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第二十八話






 三好を畿内から駆逐した日本軍は威風堂々と河内国の飯盛山城へ入城した。


「隊長殿、堺から今井宗久がお見えです」

「今井宗久か」

「恐らくは堺の事でしょう」

「分かった、通せ」


 そして今井宗久が葛城の御前に現れる。


「今井宗久です。お会いできありがとうございます」

「前置きは良い。それで用とは?」

「は、堺は頭を下げますとの事ですわ。私がその仲介を担う形で訪れました。それで少しばかりですが……」


 今井はそう言って自身が持ってきた松島の茶壺や紹鴎茄子など史実で信長に献上した品物を葛城に献上した。


「……分かった。御主の誠意に免じて御主に仲介しよう」

「ありがとうございます」

「堺には矢銭三万貫を課す。受け入れるなら葛城が堺を保護しよう」

「三万貫ですか……」

「無理かな?」

「いえいえ、無理を通すのが商人という物ですわ。私にお任せ下され」


 今井宗久はそう言って堺の会合衆と交渉して見事に矢銭三万貫を条件に堺が降伏するのであった。


「これで河内、堺は手中に治めた。残りは……」

「石山本願寺の摂津ですね」


 後に信長と対立して実に十年間も信長を苦しめたのが石山本願寺の一向一揆である。


「十年も時を費やす事はしたくない」

「なら外交ですか?」

「うむ。だが加賀と長島は何れやらねばならない」

「……殲滅ですか?」

「……そうだ」


 葛城は加藤の言葉に頷いた。


「……分かりました」


 加藤達も決断するのである。


「となると此処は直接腹を割って話すべきではないですか?」

「直接会談をか?」

「えぇ。寺内町の領有を認めるのを餌にしましょう」


 そして水面下で本願寺と交渉に入る頃、久秀は日本軍から分離した織田信広の軍一万五千と興福寺の僧兵と共に大和攻略をしていた。


「残るは筒井順慶が立て籠る筒井城のみか……」

「葛城殿の援軍はとても助かりますぞ信広殿」


 葛城は信広の軍に長四斤山砲六門、固定式曲射砲六門を与えて城攻めに役立たせていた。


(葛城……恐るべしじゃな。年甲斐もなくあれらを見て身体が震えたわい)


 山砲と曲射砲の砲撃を見ていた久秀は震えていた。


(葛城家……これは本当の天下統一を見れるかもしれない。殿……貴方の後継者はいましたぞ)


 久秀は在りし日の三好長慶を思い出しつつそう思う。


(だが……葛城が何者かは聞きたいものだな)


 そう思う久秀だった。それは兎も角、久秀と信広の軍は筒井城を攻めた。

 筒井順慶は徹底抗戦したが数の暴力には逆らえず、筒井城は攻略され筒井順慶は自刃したのである。なお養子だった定次は信広の軍が捕縛したため血筋は一応ながら長らえる。

 また、大手門で島清興が戦闘で負傷、後に捕縛されている。そして久秀達が京に戻る途中で河内、堺の報を聞いたのである。


「何と!? 我等より先に河内と堺を手に入れたと申すのか!!」

「は、三好三人衆の岩成友通も討ち取りました」

「何と……(やはり葛城殿は殿の後継者だった……)」


 久秀は改めてそう思うのであった。そして葛城と本願寺の第十一世顕如が清水寺で会談を行った。


「……つまりあんさんらは寺内町の領有は認めてくれはるというわけやな?」

「その通りです。ですが加賀と伊勢長島は別です」

「……分かっとりますわ……儂らでも押さえきれんほどにまでなっとる。表向きは儂らが抑えるよう書状を送りますわ。ですけど……」

「それでも止まらない場合はやります」

「……分かりました」

「あぁそれと、もし裏切れば本願寺はこの世から消えるでしょうな」

「……それは脅しかいな?」

「我々だってそのような方法はしたくありません。それに貴方方を敵に回すのは少々厄介ですからね。いつまでも日ノ本の中で争いをしているのは良くありません」

「……面白いなあんた」

「それはどうもです」

「……分かった。あんたに……葛城に協力したろうやないか」


 顕如は苦笑しながらそう確約するのであった。これにより本願寺は葛城側となるのであった。


「本願寺は此方側に付いた。摂津国攻略は楽になるかな」

「ですが油断はなりません。摂津には荒木村重や池田友正等もいます」

「うむ、確かにな。荒木等の調略はどうなっている?」

「荒木村重が信長に謀反した理由の説に本願寺寄りの説がありますので本願寺と協力して調略する予定です」

「分かった。正信らに任せよう」


 葛城達は評定を開いて今後の方針を思案していた。


「それと水面下ですが、朝倉が領土安堵を条件に降伏をすると申し出ていますね」

「朝倉か……確か義秋がいたはずだが……」

「関白様が裏でやっていたみたいです。義秋にも仏門に戻るよう進めてはいますが義秋は無視しているようです」

「……朝倉の降伏条件に義秋を追い出すのを条項に加えろ。義秋を追い出せば領土安堵の降伏とする」

「宜しいのですか?」

「義秋は何の力も無い。征夷大将軍も十四代将軍の足利義栄が病を理由に征夷大将軍を返上しているからな」


 そう認識している葛城だったが後に一つの誤算をしてしまう。それは兎も角、朝倉への書状は直ぐに越前に届けられた。


「義秋様を追い出せば領土安堵とするか……」

「それでは……」

「うむ、背に腹は変えんがやむを得ない。景鏡、義秋殿を追放せよ」

「御意」


 義景は従弟にあたる朝倉景鏡に命じて滞在する義秋を追放するのであった。


「おのれ葛城め!! 義景殿に儂を追放するなど命じおって……今に、今に見ておれ!!」


 義秋は僅か十数名の供と共に越前から出て行き先を越後にしてそのまま越後に向かうのであった。


「義秋は越後に向かったか……」

「越後となると上杉謙信……今は輝虎ですな」


 飯盛山城で葛城達はそのように話していた。


「義秋の要請を受けて輝虎は上洛してくると思うか?」

「可能性はあります。それに毛利と結んで包囲網を敷く可能性もあります」

「史実の信長包囲網か……」

「ですが信長包囲網には本願寺が含まれていたはずです。今の本願寺は我等の味方です」


 正信がそう意見を出す。


「うむ、本願寺には万が一に備えて中国地方方面に備えてもらうか」

「それと四国の三好三人衆も気になります」


 加藤はそう注意を促す。


「ドライゼ銃の生産はどうなっている?」

「順調ではありますがそれが何か?」

「……何れはだが、今の三個大隊から増強しようと思う」

「それが妥当かもしれませんね」


 葛城達の判断でドライゼ銃は更なる量産態勢に移行したのであった。




御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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