第一話
友人とのlineで盛り上がって執筆してしまった……。
昭和十六年十二月八日から始まった大東亜戦争は末期の昭和二十年になっていた。前年、大本営はフィリピンを死守すべく捷一号作戦を発動したが、逆にレイテ沖海戦で連合艦隊が壊滅する大敗を喫し、日本は海上作戦能力を事実上喪失した。
その結果をうけ、大本営は本格的に本土防衛計画に迫られることになった。連合国軍の本土上陸侵攻を遅延させ、その間に本土の作戦準備態勢を確立するための『帝國陸海軍作戦計画大網』を1945年一月二十日に定め、陸上防衛戦への準備が進められていくことになる。この作戦計画は、「前縁地帯」つまり千島列島、小笠原諸島、南西諸島の沖縄本島以南、台湾などの地域を「外郭」とし、連合国軍が侵攻してきた場合、出来る限り抗戦して敵の出血を図りつつ、長駆侵攻してくる敵を日本本土深くまで誘い込んだ上で撃退するという海軍の漸減迎撃戦略が採用されたのだ。
そして1945年四月八日、大本営は、連合軍上陸の際には各方面軍が独立して最期まで戦闘にあたることと、『決号作戦準備要綱』を示達し、一連の防衛計画を正式な作戦名「決号作戦」とした。
なお、この時に戦艦大和を旗艦とする第二艦隊は沖縄への特攻作戦である菊水作戦を敢行、大和以下軽巡矢矧、駆逐艦浜風等の艦艇が坊の岬沖にて撃沈されていた。
創設された第一総軍は迎撃準備に着手する中、静岡県榛原郡菅山村にある相良油田に着目した。
この相良油田は世界的にも珍しい油田であり、精製せずに自動車が動くほどの油田だった。僅か千キロリットルにも満たない産出であるがほぼ精製せずに使えるのは使えるのである。
万が一、此処を上陸した敵に奪われては元も子もない。そこで第十二方面軍と第十三方面軍から兵員を割いて相良油田守備隊を編成する事にした。
しかし、この守備隊の装備はかなりの御粗末であった。所謂根こそぎ動員であり、二月二八日に下令された第一次兵備の部隊であったのだ。
支給された兵士の小銃も九九式短小銃や三八式歩兵銃ではなく、軍の倉庫で埃を被って眠っており幕末で活躍したスナイドル銃やエンフィールド銃、ドライゼ銃やシャスポー銃であった。だが武器があるだけでマシではある。何せ第三次兵備には単発式の簡易小銃が支給されるのだからこの部隊は比較的良かったのだ。
なおこの時、集められた兵士が一番所有していたのはドライゼ銃だった。
部隊は歩兵三個中隊で一個大隊を編成、砲兵三個中隊(砲六門で一個中隊)で一個大隊を編成していた。
砲兵一個中隊六門を揃えたと思うであろう。しかし、砲十八門のうち十二門は幕末で活躍し倉庫で埃を被っていた四斤山砲である。残り六門はお情け程度の三八式野砲だった。
ただ、戦車は三式中戦車七両、九七式中戦車六両、八九式中戦車四両、九五式軽戦車四両で一個戦車連隊を編成していた。また、その他に自動貨車等が多数配備されている。
これらの部隊が相良油田に勢揃いしたのは六月の下旬頃だった。
「こんな装備で油田を守れとはな……」
守備隊隊長に就任した葛城将和少佐はそうぼやいた。元々葛城は沖縄に配属されていたが第一総軍創設で内地に移動しての相良油田守備隊隊長就任だった。
(まぁ沖縄が戦場になったから何とも言えんがな……)
「隊長殿!!」
「ん? どうした学生?」
走ってくる学生こと加藤少尉に視線を向ける。学生というのはあだ名であり加藤少尉は学徒出陣で召集された学生だったからだ。
「敵機が此方に向かって来てるとの事です!!」
「偵察かな? まぁいい、全員を防空壕に避難させろ」
「既にやっています」
「よし、なら俺達も避難しよう」
避難途中には空襲警報も鳴り響き、葛城達は空襲警報が鳴る中で防空壕に避難した。しかし、一向に爆音が鳴り響いて来ない。
「……どういう事だ?」
「飛行経路を変えたんでしょうか?」
「さぁな」
