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CONNECTING!! ~落ちこぼれと天才の共同戦線~  作者: ちくわ天
出会い編
8/27

7, これから始まる共同戦線

さすがに驚いたな。

なんなんだ、彼は。今まで数々の能力者を解析してきたが、こんな数値見たことがない。

この自分が今いる空間も彼のメモリを使って作り出した異空間だ。

システムはボクが製作したが、起動したのは初めてだ。理論上、失敗することはないと分かっていたが、これを実現できるエネルギーつまりこの空間を作り出し、きちんと作動させた上で、能力が使えるだけのメモリ量持った人物であることが最低条件だった。

彼はこれを問題クリアした。

その上でさらに驚くべきことは。あの武器が現れた瞬間、三木隆介のメモリ量の数値が倍加したことだ。

どういうことだ?

武器の能力と考えるのが自然か。

指先を動かし解析を進める。

能力『high efficiency computer(HEC(ヘック))』メモリによって作動する超高性能のコンピューターを操る。

スペック、処理能力などは他のどんなコンピュータ超越するそれは、ボクにしか扱えない。

彼に言った『管理』はこの能力を使って行う。

体のどこにどれだけの量のメモリを振り分けて、バランスをとるか。緻密な計算と判断によって行わなければならない。


それをより精密にするためサポートをするのが、『コネクティングシステム』である。

補助対象と一体化することで、隆介のあらゆる感覚を共有することで、その精度上がるのは必然だ。

当然、パートナーの考えていることもある程度は分かる。


『先に取り巻き二人ををやるつもりなんだね』

「あれ?何で考えてる気と分かるんだよ」

『いくつかの感覚を共有しているからね。君の視覚、思考とかはボクから分かる。ちなみに視覚を共有する関係でなぜか君の目は青くなっているけどね』


「俺、男でカラコン入れるのような奴、嫌いなんだけど……」

『許容できるバグの範囲内だから、修正する気はないよ。めんどくさいし』

「こっちからはお前の視覚は分かるのか?」

『戦う君にひたすら作業するボクの視覚の情報なんて邪魔でしかないだろう?バカなのかい?』


「それは、そうだけど…。お前、口悪い言われるだろ?」

『軽口叩いてるのはいいけど……きてるよ』

「問題ねぇよ!」


そう言って、剣を両手で力いっぱい振り下ろし巨大爆発玉を真っ二つにする。


「ッッッッッッッッ!!!!!!!」


これには、さすがにショックを隠せない設楽の顔が引きつる。


「おい!お前らなにしてんだよ!はやくあいつやっちまえよ!お前らも戦え!」

「あ、あぁ……」


支離滅裂な怒りに戸惑う取り巻き達。

次第に顔を見合せ、それぞれ武器を取り、隆介の方へ突っ込んでいく。


『愚直だね……。あぁ、それより、もう一つの情報が頭に浮かんでいるんじゃないかい?』

「あー、このポイント……ムーブ……ってやつか?」

『じゃあ、いくよ!』

「ちょっと、まっ……」


と、次の瞬間にはもうこっちに突っ込んで来ているはずだった取り巻き達の背後に立っていた。


「消え……グワッッ!」


隆介が消えたと認識した瞬間、取り巻きAが膝をつきそのまま突っ伏す。


「すげぇな……これ……」

「三木、てめぇ!」


取り巻きBが武器を振りかざすが、既に隆介は目の前にいない。


「ど、どこだ!」


首を振るが、見当たらない。

意を決して振り返ると、既に構えている隆介の姿があったが、時既に遅し。


「くそぉぉぉぉぉ!!!」



「瞬間移動?あんな能力、隆介にはなかったはずですが……」

点移動(ポイントムーブ)。アリスが開発していた人工能力だよ」

「人工能力?人工で能力を創ったと言うんですか」


シイナの言葉に、聖治は驚きを隠せない。


「バカげてるって顔だね。最初は仕事の合間のちょっとした息抜きでやってたんだけどね。まさか開発しているとは思わなかったよ。すごいよ、アリスは」

「……」


すごいなんてもんじゃない。

あぁ、本当にバカげてる。


能力とは本来はもって生まれた才能だ。

大きく分けると設楽のような、人自身が能力持っている異能力系と自ら生成した武器が能力を持っている武器系の二つがある。

割合的にはほぼ同じくらいで、その振り分けや強力さは血統やで人の性格等が関係しているといわれている


その前提があった上で、今の隆介は瞬間移動とカリバーン。二つに能力を持っているということになるのだ。

極めてイレギュラーだ。異能力系や武器系とが共存している前例などない。


「ほら、もう終わるよ」


顔を上げると、爆発玉を出し続け、疲弊しきった設楽に歩いていく隆介の姿があった。


「終わりだ。設楽」


「ハァッハァハァハァ!。クソ!クソ!クソ!」


最後の力を振り絞って拳を隆介にめがけて打ち出すが、もちろん当たらない。

拳は空を切り、前屈みになった体を疲弊しきった体力で支えられる訳がなく体がよろける。


『素晴らしいよ、君は』


与えられた力を完璧に使いこなす隆介に賛辞を送る言葉は届いていないが、たいした問題ではない。

アリスにとって、この人材を見つけたことが大きな発見だ。


