気絶した。スタジアムの観客はその光景にしばし唖然としていた。
『しょ、勝負あり~~!!世界最高のコンピュータを持つ男敗れたり~~~!!脳を捨ててコンピュータに変えたとしても性欲だけは捨てられなかったか~~~!!!!』
・・・・・
・・・
『さぁ、続きまして二回戦第二試合、天才の孫はやはり天才 ピーター・M・バナライアン 対 全てが謎な男ミスターMB!!!』
『試合開始!!!』
試合開始のゴングが鳴らされる。先行はミスターMB
「「マジカルバナナ!!」」
(さあ、何がくる?何がくる?!)
ピーターは思考を巡らせていた。このミスターMBという男さっぱりつかめない。カイザーとの試合を見てみたが、一瞬で倒している。つまり、バナナから連想される一撃必殺の何かをイメージできていると言うこと。ならばこちらはそれに対してすぐに答えを返すしか無い!!
そう思って身構えるピーターだったが、目の前の男はピーターの想像を軽々しく超えてきた。
「・・・マジカルと言ったら・・・」
(ば、馬鹿な!!!マジカルバナナはバナナから連想するのがセオリー!!それをマジカルから連想するなんて。過去に何人も挑んだが成功したのはただ一人だけ!!!!その人の名は・・・・)
「マジカルと言ったら・・・魔法」
次の瞬間、ピーターの目の前は真っ暗になった。
・・・・・
・・・
「きゃっきゃ・・・・」
「ふふ・・・いい子ね。」
「ピーター、私がパパだ。分かるか?」
「ぴーたー!!」
(これは・・・?)
ピーターが見ているのはある一家の団らん。父が、母が、そして姉らしき人物が腕の中の赤子に愛を注いでいる。そんな当たり前のような場面。そして
「ただいまー・・・やあピーターお前の顔を見るだけで癒やされるよ。」
(あれは・・・爺ちゃん?!ここはもしかして俺の赤子時代・・・?!)
写真で見たことのある祖父が目の前にいて、赤子を自分と同じ名前のピーターと呼んだ。これはもう自分の赤子時代と考えるしかない。
「これから先のマジカルバナナ・・・この子達が希望になればよいが・・・最近はマジカルバナナを悪用する物が多すぎる。アレは人を傷つけるものではなく、楽しませる物だというのに・・・」
「大丈夫ですよお義父さん。この子達は必ずやってくれます。マジカルバナナの素晴らしさを広めてくれますとも。」
「ええ。なんといったって、この子達は私たちの子供なんですから。」
その時ピーターははっと気がついた。マジカルバナナとはそう、楽しむ物なのだ。人を傷つけるものでは無い。
それに気がついた次の瞬間、場面は暗転し、父と母がピーターの目の前に立っていた。
「さあ、いきなさい。マジカルバナナを終わらせてはならない。」
「あなたにはまだやるべき事があるでしょう。」
父と母の指さす先には巨大な虹色に輝くマジカルバナナがあった。
「父さん・・・母さん・・・ありがとう!行ってきます!!!」
ピーターは涙を拭い、マジカルバナナへと駆けだした。
・・・・・
・・・
『圧倒的だ~ミスターMB!!開始からわずか5秒でKOにしています!!!』
「・・・」
倒れ伏すピーターを吸う旬見つめた後、踵を返し戻ろうとするミスターMBだが、突如として背後からの衝撃に吹き飛ばされた。
「おい待てよ。答えたぜ俺は。魔法と言ったら攻撃ってな!!!」
『ななななんということだ~~!!ここに来てピーターが復活したアアアアアア!!!』
「・・・ふっ」
なんとなく嬉しそうに笑うミスターMB。
「さあ、決着を付けようか。」
「望むところだ・・・攻撃と言ったら武力!!」
ミスターMBの背後に何丁もの銃や兵器が出現する。それに対してピーターは
「武力と言ったら武力衝突!!!」
ピーターの背後にも大量の兵器が出現する。
「「さあ、決着だ!!!」」
二人の背後にあった兵器が一斉に掃射される。爆炎や轟音と共に舞い上がる土煙。そして数十分にも及ぶ攻撃が終わり、土煙が晴れた頃、スタジアムに立っていたのは
『~~~~勝者、ピーター・M・バナライアン!!!!!』
ピーターだった。
「爺ちゃん!!!!」
ピーターは急いでミスターMB、否祖父であるクリス・M・バナライアンへと駆け寄る。
「強くなったな・・・ピーター・・・」
息も絶え絶えな祖父。
「なあピーター・・・お前に一つだけ言っておかねば鳴らんことがある・・・」
「爺ちゃん!もう喋らないで!!!もうすぐ医者が来るから!!」
「ゲホッ・・・そうもいかん・・・お前が最後に戦う相手・・・スガワラ・ミサキは・・・お前の・・姉・・・だ・・・」
そう言い残し、祖父は気を失った。
・・・・・
・・・
『地上最強のマジカルバナナを見たいかーーー!!』
ワアアアアアアア!!!
