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Lost:Game  作者: shun
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第五話 2ndゲーム



「60分経過しました。以上でFirstゲームを終了いたします」

無機質な声がゲーム終了を告げた。小鳥遊は目の前のシャッターが開くと、無我夢中でエリアDへ走った。


「東條さん!居たら返事してくれ!」

小鳥遊は必死に東條を探した。だが返事は全く返って来なかった。間違い無く東條は鬼に殺されたのだ。


せめて死体だけでもと思い、東條の死体を探したが、全ての死体が原型をとどめとおらずどれが東條なのかすら分からなかった。


「……ちくしょおぉぉぉぉぉぉ!!」

小鳥遊の悲痛な叫びがエリアに響いた。











初めの広場に戻った小鳥遊は周りの参加者の数を確認した。数は20人も居なかった。この1時間で30人以上が殺されたという現実を受け入れる事が出来ない。


隣を見ると音無が大粒の涙を流しながら泣いていた。小鳥遊は音無を静かに抱きしめる。だがどう声をかければよいのか分からなかった。


「……ちくしょお……!」

小鳥遊は何も出来ない自分の不甲斐無さに腹が立ち、奥歯を噛み締めた。


するとスピーカーから放送が入る。

「皆様、Firstゲームお疲れ様でした。現在の生き残った参加者の数は15人となっております。」


「もう嫌!こんな苦しい思いしたくない!今すぐこのゲームから解放してよ!」

若い女性がロストに訴えかける。たがロストは異常なほど冷静に返した。


「そんなに続けるのが嫌ならお持ちの拳銃を使えばいかがです?今すぐ楽になれますよ」


「……!」

女性はその場に泣き崩れた。誰もこれ以上何も言う事が出来なかった。


ロストは気にせずに続ける。

「生き残った方々は非常に素晴らしい強運の持ち主です。ではその強運……本物かどうか確かめさせていただきます」


すると前方のステージの幕が開き、大きなスクリーンが現れた。そしてカジノのルーレットのような物が映し出される。


「2ndゲームは運試しです。今から皆様にはこのルーレットに出た身体の一部分を我々に提出していただきます」


ロストの説明したゲーム内容はこうだ。


2ndゲーム・《絶望の運試し》


・ストップを言い、出た目に書いてある自分の身体の一部分を摘出される。


・スタートからストップまでは最大10秒まで。それを超えると無条件で敗北、殺される。


・絶対にどこかは摘出される。


・麻酔は基本的には無しだが、内臓などは局部麻酔をする。




「身体の一部を摘出する……だと……?」

しかもそれが絶対だなんて……、無傷はあり得ないって事かよ…⁉


「運が良ければ奪われる物も軽いですが、運が悪ければ命に関わるような箇所が奪われる事もあります。まぁでも所詮はたかが運試しですから、気楽にして下さい」


誰もが言葉を失っていた。こんな異常な運試しを気楽にやれるわけがない。


「それでは参加者を指名します。芦屋勇太さん、前に出てきて下さい。」


芦屋と呼ばれた男が前に出る。だかその目にはもう絶望しか映っていなかった。


スクリーンのルーレットが回り始め、左下の10秒のカウントが動いた。

だが芦屋はまだストップを言わない。否、言えないのだ。死の恐怖で足がすくみ、声を出す事が出来ない。残り5秒。


「芦屋さん早くしろ!このままじゃ確実に殺されるぞ!」

小鳥遊が叫んだ。それで我に返った芦屋は声を振り絞って叫ぶ。


「す……ストップだ!」


ルーレットが止まる。そして止まった目には左腕と書いてあった。


芦屋はガクガクと震えている。

「そんな……、ウソだろ……?」


「芦屋勇太さんの摘出部位は左腕に決定しました。作業を開始します。」


すると左右の扉からさっきの鬼によく似た人型の物が出てきた。そしてそいつらは芦屋の腕を掴み、どこかへ連れて行こうとする。


「嫌だぁぁぁぁぁ!離せ!離せぇぇぇ!」

必死に抵抗する芦屋だが力では勝てず、引きずられながら奥の扉へと連れて行かれた。



しばらくして、スクリーンの映像が切り替わった。そこには手術台に大の字で拘束された芦屋の姿があった。


鬼の手にはノコギリが握られている。そして鬼はノコギリを芦屋の腕に当てた。


「嫌だ……やめてくれ……!」

芦屋は涙ながらに訴える。だが鬼は無情にもノコギリを動かした。


瞬間、鮮血が画面を真っ赤に染めた。

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

鬼は芦屋の叫び声なんて気にせずノコギリを動かす。ブチブチゴリゴリと刃が肉を引き裂き、骨を削る。そしてボトリと腕が落ちた。


そこで画面はルーレットに戻った。


周りを見ると泣いてる人や、隅で吐いてる人もいた。小鳥遊と音無も例外では無く、ひどい吐き気がしていた。


「次の参加者を指名します。岡崎美佐江さん、前に出てきて下さい。」


そう言われ出てきたのは40代ぐらいの女性だった。わめく事も無く、うつむいている。


そしてカウントダウンと共にルーレットが開始される。だが岡崎もストップを言う気配が無かった。


「おい!早くストップしないとーー」

小鳥遊は気付いた。もしかしたら……岡崎は喋らないのでは無く、喋れないのだとしたらーー?


だがそれに気付いた時には手遅れだった。

10秒が経過してしまっていた。

「時間オーバーです。処刑を開始します。」


そう告げられて岡崎は目を見開く。岡崎は一体の鬼に羽交い締めにされ、そしてもう一体の鬼にチェーンソーで首を切り飛ばされた。


切られた断面から噴水のように血が吹き出し、辺りを真っ赤に染める。鬼は首と身体を持って、奥の扉へと消えて行った。


「狂ってる……」

本当に《Lost:Game》は人をただのゲームのコマとしか見ていない。まるでそれが当たり前かのように、なぶられ、殺される。


すそをギュッと握られる。横を見ると音無がガタガタと震えながら小鳥遊のすそを握っていた。


小鳥遊は思う。このゲームから脱出するには最終的には音無も蹴落とさなければならない。だが一度護ると決めた音無を蹴落とすなんて出来ない。

最早小鳥遊は自分がどうすればいいのか分からなかった。死のうとも思った自分か護ると決めた赤の他人か。どちらを優先すべきなのかと。


すると絶望はなんの前触れも無く、突然訪れた。

「次の参加者を指名します。音無 奏さん、前に出てきて下さい」





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