No.13
朝日がまぶしいです。
体のあらぬ場所が痛いです。
隣では、やたら綺麗な顔したルキナがあどけない顔して寝ています。
「母様か……」
すっかりクリアになった頭で、昨日のことを振り返り、なんか答えが出た。
母様は実の取り違えなんて凡ミスやらかさない。
意図してやったに違いない。
えっと先月、月一のが来たのは……
指折り数えて、ため息が出る。
母様がここまで把握していてやったのなら、かなり怖いことだ。
とはいえ状況はどうであろうが、これは自分からやらかしたので、自己責任。
それにしても、こんな綺麗な人間がよく平凡な私相手にのってくれたと思うと、ルキナに対してはちょっと罪悪感。
こういう方面は見るのは好きだが、やるのは辛いと判明。
ソフトなのからハードなのまで知識はあるが、体は清いままだったので、とにかく痛かったとしか言えない。
「すまない」
いつの間にか起きていたルキナが、申し訳なさそうに謝罪してくる。
謝られることは何もないはずだが。
「何に対しての謝罪かは知らないけど、後悔とかは無いからね」
これだけは宣言しておかないと、ルキナが面倒なことになりそうだ。
「まあ、この後いろいろと大変だろうなと考えると、気は重くなるけど」
聞こえるか、聞こえないかの小さな声でつぶやく。
しかし、なる様にしか、ならないだろう。
「とりあえず、出戻り希望は無くなったな。本腰入れてルキナに嫁ぎましょう」
母様の意志はすごく強そうなので、出戻ったところで変なところに行かされそう。
ならルキナのところがいい。
それに私は知っている。
こういうやらかしちゃったときほど、避妊しなかったことを後悔するパターン。
女性恐怖症の弟を思うと、実家の後継者問題が切実だし、母様の意図もそこにあるのだろう。
その点については私も心配していたので、納得する。
こう思うあたり、私もこの世界のお貴族様思考に侵食されているんだろうな。
「よろしくね」
微笑んで、呆然としているルキナにキスひとつ。
そこへ日課のメイドがノック無しで入ってくる。
タイミング、バッチリ。
私とルキナを見て、呆然と立ち尽くしている。
「…………」
メイドに気付いたルキナも声が出せずに、顔を真っ赤にしているよ。
どこの乙女ですかと問うていいだろうか?
「今日は一人じゃないから、自分で支度するね。戻っていいよ」
立ち尽くしているメイドに声をかける。
それに弾かれたように我に返ったメイド。
「し、失礼しました」
慌てて出ていく。
「なんでノックもしないでメイドが入ってくるんだよ」
こちらも我に返ったのか、ルキナ狼狽えている。
「私が世話されるの嫌って、最初の頃はよく部屋を脱走していたのよ。それを捕まえるために、奇襲はメイド達の定番ね」
毎日時間を変えているが、パターン化しているので、逃げるのは難しくない。
今日はそれを利用させてもらったが。
これで屋敷中に私とルキナのことが広まる。
これを機に、いつか帰ってしまうかもしれないお客様という考えは改めてもらおう。
「さてと、めんどくさくて棚上げしていた問題に取り組みますかね」
さっそく行動に移そうとしてベッドから出ると、ルキナが盛大なため息をついた。
「いろいろとツッコミどころ満載だが、とりあえず服を着てくれ」
そう言って、放ってあった夜着を投げられた。
仕切り直して。
身支度を整え、周囲の好奇心に満ちた視線に晒されながらの朝食を終え、ルキナの仕事部屋に集合。
メンバーは私、ルキナ、カイ。
「それで、棚上げしていた問題とは何だ?」
一緒に朝食を取ったのだが、こちらも好奇心に満ちた遠慮ない視線にさらされたルキナが、不機嫌そうに聞いてくる。
「王太子と第二王子の病気。あれ直しちゃおうと思って」
さらりと言ってのけると、ルキナとカイの目が見開く。
怖い、怖い。
「報告書を見ると、たぶん私が予想している症状なのよ。だっだら直せるから」
