表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信者増殖中  作者: ゆるり
9/20

No.09

大規模開発を驚異的な速さでまとめてから1週間。

最近ルキナの顔を見ていません。


「良くない傾向よね」

食堂の広いテーブルで一人きりの朝食を終え、ため息が出る。

向かいの空いた席には、手付かずの食事。

ルキナが仕事部屋から出てきません。


「あれ、ルキナに届けるから、運べるようにして」

近くにいたメイドに声をかける。


「かしこまりました」

一礼すると、良い手際で料理がいったん下げられていく。


「ご用意できるまで、お茶はいかがですか?」

別のメイドがティーポットを持ってきてくれた。


「お願いするわ」

食後のデザートまで食べ終えてしまったが、のんびりお茶をするのは好きだ。


「あの、良くない傾向とは、どういうことでしょうか」

お茶をしていると、さっきの私のつぶやきが聞こえたのか、家令が不安そうに聞いてくる。


「ルキナの事。人間、休むべき時に休まないでは、体を壊すわ」


大規模開発が決まって1週間。

やはり問題なしとはいかなかった。

どんなに団結力がある街でも、影響力の強い市長のもとでも、反対勢力というのは生まれる。


この件について、私の中では解決策になるかもしれない考えはまとまっている。

しかし、ルキナが自分でこの件を解決したいと言ってきたのだ。

なぜ急にそんなことを言い出したのかわからないが、5日の期限を付けて任せてみた。

後でカイが教えてくれたが、自分の領地の開発を私に任せきりという事態が悔しかったそうだ。


「頑張る人間は好きなのだけど……タイムリミットね」

約束の期限は昨日まで。

自己最高傑作と思える笑顔で、家令に宣言する。


「ルキナは今日、強制休暇だから」

一瞬何を言われたのか分からず、何度も瞬きをした家令。

やがて私の意図に気付いたのか、優しい微笑みを浮かべた。


「かしこまりました」






薄暗い仕事部屋。

朝が来たことにも気づかずに、書類を睨むルキナ。


「何か手はないのか?」

セレナが決めてくれた大規模な領地開発。

どうにか成功させたかった。

そのためには、反対勢力を納得させなければならない。

その材料が見つけられないでいた。


「はぁ、俺は本当に無知だよな」

手に持ってた書類を投げて、自嘲気味に笑う。


「ルキナ様……」

ただ見守ることしかできないカイが、どう声をかけようかと迷う。


「幼いころから王位争いに関われないようにと、統治に関することは何一つ学ばせてもらえなかった。なのに兄達が病気になり、王位継承の可能性が出てくると、母親の身分が低いからせめて実績を積んで来いだと」

そう言われて、この領地に来たのは2年前。

数ある国の直轄地でも特に荒れた地に送られた。


どうしていいのかもわからず、何も出来ない日々。

呆れた市長が勝手に動き出し、ルキナはただ言われるままに動くだけ。

そうやって、ずっと過ごしてきた。

それでいいと思っていた。


「セレナ様にお会いできたこと、幸運でしたね」

カイが静かに言う。


その言葉に、素直に頷くのは嫌で、沈黙した。


たぶんセレナも統治に関する勉強など、何もしていない。

無知な自分でも、そう確信できるくらい行動がむちゃくちゃだった。

なのにセレナを中心に、領地の開発は動き始めていく。

勉強していないからは、理由にならないのだと思い知らされてしまった。


「どうしたら、あいつみたいになれるだろうか」

どこから来るのかわからない自信。

その行動に人々は付いていく。


「信者が欲しいんですか?」

あえてズレた発言をしてくるカイ。


「そんなわけないだろう」

信者はいらない。

心の底から、本気で思う。


先日キルギスが、やたら高価な額縁を街へ売りに来ていて、なんとなく観察してしまった。

そしたら飛ぶように売れていくのだ。

不思議に思ってキルギスに確認したら、セレナの信者は皆、セレナ直筆の手紙を飾るのだそうだ。


ってことは、あの額縁購入者たちは全員セレナの信者ということ。

あの人数と、より高価な額縁を競って求める者達の熱意に恐怖を覚えたほどだ。


「自分に出来る範囲で頑張るしかないか」

セレナはセレナで、俺は俺。

違う個性なのだから、同じようには出来ないか。

短めです。

書き溜めたストックが無くなり、さっきせっせと書いて、ここまででした……

更新ペース、ちょっと落として、2、3日間隔くらいになると思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