「俺はまだ負けてな……」

「言ったろ?終わりだって」


三度(みたび)、背後に回って、設楽が振り向く前にカリバーンを横一閃に振った。


「カッッッッ!!!」


斬擊を受けたというよりは、鈍器で殴られたような感覚だろう。

身体強化(ベース)によって、死ぬことはない程度に加減はしているが、設楽の意識はない。


散々自分を痛め付けた相手への一撃は、嬉しさもなく、ただただ虚しさを残すだけだった。


「あ、やべぇ……」


全身の力が抜けるのを感じると体が仰向けのまま倒れていく。

久しぶりに能力を使ったのと、蓄積したダメージがズッシリときたのだろう。

倒れながら夕暮れの空から視線をそらすと、黒い円が出現し、そこからアリスがひょこっと出てきた。


「随分お疲れのようだね」

「さすがにな……。その……ありがとう。おかげで助かった」


素直に例を言う。

正直、この子が来なかったらヤバかった。


「別に、ボクはボクのやりたかったこをしただけだ。君に礼を言われる筋合いはないよ」

「それでも……ありがとう」


今度はまっすぐにアリスの目を見て感謝を述べる。

設楽への仕返しのことより、もう一度能力使えたことが素直に嬉しかった。もう二度と、使えないものだと思っていたから。

照れ隠しのようにアリスは目をそらす。


「そこまで、感謝しているなら。ボクの要望にも応えてもらおうかな……」

「要望?」

「ボクの夢に付き合わないか?」

「……どういうことだよ」


訳の分からないと言う顔をしている隆介を横目に、アリスはフッと息を吐き、長い後ろ髪を手で払ってを話始める。


「SSDを開発した後、ボクは退屈していたんだ。あれを完成させても自分の中の欲望は満足しなかった。それで、次に考えたよ。誰もできない。誰もが不可能だと思う。ボクだけにしかできなさそうな事をね」

「そんなもの、探せばいくらでもありそうだけどな」

「確かに、ね。だから、一番難しそうなものを考えた。それが、この能力者社会において、『最強の能力』をボクが創ることだ」


あまりにも唐突な話に呆気をはとられるが、アリスが本気で言っているということは自分に与えられた力を思えば納得はできる。

アリスは続ける。


「だけど、これが最初に時点でつまづいた。なかなかボクの理想に見合う人材が見当たらなかったからね。必死で探したけど、そんな簡単な話じゃなかったよ。人が見つからなかったらシステムも作りようがないしね。何人もの、いろんな能力を持った能力者を解析して、計算して、それを元にシステムを作ったよ」


「そのわりには俺に適用していた気がするんだけど……」

「君と接触する前にある程度解析していたからね。それにコネクティングシステム使用してから微調整もできたし」

「コネクティングシステム!なんなんだよ、あれ?」

「それを答えるのはボクの要求をのんでからだ」


隆介は倒れていた体を起こして、座り直す。



「俺はどうしたらいいんだ?」

「言ったろ?『最強の能力者』になる被験者になってほしい」

「被験者?」

「成功するなんて保証なんてどこにもない。世の中、強力な能力者なんて山ほどいる。越えなければならない壁なんて山ほどあるだろう失敗するかもしれない。そういう意味であくまで被験者だ」


胡座(あぐら)をかいて真剣に話を聞く隆介の目の前にアリスは立つ。

これは交渉だ。 彼ををなんとしても手に入れたい。

しかし、研究ばかりやって来た彼女にとって依頼されることはあっても依頼することはほとんどなかった。

どういう言葉をかけるべきだ?

考えろ!今目の前にいる彼を駆り立てる言葉はなんだ?

人に対して思考を巡らすことがなかったアリスには、人身掌握は不得意分野なのかもしれない。


「一つ、聞いていいか?」

「……なんだい?」

「お前は俺が『最強の能力者』ってやつになれると思うか?」


目と目を合わせる二人。

隆介は不安でこれを聞いたのではない。

その事がすぐにわかったアリスが自分がいろいろと考えていたことがバカらしくなった。

なにかを始める時の理由なんて、シンプルでいいんだ。


「前言撤回するよ。失敗なんかさせないさ」


胸に手を当ててからそのまま隆介に向かって差し出す。


「ボクは天才・神宮寺アリスだからね!」


「自分で天才って言う奴は基本的に信じてなかったけど、信じるこちにする。俺で良ければいくらでも力を貸す」


「途中でリタイアなんて許さないよ」

「あぁ、分かってるよ」


隆介が立ち上がってから、差し出された手を握る。

彼にとって、彼女に協力する理由は、自分が能力を使えたこと。

迷う必要なんてない。この事実だけで充分だった。




 ずっと長い間、自分の中に大きな扉があった。



 その扉には取っ手やドアノブもなくて、どれだけ強く押しても引いても叩いてもビクともしない。手では駄目だと足で蹴破ろうとするが、それでも絶対に開いてくれない。


そんなとき、俺の前に一人の女の子が現れた。

その子は大きな扉をいとも簡単に開けてしまったのである。


どうやら鍵は、電子ロックだったらしい。



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