部屋から持参してきた書類の束をパラパラと見て答える。
「ちょっと待て。その報告書は何なんだ」
見たことないと訴えるルキナ。
そりゃそうだろう。
だって見せてないもの。
「上2人の王子の病歴と治療の報告書」
ルキナってば、いろいろなところから監視されているようで、あちこちに密偵がいたのだ。
それをちょっと説得してみたら、簡単に寝返ってくれたので便利に使わせてもらっている。
「……お前、本当に何者なんだよ」
ざっくり私用の密偵手に入れた経緯を説明すると、お決まりの文句を言ってくる。
「私は私としか、答えられないわね」
他に言い様など無い。
「ま、それは置いといて、ルキナに確認」
置いとくなよとツッコミ入るが無視。
「ルキナが王位を継ぎたいと言うなら、兄王子達の病気はこのままにしておく。どうする?」
別に死ぬような病気でもないのだが、王座に就くには健康であるべき。
上2人が病弱であれば、ルキナに王位が回ってくる可能性が高い。
「王位を継ぎたいなんて言ったら、セレナは祖国に帰るだろう。このままの生活を望む」
きっぱりと言い切る。
「あら、私を選んでくれるんだ」
ルキナが王座を望んでも、もう出戻りしたいとか言わないけどね。
そこは黙っておこう。
王妃になりたいわけでもないし。
「もともと王位なんか望んでないだけだ」
不服そうにそっぽ向くルキナ。
なら初めからそう言えばいいのに……
「なんか可愛いのよね」
思わずもれてしまった心の声。
誰がとは決して言っていない。
しかし本人にはわかってしまったのだろう。
むっとした表情を浮かべている。
そしてカイは同士を得たという喜々とした顔で私を見ている。
あはははは……
笑って誤魔化そう。
「じゃ、遠慮なく兄王子達の病気を治しちゃいますか」
この2人が健康になれば、第三王子のルキナに王位が回ってくる可能性は遠ざかる。
ルキナを監視している各地の有力貴族たちも、放っておくようになるだろう。
彼らは次期国王に取り入るため、取り入り先を間違えないために監視しつつ見極めているだけなのだから。
「ただ、元気になったら王位争いが激化するよね」
うーんと悩み、良い手が思いつかない。
「ま、なるようになるか」
どう転ぶかわからないものを、ここで悩んでいても仕方ない。
「ルキナ、3か月後に王都へ行くよ。治療に不可欠な薬草だけど、試験的に栽培している物がそのくらいで採取できるから」
それまでにいろいろと準備をしておかなければいけない。
「3か月後なら国王の生誕祭があるな。どちらにしろ王都へ戻らなければならないんだ。お前も同行すればいい」
あえて帰城の理由を考えなくていいのは助かるとルキナが言う。
「そうだ、カイ。後で私的に使っている密偵達紹介するね。情報収集のスキル、伝授するから、大いに活用してあげて」
集めて欲しい情報とか、たくさんあるし、練習かねて頑張ってもらおう。
私の言葉に頷くカイ。
それを何とも言えない顔で見ているルキナがいた。
コメントありがとうございます。
思いのほか、大丈夫だと言っていただけて、安心しております。
個別にお返事書けなくてすみません。
代表してちょっとだけ。
白い結婚……はじめはそのつもりでした。
ただお母様出てくると面白いかもと思い付いたら、この結果に。
話書きながら、思い付きと勢いで書いているので、前に書いた話と矛盾が出てきてしまいます。
未熟な作者ですみません。
タイトル詐欺
その認識はありませんでした。
内容にあまり合っていないのだから、そうですよね。
こちらの件もすみません。
そろそろラストに向けていこうかと思っています。
ただ、ラストって難しいんですね。
乙女ゲームのBL二次創作中心だったので、冒頭やラストって気にしないで出来たんですが、オリジナルは大変だと今更ながらに実感。
ご期待にそえられるかわかりませんが、頑張ってみます。