会場のボルテージはマックスに到達していた。
『異例が続いた今大会!!!しかしこれもクライマックスを迎える!!! 猫かぶり系清純女性 スガワラ・ミサキ 対 天才の思いを受け継ぐ男 ピーター・M・バナライアン!!!』
観客達が歓声を上げる中、ピーターは静かに姉であるスガワラ・ミサキと静かに見つめ合っていた。
「どうせ、あのじじいから聞いたんでしょ?私があんたの姉だって。」
「ああ・・・聞いたよ。姉さん・・・」
「じゃあ分かるわね。ピーター、負けてちょうだい。私がこのマジカルバナナを終わらせるわ。」
「姉さん。それは出来ない。僕らはマジカルバナナの希望として生まれたんだ。マジカルバナナの楽しさを伝えていかなければならないんだ!!」
「そう・・・結局、あなたも父さんと母さんを奪ったマジカルバナナ側に着くのね。なら・・・」
「ああ。爺ちゃんと戦って分かったんだ。マジカルバナナは人々を楽しませる物だって。たしかに、マジカルバナナには問題点も多い。怪我人だって出る。だけどそれは、僕たちがなんとかしていけばいいじゃないか!!」
「無理よ!人間はいつだって過ちを犯し、そして繰り返す!!!だからこそマジカルバナナはここで終わらせないといけないのよ!!!」
「わかり合えないのか・・・僕たちは・・・」
「ええ・・・ここから先は勝負あるのみ。弟だからって手加減しないわよ。」
試合開始のゴングが鳴り響いた。
「「マジカルバナナッッッ!!!」」
先行は・・・ピーターだった。
「バナナと言ったら甘い!!」
「甘いと言ったら純愛!!!!」
ボクサーの打ち合いのような姉弟の問答が15分を過ぎたとき、ミサキが仕掛けた。
「本と言えば、母親に部屋の掃除をされて見つかってしまうエロ本!!!」
「ぐああああああ!!」
突如としてピーターをなんとも言えぬ羞恥心が襲う。目の前にはミサキがイメージしたエロ本を持つ母親の姿が。
『これはキツいッッッ!!!思春期まっただ中にいるピーターには地獄の様な拷問だ~~!!これを返せるか~~~????』
「どう?これがアンタより4年早く生まれた私の実力よ!!!さあ、これ以上羞恥で悶え死にたくなかったら降参しなさい!!!」
(は、は、恥ずかしい恥ずかしい・・・なんて妄想力だ・・・でも、俺は爺ちゃんから託されたんだ!!!負けるわけにはいかない!!!!!)
『オオオオ!立った!ピーターが羞恥に悶えながらも立ち上がりました!!!』
「は、母親に部屋の掃除をされて見つかってしまうエロ本といえば・・・父さんの物!!!!」
ピーターがそう言い放った瞬間、申し訳なさそうに謝る父親の姿が出てきた。
『なななんとおおお!!ここでピーター、父親に責任転嫁したあああああ』
「くっ!!父さんの物と言えば・・・電動マッサージ器!!!!」
ミサキがそう言い放った瞬間、スタジアム上空に超弩級の電動マッサージ器が出現する。振動する先端に、スタジアムの屋根が少しだけ触れた瞬間、スタジアムの屋根にヒビが入り、天井が崩れ始めた。
「姉さん!何てことを!!!」
「これでいいのよ!これで大事故が起きれば政府はマジカルバナナとMB粒子を封印するはず!!!」
客席を見ると観客が避難を始めている。
「さあ、あなたも逃げなさい。ここも無事じゃ済まないわよ。」
どこか哀しげに、優しげに言うミサキ。だが、ピーターは
「やだね!!!」
絶望何てしていなかった。
「マジカルバナナは楽しいものだ!!!人を傷つけるだけじゃなくて人を守ることが出来る物なんだって伝えるんだ!!!」
「電動マッサージ器と言えばマッサージチェア!!!」
巨大電動マッサージ器は一般的なサイズのマッサージチェアへと変わる。だが、天井の崩落は最早止まりそうに無い。
「さあ姉さん、決着を付けよう!!!」
「ホント馬鹿ね!!でも・・・受けて立つわ!!!!」
姉弟が構える。二人の間ではMB粒子同士が干渉し合い、空間が歪んでさえ見える。
「マッサージチェアと言えば温泉!!」
「温泉と言えば火山!!」
「火山と言えばハワイ!!」
「ハワイと言えば南国!!!」
得意分野もクソも無い。とにかく自分が知っている知識をどんどんと連想していく、原始的なマジカルバナナ。だが、これを見ていた観客達は不覚にも避難することを止め、見入ってしまっていた。
”これこそが正しいマジカルバナナでは無いか?!!!”
