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信者増殖中  作者: ゆるり
16/20

No.16

長居不要とばかりに、第二王子の屋敷から帰還。


「あとは王太子の方か」

あんな無理やりな飲ませ方をすると、投獄されても文句が言えないぞと言うルキナ。


「それなんだけど……もしかしたら、王や王妃は病気を治すこと、望んでないかも」

あの巨大肖像画のせいで失敗した。

そもそも動揺するなと言う方が無理だろう。

おかげで重要キーワードをスルーしてしまったのだ。


第二王子の病は、母である第二王妃によってもたらされたもの。

報告書から王太子も同じ症状。

王妃も第二王妃も母様の幼馴染で、魔力を体内に溜め込み過ぎることの弊害は知っているはずなのだ。

それは弟である国王も同じ。

なのに第二王妃は王子にちょっとしたことでも回復魔法を使わせていたという。

そんな指示を出せば国王だって気付くだろうに。

なんとなくだが、王太子も同じ状況なのだろうと予想する。


「うわ、すごく面倒なことに首突っ込んだ気がする」

なんで治療する前に気付かなかったのよ、私。

思わず手で顔を覆い、嘆く。


「どうした、急に」

そんな私にびっくりしたようなルキナ。

そうだよね、ごめん。


母様、絶対わかってて私をここに行かせたんだよ。


王子達の病気を治しちゃえば、どうにかなるかと思っていた。

あとは勝手に王位継承争い激化させてても、ぶっちゃけ構わなかったのだ。

ルキナが王位継承争いに巻き込まれないならそれでいい。

とりあえず私と私の周りが平和なこと、それが最重要。

なのに……裏ありそうだよ。


「カイ、頼んでた調べ物。出来た範囲でいいから見せて」

密偵の使い方を伝授したときに、練習を兼ねて出した課題。

すぐさま紙の束が出てきた。

想像以上の量。

なかなかに優秀だ。

とは言え、ちょっと詰めが甘いか。


「これで物証もあると完璧なんだけどね」

決定打には欠ける情報ばかりだ。


「ま、これでも十分役に立つ」

今度は何事だと、固唾を飲んで様子をうかがっているルキナに紙の束を渡す。


「厄介ごとに首突っ込んじゃったみたい。第二王子の病に対処した時点で、もう後戻りできなくなったから」

渡された紙の束に目を通して、ものすごく嫌そうな顔をするルキナ。






場所を応接室に移して、作戦会議中。

仕事部屋だと、来客があるかもしれないための処置だ。

「まずは王太子。こっちも病を治しておかないとやっかいね。カイ、薬渡すから、密偵使って、王太子の口にねじ込んできて」

どこで何が起こるかもわからないし、いろいろ面倒なので奇襲攻撃といこう。


「さて、どうすれば面倒が少ないか……」

どう転んでも、面倒だが。

カイに頼んでいたものは、王太子派、第二王子派の中心人物達の身辺調査。


いや、出るわ出るわ。

ちょっと叩けば、わんさか埃の出る身でした。

主に第二王子派が。

物証は集められなかったけどね。

いろいろと汚れきった身なので、第二王子派は自分達の推す王子が王座へついてもらわないと大変なことになる。

ハッキリ言って、なりふり構っていられる状態じゃないだろう。


王太子は王妃の産んだ、最初の王子。

頭もいいし、武術もそこそこ。

私の信者ではあるが、公私の区別は付けているようなので、それなりに人望もある。


対して第二王子は第二王妃の産んだ、二番目の王子。

立派な王太子がいるからと、甘やかされて育った節がある。

変な宗教にどっぷりハマって困った存在だが、扱いやすい王子でもある。

……変な宗教か。うん、まぁ、いいけどね。


普通に考えれば、どちらが次期国王にふさわしいか一目瞭然。

しかし、身辺綺麗でない方々には、何が何でも第二王子を王座に据えないとまずいよね。

あの手この手を駆使したらしく、いつの間にやら、王位継承争いとなってしまったようだ。


しかし解せない。

第二王子派の中心は小物ばかり。

まあ、王太子派も大差ないけど。

大物貴族はこぞって保留を決め込んでいる。

王太子にも何か問題あるのかな。

まあ、いいか。


とりあえず、王と王妃達は王位継承問題を棚上げするべく、王子達には病気になってもらったというところだろう。

えげつないなと思いつつも、旗頭の王子がどちらも病に倒れているから、様子見のこう着状態。

思惑通りといったところか。


で、私が第二王子を治しちゃったので、一気にバランスが崩れると。

強引に継承争いまで持ってきてしまった人達だ。

王太子が病気で、第二王子が全快では非常にまずい。

ここは王太子も治して、同じ土俵にしとかないと。

さて、この後どうしたものか。


放置といきたいところだが、それぞれの王子を支持する小物は、私がルキナに嫁ぐことをよく思っていない。

いつか王位争いに巻き込まれるのがオチだろう。

ここは先手を打って、潰しておくか。


「ルキナ、国王に報告して。私が懐妊したって」

静まり返る室内。

ルキナとカイは完全に固まっている。

まあ、そうか。

言ってないものね。

やっぱり予感は当たるんですよ。

口止めした上で屋敷の治療師に、魔法を使って確認してもらっているので誤診は無いと思う。


