表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

第7章《主導権喪失と遅滞戦闘》

 しかし、敵が優勢な機動をもって我が方の防衛線を突破した場合、我々は主導権を失い【遅滞戦闘】に移る。

 これは非常に難しく危険であり、こうした【遅滞戦闘】は段階的な撤退であることもあるが、基本的にはこれらの目的は【そうした予備戦力を貼り付け敵の前進を阻害すること】にある。

 また我が方に戦線再構築のための援軍がこない場合、敗北は必至であるが、しかしこの【遅滞戦闘】に決定的勝敗の如何がかかっていることもある。


 戦術如何の前に、こうした場合にまず重要なのは【自失】の状態に陥ってはならないということである。

 【遅滞戦闘】は敵方よりも少数の戦力をもってして、敵の前進を阻害し、可能であれば攻勢を押し止める必要があるのだ。

 こうした戦闘の前に精神的優越性を保つ事は非常に難しい。


 だが、兵一人も金貨すらも戦場という炉にくべずに、己の精神を自らの手で貶める必要はどこにも存在しないのである。

 我が方の劣勢が明らかである場合、まず先にするべきは想定していた【撤退線】への後退、あるいは我が方の戦力再展開が敵方の進撃速度に対して妥当かという点である。

 この時点で【撤退線】への戦力再展開が間に合わない場合、援軍として送った戦力は勢いに乗る敵戦力に叩き潰されることは明らかである。


 我が方がまずすべきなのは、崩壊した戦線の再構築と、敵方への打撃である。

 これに対処するには敵方の進軍速度を冷静に把握し、戦線の再構築地点が、我が方の敗北を決定づけるほど後退せぬようにする必要がある。

 そのため、我が方が取るべき策は以下の通りとなる。



 1.機動性に富んだ兵力による、敵軍への攻撃


 2.撤退戦への戦力集中及び展開、新たな戦線の敷き直し


 3.使用可能な火力支援手段の再検討

 



 1.においては、機動力を富んだ兵力によって敵軍へ攻撃し、応戦を強いることが重要である。

 可能であればこの兵力は機動性に富み、敵の進撃への意思を逡巡させ、敵の射程外から攻撃ができるものが最適である。

 しかし、こうした兵力はその機動性を得るためになんらかの欠点を併せ持つことがあるため、敵との交戦距離には留意するべきである。

 

 もっとも良い状態は、こちらの兵力が一方的に、なんら反撃を受けずに敵を損耗させることである。

 これを後退の許される地帯を使い、敵の損耗を強いてこれ以上の進撃を躊躇させること、これこそが【遅滞戦闘】の重要な一点である。

 敵の心理にこれ以上の進撃は困難、危険、無謀であることを刺し込み、これを増大させることことが、【遅滞戦闘】なのである。


 故に、我が方は前線の敵兵のみならず、敵指揮官とも戦わねばならない。

 敵兵の進撃を止めるために、まず敵指揮官の心理に働きかけ、【自失】の状態に陥らせることが第一にある。

 第二は、物理的に敵の進撃を停止させるために損耗を強い、合理的判断によって撤退という手段をとらせることにある。


 これらによって展開する【遅滞戦闘】によって、敵が撤退、あるいは進撃の停止を行えばそれで良い。

 が、現実問題としてそれが破砕され、進撃が停止しなかった場合、我が方は戦線の再配置を迅速にすべきであり、可能であれば逆襲、あるいは別方面での攻勢によって挽回を図る他ない。

 この際、もっとも問題なのは破砕された衝撃によってすべての戦線において停止し、停滞することである。


 防衛とは優勢な勢力が行うことによって利するものであり、劣勢な勢力が腰を据えたところで万力で絞め殺されることが確実である。

  我々がすべきことは、次のようになる。



 1.敵軍の進撃するという意思を削ぐこと。


 2.これ以上の進撃による被害の増加と兵站線の危機を相手に考えさせること。


 3.それが失敗した場合、我が方の破滅的戦線崩壊を防ぐため、戦線を再定義、戦力の再配置を行うこと。


 4.これらが自力での達成が不可能であると判断した場合、即座に援軍をしかるべき部署へ要請すること。



 次に、こうした防衛戦闘における戦術について論述する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