警報が鳴ってから三十分、一向に敵機は来ないので誤報だと判断した。しかし、事態は急変する。
「何? 無線が故障だと?」
「いえ、無線は正常に動いているんですが繋がらないんです」
「敵の妨害か?」
「それは何とも……」
「……嫌な予感がするな」
「隊長殿!!」
「どうした?」
「付近に偵察に出した者からの報告なんですが……」
「何だ?」
「……昔の農民や農家があるばかりで他には何もないとの事です」
「……はい?」
守備隊司令部は一旦時が止まるのであった。それはさておき、日本は史実通り八月十五日に無条件降伏をする。
しかし、戦後の混乱期で具体的な事は分からないが相良油田守備隊の事が記入されている。
『相良油田守備隊は六月某日に跡形も無く無くなっていた』のだ。最初は空襲で犠牲になったと思われた。その日付には相良油田付近に敵機が飛来したのは確認されている。しかし、空襲でも生き残りはいるだろうし建物自体が無くなるはずはないのだ。
戦後、あらゆる者達が相良油田付近を調査した、GHQもそうだ。だが、守備隊に関する手懸かりは何一つ見つかっていないのだ。
しかもだ。上記に敵機が飛来したとあるが、その敵機は変則的な動きをしていたとその敵機を見た住人はそう証言する。一部の者はUFOが守備隊を消滅させたのではと言うが真相は定かではない。
この事は海軍の畝傍亡失に続く日本軍の謎になっている。
「……つまり、ここは昭和の日本ではなく戦国時代の日本で駿河国だと?」
「付近の住人の話ではそうですね」
(何なんだこれは? 嘘だと言ってくれよ……)
加藤少尉の報告に三宅は溜め息を吐いた。
「隊長、我々はどうなるんですか?」
「……ここ一週間過ごしたが帰れると思うか?」
「……まず無理だと思いますな」
三宅の問いに戦車隊隊長の近藤大尉はそう告げた。
「ではどうなるんですか?」
「我々には三つの選択肢がある。一つ、帰れるまでこの地にいる。二つ、全員自決して靖国に行く。三つ、天下を取る」
「……天下の理由は何ですか?」
「あの昭和の日本にさせないためだ」
「……なら我々は隊長の元にいた方が良いですな」
「……決まりだな。我々は天下を取る。手始めに駿河国の国取りだ」
三宅の言葉に近藤大尉はそうニヤリと笑った。そして彼等は往く。
「我々は最早ただの日本軍ではない!! 諸君らには家族、友、妻がいた。その人達をあの歴史に歩ませないためにも、此処で我々が立ち上がらねばならないのだ!!」
『ウオォォォォォーーーッ!!』
「我々は八百万の神々に選ばれたのだ!! あの歴史を繰り返すわけにはいかないのだ!! 諸君、我々は未来の日本のために戦わなければならないのだ!!」
『ウオォォォォォーーーッ!!』
「では往こう。全ては諸君らの働きにかかっている!! 海軍の言葉を借りるならまさにこの言葉だ。『皇国の興廃此の一戦に在り、各員一層奮励努力せよ』である!!」
そして彼等は天下統一を目指す。最初の目標は今川館だったが、直ぐに陥落した。
「直ぐに駿河国を統一する」
「国人達は領土安堵で動いています」
桶狭間の戦い以後の今川はあっという間に駆逐されたのであった。そして領土安堵のために一人の女領主が現れる。
「井伊直虎にございます」
「(この人が……)綺麗だ」
「!?」
「隊長殿、声が出てます」
始まる国の統治。
「小銃の生産はドライゼ銃が見込みありか……」
「雷管はやっていますが時間が……」
「仕方ない。こんな時に学生がいて助かる」
そして三河、尾張への侵攻。
「奴等は鉄砲を大量に揃えています!!」
「是非も無し!!」
関白近衛公との謁見。
「御主は何を求める?」
「平和と未来也」
彼等は何を成すかはまだの事である。
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