「ま、真偽なんてどうでもいいのよ。噂が流れて信じる者が出る。それが重要」

真相は濁しておきます。

本当の事だと伝えて、安全第一とか行動に制限かけられると、今は厄介なので。


ルキナはどういう反応していいのかわからず、迷った挙句に無表情ってところだろうか。

その横のカイは、ものすごく残念そうな顔をしている。

うん、見なかったことにしよう。


「反乱分子、焦るわよ。この結婚、白紙にできない上に、子供は王位継承問題の新たな対立候補になりかねない。しかも、かなり強力なね」

母様はこの国の英雄だ。

内乱が続いたこの国を、その知略と武力で収めたという。

今の母様からは想像つかないので、かなり美談にされてる気がするが、現在もこの国では絶大な支持がある。

その娘であり、現国王の姪。

私と王子の間に出来た子であるなら、王座に就くことも可能。

そのうえ、母様の支持者や、私の信者が味方に付く。

さすがにこれは反乱分子にとってかなりの脅威だろう。

報告書を見ても、短気な小物が多いので、あちらさんは危険な芽を早々潰しに来るはず。


「自己防衛は罪にならないでしょ」

それが一番面倒ない。

証拠がないなら、自分が囮になればいい。

潰す対象が、向こうから来てくれるのだ。

こんな楽なことない。


「まあ、私では刺客から身を守る術が無いので、身代わり用意するけどね」

実家にちょうどいいのがいますから。






準備を整え、1週間後。

ちょっと早いが、明日には王都へ出発する。


国王に懐妊報告したら、すぐに長文の手紙が来た。

婚姻前に何をやっておるのだと、かなりご立腹らしい。

そりゃそうだよね。

母様とかは全力で喜びそうだけど。


「姉様……」

祖国から使者が来るそうなので、そこで事情説明するらしい。

事情説明もなにも、母様の思惑通りなのだから、抗議とかは無いのに。


「姉様」

国王様は気が小さいのかな。

ただ単に、母様が怖いだけか。

それなら納得。


「姉様!」

だんだん語調の厳しくなっていく声に、どこか遠くへ行ってた意識を帰還させることにした。


「なによ、アルス」

実家から身代わり呼びました。

絶世の美少女な弟を。

誰がどう見たって女性です。

しかも母様にしごかれて、剣や武術の達人です。

下手な影武者立てるより、よっぽど安心な身代わりですとも。


「さすがに無理があるだろう」

呆れたようなルキナ。

アルスがその通りだとでも言いたげに頷く。


「どこが問題よ」

全くの適任ではないか。


「顔の作りが全然違うだろうが。セレナを知っている者が見れば、一目で偽物とバレるぞ」

ルキナに怒られた。


「ああ、それは大丈夫。私の顔、ちゃんと覚えている人って皆無だから」

信者は除くが。


社交界から逃げてるとかではありません。

最低限のお勤めくらいはしてます。

しかし、母様と弟のインパクトが強すぎて、私は人様の記憶に残らない。

未だに私も絶世の美女だろうと、夢膨らませている人が多数存在しているそうだから。


なのでカツラでも被せて変装したアルスが私の身代わりをやる。

それは、本物より敵側を納得させることになるのだ。

……ちょっと泣けてきた。


「凹むなら言わなきゃいいのに」

弟が正論を言ってくる。

人間とは矛盾の中で生きる者。

無茶言わないでよ。


「とにかくアルスは私のフリしてルキナと王都へ行くの。しっかり目立って敵をおびき出すのよ。まとめて片づけちゃうんだから」

危ないのを放置しておくと、今後の生活に支障が出る。


あとは、せいぜい問題があるとすれば……服くらいだろう。

私の服、結構手直し入ります。

身長同じくらいなのに、私よりも手足が長くて、ウエストが細いそうです。

ホント凹むから。


「お前はどうするんだ?」

ルキナが素朴な疑問を投げかけてくる。

え、今更?

そういえば聞かれなかったから、言ってないか。


「もちろん別行動で王都行くわよ。害虫駆除しながら」

ひとり別行動をいいことに、楽園計画にも着手します。

密偵とか刺客とか、裏家業の人間は結構好み。

これを機に是非とも、ルキナの側に置いて目の保養になるような人物のスカウトをしないと。

思わず満面の笑みになってしまう。

あれ、ルキナとカイが固まってる?


「姉様こういう人なんです。義兄様、頑張ってください」

アルスがよくわからない慰め方をしている。

何か理不尽。

勢いと思い付きで連載をスタートすると、完結させようと考えたとき、こんなに苦しくなるんですね。

今更ながらに、小説の書き方というものを見てみました。

なるほど、プロットというのを作るのが普通らしいです。

そういうのを書かないで、行き当たりばったりで書いてたからな。

何とか書けた範囲で投稿していってます。

ブックマーク登録、こんなに頂いているのに、不甲斐ない完結になりそうです。

初心者ですみません。


もう一つの連載の方はちょっと止めます。

ここで言うのもなんですが。

まずはこちらを完結させ、大まかな話の流れを決めないと迷走することが判明。

すみません。

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