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第三十六話

遅れた理由

長慶ss書いてた

艦これイベントしてた

東京でオフ会してた

感想返しはやりますので






 年が明けた1567年(永録十年)一月、将和達は岐阜城にて新年の催し(催しという名の宴会)をしていた。それもそのはず、丹後一色と若狭武田が降伏した事により領地拡大を祝っていたからだ。


「日本海側の領地を保有出来るのは幸いです。交易で儲けもあるでしょう」


 幾分か酒を飲んだのか、頬にウッスラと赤みを増している加藤はそう告げる。


「朝倉は若狭の保有を承知して後は加賀の備えでしょうな」

「うむ。北陸の備えは完璧だろう」

「それに黒田官兵衛……孝高の加入は有りがたい」

「は、身に余る光栄です」


 将和の言葉に孝高は頭を下げる。これで葛城家は半兵衛官兵衛の両兵衛に正信、加藤を加えて知の四天王となる者が成立したのである。


「まぁ正月くらいは羽目も外しても大丈夫だろう。今日は大いに飲んで食べてくれ」

『御意』


 どんちゃん騒ぎで葛城家主要陣は二日酔いになるのであった……が、将和は加藤達日本軍を緊急に招集した。


「集まってもらったのは他でもない。俺の世継ぎの事だ」

「虎丸様ですか? まさか虎丸様の身に何か……!?」

「いや、そうではない河野大尉。俺の世継ぎは虎丸と決まっている。しかしだ」


 将和は加藤達を見渡す。その様子に加藤達も畏まる。


「いつ何時、俺の身に何が起きるか分からない。合戦中に流れ矢で戦死するかもしれないし恭順した者に暗殺されるかもしれない。そこで世継ぎの虎丸を補佐する者を粗方決めておきたいのだ」

「成る程。後見人ですか」

「うむ。これは虎も承認している」

「隊長殿、これは皆が集まって決めるまでもありません」


 近藤大尉はにこやかにそう告げる。いつの間にか皆の視線は加藤に向いていた。


「……自分が……ですか?」

「やはりか……お前に後見人を任せたい加藤」


 将和の言葉に加藤は目を見開く。


「それは大任です隊長殿」

「なに、俺が万が一戦死した時だ」

「ですから申し上げているのです。失礼ではありますが、仮に隊長殿が戦死したとしましょう。皆さんは自分に従えますか? 自分は学徒動員された少尉ですよ」

「だからこそだよ加藤」


 松田大尉が言う。


「確かに戦に関しては我々が上だろう。しかしお前は大学に入り民間から招集された身だ。少なからず政に関しては我々より上、ならば後は分かるだろう?」

「それは……」


 加藤は幾分か悩んでいたがやがて頷いた。


「……分かりました。後見人の任、引き受けましょう。ただし、隊長殿が戦や暗殺などをされた場合のみです」

「うむ。まぁ俺も死なないようにしよう。死ぬなら畳の上だな」

『ハッハッハ』


 将和の言葉に皆が笑うのであった。そして一月二十日には若狭、二五日には丹後が葛城に降伏したのである。


「長秀、信興。共に大儀だった」

「はは」

「御意」


 葛城の言葉に二人は頭を下げる。


「これで畿内の上は押さえました。問題は……」

「紀伊だな」


 半兵衛の言葉に将和は溜め息を吐いた。紀伊では雑賀孫一の親葛城派と反葛城派(土橋氏)が争っていたが親葛城派が苦戦し孫一は葛城家に救援の使者を送っていたのだ。


「……救援の軍勢は光秀を総大将に副将は河尻とする」

「そ、某をですか?」


 将和の言葉に列席にいた光秀が驚く。


「うむ、何れは御主にも国の一つを治めてもらう予定だ」

「某をそこまで……はは、必ずや紀伊を攻略してみせまする!!」

「あまり気張り過ぎるのも良くないからな」


 燃える光秀にそう釘を指す将和だった。二月十日、光秀は総勢二万五千を率いて紀伊へ進軍する。他の参加武将は九鬼義隆、細川藤孝、別所長治、荒木村重等である。


「熊野水軍を領土安堵の調略とする」


 途中、駐留する岸和田で光秀は河尻に告げる。


「成る程。熊野水軍は良き手じゃ」


 河尻も光秀の案に賛同して熊野水軍を擁する堀内氏虎を調略した。そして救援の軍勢は雑賀城へ入城、残存の雑賀孫一の軍勢を吸収して反葛城派の土橋氏を蹂躙する。


「……無念也……」


 土橋守重は館に火を放ち、弟の土橋重治と自害した。土橋氏の一族や反葛城派は太田城に立て籠る。その間に光秀は他の国人衆達に降伏を促しこれに高河原、小山、色川氏は降伏して本領安堵。また口熊野でも安宅氏が降伏するのである。


「反葛城派は太田城に立て籠っているようですな」

「太田左近宗正と申す者か……」


 太田城には地侍を含めた約四千が立て籠っていた。


「忍からの報告では太田城は町の周囲に水路を巡らせた環濠集落に似た構造ですな」

「……水攻めはどうであろう?」


 別所長治が光秀にそう告げる。光秀が周りの諸将を見渡すと皆も頷いており水攻めが決定された。

 二月二五日から築堤が開始され三月五日までには完成した。その堤防は奇しくも史実での太田城攻防戦で築堤の全長、高さは一致していた。


「数日には終わるであろう」


 それは光秀達の見解だった。しかし、ここで史実の補正力が動いたのであろうか。三月八日、太田城北東には以前から治水及び防御施設として堤が築かれており籠城が始まると補強されていたのだがこの日に堤が切れて城内へ浸水して城内を混乱に陥れた。だが、堤が切れた事で水圧に変化が起こり、逆に水攻め堤防の一部が切れて細川藤孝勢に多数の溺死者が出たのだ。


「神威じゃ!!」

「この戦は我々の勝ちだ!!」


 城内の兵達はそのように喜び、粘り強く抵抗した。太田城の様子に光秀は少々焦った。


「いかん……」


 光秀は一気に攻めようとしたが九鬼が諫める。


「落ち着きなされ光秀殿。我が殿は少々の事では怒りませぬ。逆に我々を心配なさりますぞ」

「そうでござろうか九鬼殿……」


 九鬼義隆は豪快に笑い光秀を励ます。


「それでしたら九鬼殿。貴下の水軍全軍を投入したいのです」

「一気に片をつける気か……良かろう。全軍投入しよう。火薬箱を貰うぞ」

「構いませぬ」


 火薬箱とは大手門等城門を破壊するために木箱に火薬を積めた箱の事である。後にこれは小判を貯蔵する千両箱にも使用される。

 そして三月十五日に総攻撃を開始した。太田城側も必死の防戦をしたが安宅船も投入しての攻撃で十七日には城域の大半を占拠した。これに対し籠城側も抗戦を断念して太田左近宗正以下主だった者は自害して首を差し出して降伏するのであった。

 なお、この時主な者の妻達を磔にしようという声があったが光秀は一蹴した。


「妻達は何も悪くはなかろう」


 光秀の対応に領民達は光秀に好感を得るのであった。




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