第十四話
感想とかは夜に返します
年が明けた1562年二月、三河は時折尾張から織田の軍勢から攻撃を受けていた。
「信長からの攻撃……か」
「少し奇妙ですな。彼は美濃に執着していたはずですが……」
「我々が三河も攻略したから信長自身も危ういと危惧したのだろう」
史実の信長による美濃攻めは桶狭間の戦いの前から行われており凡そ十年も織田信長は斎藤家を攻めていた。しかし美濃を攻略する事は出来ずにいた。偏に斎藤家の家臣が優秀だった事もあるが信長の美濃への執着心により美濃は1567年に攻略される。
「美濃が攻略されるまで後五年……」
「如何為されますか隊長殿?」
「………」
松田大尉の言葉に葛城は直ぐには回答を出さなかった。何せ相手は歴史上の有名な人物である。しかしそうなら松平元康はどうなるのか? 彼は後に徳川家康となり世界史上、長期に渡る平和な世の中を作り出した人物である。
「……残念だが織田信長にはここいらで歴史から消えてもらおう」
「分かりました。刈谷城はどうしますか?」
「水原大尉は既に吉田城で健闘した。次は中村大尉の歩兵中隊を刈谷城に差し向ける」
「了解しました。腕がなります」
中村大尉は嬉しそうに言った。
「後は忠勝と兵二千を出そう。忠勝達はどうしている?」
「今頃は水原大尉達と共に兵器の見学でしょう」
その頃、吉田城の近くにて水原大尉と忠勝、正信、数正達が演習していた。
「撃ェ!!」
「おぉ……何という音だ」
「これが未来の戦闘……か」
四斤山砲の訓練を見ていた忠勝達はそう呟いていた。彼等には葛城達の正体を言っていた。
切れ者の正信も「殿……」と呆れた表情をしていたがチハやチヌの戦車群や大砲を見せられては考えを変えていた。
「まるでおとぎ話のような事ですな」
「正信殿からそのような言葉が出るとはな。正信殿からした源平合戦で源義経に出会うようなものだな」
「成る程。そう言われると納得しますな」
水原大尉の言葉に数正はふむと頷いて納得した表情をしている。
「だが完全にはこうならないでしょう」
「何故でござるか?」
「弾が無くなればただの鉄の砲ですからな。だがら護身用に刀を装備させているんです」
「成る程。どんな未来の武器でも弱点はあるものですな」
「なので今作ってますけどね」
「……一つ質問を宜しいですかな水原殿?」
「何ですか正信殿?」
「貴方方の歴史では戦国の世はいつに終わりますかな?」
「……大体30年は先の話です」
「そうか……」
「……貴方方の事も多少は分かりますがどうしますか? 聞きます?」
「……やめておこう」
正信はそう言った。
「殿達が遠江を取った時点で歴史は変わっている……いや現れた時点で変わっている。そうじゃないかね?」
「……でしょうね(流石は本多正信、そこまで導き出せるとはな)」
水原大尉は内心、正信に感心しつつ演習に視線を移す。
「我々としては早くに戦が終わってほしいものです」
「だが牢人は世に溢れるだろう」
「そこが問題なのは確かです。まぁ何れ出来るでしょう」
水原大尉達はそう話しながら演習を見るのであった。そして数日後、刈谷城に中村大尉の歩兵中隊、砲兵隊(四斤山砲八門)と本多忠勝隊二千名が入城した。勿論それは直ぐに信長の元に舞い込むのである。
「葛城の軍勢が刈谷城に入ったと?」
「御意に御座りまする」
「殿、直ぐに攻撃しましょう!!」
織田の猛将である柴田勝家はそう主張をする。
「落ち着け権六。五郎左、兵はどれくらい集まれる?」
「凡そ六千かと」
「(葛城に一撃を与える好機!!)よし、準備出来次第出陣する!!」
『オオォォォ!!』
信長は最初に一撃を与えてから三宅と同盟を結び、美濃に専念しようとしていた。そして同盟の対価として妹のお市の方を差し出そうと思案していた。
(今は葛城を叩くのみじゃ!!)
そう判断した信長だった。そして織田軍六千は尾張と三河の国境付近にある刈谷城に進軍を開始した。
一方の刈谷城でも織田軍の進軍に気付いた。
「疾風達からの報せだ。信長が動いた」
「というと此方に?」
「あぁ。隊長殿には早馬で報せた」
「となると我々は本隊が来るまで此処で粘ると?」
「いや、忠勝殿の二千は外に出て隠れてほしい」
「中村殿が囮になると?」
「左様。忠勝殿は城に籠るより外で戦うのが好ましいであろう?」
「ハッハッハ。それはまた然り。ですが五百は残しておきます」
忠勝は嬉しそうにしながら兵二千を率いて刈谷城を出て織田軍から見えないに隠れたのであった。そして織田軍来襲の早馬は翌日には掛川城に到着した。
「即時に動かせる兵は?」
「国人達は合わせて三千、河野大尉の歩兵中隊、四斤山砲隊で凡そ四千ほどかと」
「よし直ぐに向かおう」
「いよいよですか。水原や中村に手柄を取られっぱなしは性に合いませんからな」
今まで駿河方面で守備していた河野大尉の歩兵中隊だったが河野大尉の直訴で水原大尉の歩兵中隊は駿河方面に配備され、代わりに河野大尉の歩兵中隊が掛川城で待機していた。
「準備出来次第出撃だ!!」
『オオォォォ!!』
そして舞台は刈谷城に戻る。尾張と三河の国境に近い事もあり、早馬が走ってから翌日の昼には織田軍が刈谷城を包囲していた。
「掛かれェ!!」
『オオォォォ!!』
織田軍は一斉に大手門に取り付こうとした。しかし、大手門には彼等がいた。
「撃ェ!!」
冠門を通った雑兵達が一斉にドライゼ銃の餌食になる。
「慌てるな!! 種子島の装填まで時間が――」
侍大将の木下藤吉郎は配下の川並衆にそう言った瞬間、ドライゼ銃が再び火を噴き出した。装填時間は僅か数秒である。
「そ、そんな馬鹿な――」
「藤吉郎ォ!!」
木下藤吉郎――後に羽柴秀吉、豊臣秀吉となる男はドライゼ銃の銃弾を左目貫通の傷を受けて25歳という生涯で幕を閉じたのである。そして藤吉郎の討死を目撃した蜂須賀正勝(通称小六)も全身に銃弾を浴びて討死するのであった。
「申し上げます!!」
「大手門は打ち破ったか?」
伝令に信長は問うが伝令は違う言葉を伝えた。
「大手門に攻めた者の被害甚大!! 侍大将木下藤吉郎殿討死!!」
「何じゃと!? サルが討死したというのか!!」
「は、既に二百名近くが討死しています!!」
まだ攻めて10分も経っていない出来事であった。
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