自分の得意分野だの、世界一の知識を搭載したコンピュータだの、軍の命令系統だの、早く答えただの。そんな不純な物が一切無い純粋なマジカルバナナ。自分の愛するもの、親しいもの、肉親などと楽しくやるのがマジカルバナナでは無いのか?ミサキとピーター二人の繰り広げるマジカルバナナの美しさに、観客は目を奪われ、気がつけば涙を流していた。
天井が次々と崩れ始める。だが、スタジアムの中心にいる姉弟はマジカルバナナを止めようとはしない。
「赤いと言えば赤トンボ!!楽しいね、姉さん!!!」
「赤とんぼと言えば秋!! ええ、本当ね!ピーター!」
「秋と言えば美しい!いつまでも続けていたいよ!」
「美しいと言えば地球!本当ね!!」
そして、楽しげにマジカルバナナをする姉弟の頭上にあった天井が崩落し、スタジアムは完全に崩壊した。
・・・・・
・・・
『み、皆さん無事でしょうか・・?!スタジアムが完全崩壊したというのに何故か生きております・・・というか・・・ええ?!が、瓦礫が頭上で止まっております!!これは一体・・・』
「ぴ、ピーター…あなた・・・」
「最後の最後、間に合ったよ。地球と言ったら・・・守護るもの!!!」
なんと、観客全員の頭上に広がる巨大なバリアが形成されていたのだ。なんとピーターは天井が崩落する寸前、姉の出した地球から連想される物に対し、守護る物と連想し、観客全員を守ったのだ。
「ピーター・・・もしかしてずっとこれを狙っていたの?」
「まあね。イメージをより強固にするために姉さんから地球という言葉を引き出す必要があったけど。何とか出来たよ。」
「そう・・・あなたの手のひらで踊らされていたというわけね。私の負けよ。」
『決ッッッッッ着~~~~~!!!!この死闘を制したのは我々の身も守った天才、ピーター・M・バナライアン!!!皆様、盛大な拍手をお送りください!!!!!』
・・・・・
・・・
ピーターとミサキが対決してから2年後。
ピーターはMB粒子の改良に成功。マジカルバナナが寄り安全に楽しめる物へと改良した。世界各国は旧来のMB粒子を封印。流通は厳禁とされた。
ピーターの祖父であるクリス教授はマジカルバナナを寄り安全に楽しむための講師として、世界中を飛び回り、マジカルバナナの楽しさを広めている。
ミサキはクリス教授の孫であったことを隠すために使っていたスガワラから改名。元のミサキ・M・バナライアンへと名前を戻し、祖父のクリスと共にマジカルバナナの楽しさを伝えている。
そして、ピーターとミサキの両親は、アマゾンの奥地に住む森の賢者によって保護されていたことが分かり、家族は再会を果たした。
そして今年もマジカルバナナの世界一を決める大会が始まる。
『サアアアアア!!皆さんお待ちかね!!!伝説の姉弟対決だ!!マジカルバナナの申し子 ピーター・M・バナライアン 対 マジカルバナナの伝道師 スガワラ・ミサキ!!!』
『勝負を制すのは2年前と同じく弟か!?それとも姉が雪辱を果たすのか!!!』
『試合開始ィィィィィイ!!!』
カーーンッ!!
「「マジカルバナナ!!!!」」
~完~