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信者増殖中  作者: ゆるり
7/20

No.07

応接室に残った私とルキナとカイ。

ルキナはテーブルに突っ伏した。


「ありえないだろう」

唸る様に呟く。


「なんであんな無茶な要望が通るんだよ。しかも領全域に及ぶ開発なのにたった1時間で決めやがった」

そう、ほぼ私の一方的な話だったので、時間的には1時間もかかっていない。

びっくりのスピードだ。


「そこでそうやってサボっててもいいけど、私は開発を出来るだけ早く進めたいって言ったわよ。キルギス達はすぐに戻ってくるんじゃないの?書類出来てないとか言ったら恥よね」

冷めた紅茶を飲みつつ、しれっと言う。


「ホント、鬼だな」

朝一で手紙を出し、遅いとは言えない朝食後にはもう屋敷にすっ飛んできたあの2人のこと。

早く開発を進めたいという私の言葉に従い、すぐさま折り返してくるかもしれないなんて予想は簡単にできる。


「作成書類たくさんあるけど、頑張ってね」

大きすぎる案件をまとめたのだ。

誓約書だの許可証だの作らなければならない書類は多々ある。


「それから、カイ。領内の有力者達に手紙を書くから届けて。何通書けばいいかしら」

開発を進めるにしても、領民の意見が重要だ。

乗り気なら人の住む地域で思い切って開発を進めていく。

そうでないなら、人の住まない未開発の地域を開発して、徐々に人の住む地域まで広めるしかない。

どう作業を進めていくのか、その方針を話し合いで決めてしまう必要がある。


「2通でよいかと思います。この領地には2つの街があり、それぞれに代表がおります。発言力も強いので、この方達の協力が得られれば、領内の協力を得られたと思っていいでしょう」

カイが2通分の紙を用意してくれた。

なるほど。

この国に来る前、事前に調べていて広い領地だとは思ったが、人の住んでいる地域は少ない様だ。


「さすがに街の代表者は私のこと知らないわよね」

信者であるのも困るが、知名度を利用できるなら話は楽なのだが。


「俺だってお前が信者持ちとか知らなかったぞ。さっき来たのが特殊なんだと思っておけ」

いやいや、私も信者がいるとか知らなかったし。

その前に、信者なんか持ちたくて持っているわけではない。

勝手に増殖しているだけなので、私は無関係。


「出来れば街中を一気に開発しちゃいたいのよね。どう書いたら賛同してもらえるかしら」

まずは集まってもらって、言葉で丸め込むのが一番早いのだが。

手紙の内容によっては集まってすらもらえなくなる。

さて、困った。


「その2人はどういう人物なの?」

まずはそこからだろう。


「市民思いの慕われた人物達だ」

ざっくりとルキナが教えてくれるが、なんの役にも立たない。

見かねたカイが補足してくれた。


「1年の半分は雪に閉ざされるスノーベルの街は団結力が強く、市長のアズル殿は市民のためならルキナ様に喧嘩を売ってでも要望を通そうとされる方です」

実際にアズルが市長になった2年前、除雪作業で人員や資金不足で喧嘩を売りに来たそうだ。


「貧弱な大地が広がるアリスベルの街は高齢化が進み、農作放棄地が多く、市長のアトヴィル殿は必至で新たな事業を打ち出している方です」

その新規事業も失敗続きで、この領地の資金不足の主な原因とされている問題市長だそうだ。


「豪雪地帯に農作放棄地帯か。ちょうどいいわね」

進めたい開発の柱だ。

話を聞く限り保守的な感じはしないし、ありのままの状況を書けば会うことはできそうだ。

簡潔に書いた手紙をカイに渡す。


「よろしくね」

それを受け取るカイ。


「了解しました。さっそく届けてまいります」

カイのその言葉は、ルキナの机仕事は手伝わないという宣言と同じ。


「おい」

そのことに、すぐ気付いたルキナが恨めし気に睨むが、カイは涼しい顔。


「ご自分の仕事をさぼろうとしているルキナ様と、領地のために尽力されているセレナ様。どちらを優先させるかは一目瞭然です」

きっぱり言い切る。


あ、なんか、自国での私の信者って、こうやって増えていった気がするな。

いや、きっと気のせいよね。

うん、気のせいのはず。






昼食を取り、今は優雅にティータイム。

そんな贅沢な時間をぶち壊す馬車のいななき。

何事かと窓の外に目をやれば、玄関真ん前まで馬車が乗り付けている。


「セレナ様、セレナ様がここにいらっしゃるんですか?」

貧相な男が馬車から飛び出してきて、扉に縋りついている。


「何事ですか」

慌てて屋敷から飛び出してきたのは、この屋敷の家令。


「セレナ様がここにいらっしゃると、手紙が」

プルプルと震える手で、確かに先程書いた手紙を持っている。

あれ、既視感?

なんか今朝もこんな光景を見たように思う。

そんなやり取りをしている玄関先に、もう一台の馬車が横付けされた。


「おい、セレナ様がこの屋敷に滞在なのは本当か?」

もう一台の馬車から飛び出してきたのは、マッチョなお爺さん。


「こんな光景、今朝も見たな」

玄関先のやり取りを食堂の窓から一緒に眺めていたルキナが私に尋ねる。

やっぱり?

気のせいじゃないよね。


「先ほど手紙を渡したアズル殿とアトヴィル殿ですね。セレナ様の名を連呼しているようですが」

一度似た光景を見ているだけに、なんとなく嫌な予感しかしない。


「もしかするのか?」

ルキナの視線が私に向く。


「どうせ信仰するなら自国の人間にすればいいのに」

わざわざ他国の未熟な子供を信仰しなくてもいいだろうに。

ちょっと頭が痛くなる。


祖国では……以下略。

前世の豆知識で商人、農業者から崇拝されてたが、そういえば領主や市長にも信者がいたなと、今更ながらに思い出す。


主に豆知識で農業や流通が発展して、恩恵を受けた土地の権力者だ。

なんでも私を拝んでから、構想段階の改革案を相談すれば、必ず成功するとかで、生神扱いされてた時期もあった。

両親がこんな怖い宗教を取り締まってくれたので、ここ最近は平穏に過ごしていたから、すっかり忘れてたよ。


「もう一度聞くが、お前は何者なんだ?」

ものすごく不信な目を向けられました。

そんなの私が知りたいです。

信者の中の私は何者になっているのでしょうか?

たくさんのPVアクセスやブックマークありがとうございます。

週末は予約投稿だったので、いろいろと本日確認して、びっくりしました。


ストックがそろそろ切れそうなので、毎日更新が危うくなってきてますが、温かく見守ってくれると嬉しいです。

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