第三十三話
アルファポリスは残念ながら落ちました。
やはり旧軍がネックなんですかね。
日本軍は四万二千の兵力で北伊勢に侵攻を開始した。一向衆は史実同様にゲリラ戦法でをとった。しかし――。
「任務完了」
森の中で地面に横たわる複数の一向衆の死体に甲賀と伊賀の忍びは無表情で見ていた。一向衆の死体の全ての首には斬られた後がある。それは忍び達が後ろから忍び寄り一刺しであの世へと送っていたからだ。
「疾風様」
「隼か」
疾風の元に一人の中忍が現れる。
「二里先の林にも門徒がいました」
「全員始末したな?」
「無論であります」
「良し。引き続き門徒を処理する」
「御意」
そして二人はまた夜の闇の中へ消えていくのである。
「疾風達忍びのおかげで進軍が捗るな」
「念のために予備兵力を尾張に二万ほど用意させましょう」
「うむ」
半兵衛の案で尾張に二万の兵力が集められる事になる。
「九鬼の水軍はどうか?」
「凡そ二百の軍船が長島を包囲する予定です」
「津島の商人にも協力を要請だ。一向衆に通じれば一族もろとも処刑だと伝えろ」
「御意」
将和は強い口調で半兵衛にそう告げた。将和の言葉はそのまま伝えられ、津島の商人は元より情報を聞いた他の商人達も戦慄した。
「これは……」
「本気で一向衆を駆逐しようとする将和様の意思であろうな」
「うむ。儂も長島の一向衆とは取引をしない事にする」
「儂もじゃ」
「うむ」
逆に商人達は将和に進んで物資や情報の提供をする事にした。将和に恩を着せがたいために積極的にするのである。
「一向衆の様子は?」
「小手先が通じないと見て進軍してくるでしょうな」
「砦の構築は?」
「凡そ八割方完成しています」
数日後、九鬼の水軍は海岸を押さえ海上から脱出させないように包囲し将和の軍勢は一向衆が立て籠る小木江城から三里のところで簡易の砦を築いていた。
長島城にいる証意や下間達は門徒達が帰ってこないことに葛城に小手先が通じないと判断していた。
「ここは一気に進軍するべきや」
「むぅ。伊賀、甲賀の忍びが向こう側とは予想を上回る事だな」
「我々門徒達は十万以上や。粘り強く押せば葛城に勝てるんや」
「……攻撃だ」
下間は何か引っ掛かる事があったが、その迷いを振り払い攻撃を促したのである。長島城にいる一向衆は直ぐに出陣、小木江城の一向衆と合流して砦で待ち構える葛城軍に攻撃を開始したのである。
『南無阿弥陀仏!! 南無阿弥陀仏!! 南無阿弥陀仏!!』
門徒達は竹槍、鍬、刀、槍等を装備して念仏を唱えながら砦に突き進む。
「距離二千で砲撃開始します」
「うむ」
松田大尉の言葉に将和は頷いた。砲兵隊は長四斤山砲に榴散弾を装填する。
「準備完了!!」
松田大尉は部下の報告に無言で頷き、念仏を唱えながら突撃してくる一向衆に視線を移す。
「距離二千……切りました!!」
「砲撃開始ィ!!」
「撃ェ!!」
長四斤山砲が松田大尉の命令の元、砲撃を開始した。次々と発射される榴散弾は若干の放物線を描いて突撃してくる一向衆の中に着弾。着弾したと同時に衝撃で金属の容器が破裂して周囲に鉛玉や金属片(刀の破片)を撒き散らして一向衆の門徒達に致命傷を負わしていく。
「ヒ、ヒイィィィィィ!?」
「何だあの攻撃は!!」
「雷みたいな音だぞ!!」
「退くな!! 我等には阿弥陀様のお加護があるぞ!!」
砲撃に一向衆達は混乱するが侍大将達が必死に建て直しを図る。しかし、次々と飛来してくる榴散弾に一向衆の門徒は一人、また一人と地に伏せていく。
「砲撃の手を緩めるな!! 焦らず、慌てず、正確に砲撃せよ!!」
松田大尉は兵士達と共に榴散弾を装填しつつそう叫ぶ。砲兵達も己の責務を果たそうと必死だった。一向衆は砲撃だけでは駆逐出来ず、互いの距離は五百を切る。
「射撃開始ィ!!」
ドライゼ銃を持つ兵士達が一斉に射撃を開始する。
「そんな遠くから当たるわけ――」
葛城軍が焦ったと思っていた侍大将は銃弾を胸に受けて落馬した。
「何だあの種子島は!?」
「奴等の中に妖怪でもいるのか!!」
砲撃を受けながらも前進していた一向衆の門徒達は更にドライゼ銃の射撃を受けて距離三百で停滞していた。門徒達は屍の門徒を盾に突き進もうとするが、葛城軍の弓隊が曲射の射撃をして門徒達の命を刈り取る。
それでも門徒達は距離百まで近づいたが、そこからは種子島が持つ兵士達が射撃を開始する。集められた種子島は千二百丁であり次々と迫り来る鉛玉に門徒達は完全に戦意を喪失した。
「ひ、引けェ!!」
遂には門徒達は長島城へ撤退し始めた。将和は追撃の手を緩めなかった。
「根絶やしだ」
「御意」
本多忠勝の部隊等五千が門徒達を追撃して更に門徒八百人を討ったのである。
「負傷している門徒に止めを刺せ。せめてもの情けだ」
一向衆狩りは徹底的に行われ、この一回の攻撃で門徒一万三千人が討死した。負傷者は全て殺されたので討死になっている。将和の余程の決意であった。
「小木江城はどうか?」
「凡そ一万の門徒が立て籠っているようです」
「宜しい。徹底的に攻めて一人も残らず冥土に送ってやれ」
「門徒の子どもも複数居りますが……」
「構うな。全ての責は俺が取る」
「……御意」
将和の決意に半兵衛は頷いた。そして小木江城への攻撃が開始された。長四斤山砲が小木江城に砲弾を叩き込み、城門、城壁を破壊していく。
降伏の使者は問答無用で斬られ有無を言わせない城攻めとなる。
激闘は二日にも及び、最後は一矢報いようとした生き残り門徒達が突撃したが種子島の射撃の前に地へ伏せたのである。
「……門徒の供養塚を建てよ」
小木江城を攻略した将和は最初に行ったのは門徒達の供養であった。
「……来世は幸せになってくれ」
供養塚を前に将和は敬礼するのであった。そして将和は長島城の包囲を徹底的にした。
「長島城へは鼠一匹も通すな!!」
長島周辺は九鬼の軍船が包囲してその包囲を突破しようとする者は女子どもであろうと容赦なく斬り捨てられた。
「後は兵糧攻めだ。それだけで奴等は終わる」
長島城の包囲完了を九鬼から報告を受けた将和はそう発するのであった。後に長島城は三ヶ月程粘るが餓え、餓死の門徒が多数続出して将和に降伏するのである。
しかし――。
「奴等が出てきたところを撃て」
船で出ていこうとした門徒達に容赦なく種子島の鉛玉が降り注ぎ、門徒達は全て虐殺されたのである。
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