第十三話 5thゲーム
最近色々あって全然書けませんでした。
終わりまであと少しなので、そこまではしっかり書こうと思います。
「ここ……は……?」
小鳥遊はゆっくりと目を開ける。
そこは知らない家の玄関だった。今時の洋風の造りで、かなり広い。
その時小鳥遊はある事に気づいた。さっきまで……いや、4thゲームが終わった時点では隣に居たハズの音無が居ないのだ。
小鳥遊は靴を履いたまま家の中へと進む。
「音無さん!どこだ!居たら返事をしてくれ!」
必死に叫ぶが返事は全く無かった。
小鳥遊が不安になった瞬間、家の中を無機質な声が響き渡った。ロストだ。
「皆様4thゲームお疲れ様でした。現在の生き残った参加者の数は5人となっております」
ーー5人……。
ついに生き残りもたった5人になってしまった。だが、もしかしたら霧島の行為が無かったらもう少し生き残れたかもしれない。
そう思うと悔しくなり、小鳥遊は奥歯を噛み締めた。
ロストは続ける。
「それではこのまま5thゲームを開始したいと思います。今、皆様は1人1人がとある住宅の中にいらっしゃいます。そこで今から皆様にはかくれんぼをしていただきます」
5thゲーム・《孤独なかくれんぼ》
・隠れる猶予は5分。
・制限時間は30分。
・家の中ならどこに隠れても構わない。
・隠れる場所は自由に変更可能。
・鬼である少女に見つかったら失格。その場で処刑が執行される。
「最後にアドバイスですが、鬼はとても耳や目がいいので気を付けて下さい」
小鳥遊は深呼吸をする。音無が気がかりだがこのゲームでは手助けが出来ない。だが逆を言えば霧島の策略にハメられる心配も無い。
「まずは自分が生き残る事を考えなきゃな…」
小鳥遊は覚悟を決めた。
「それでは5thゲーム・《孤独なかくれんぼ》を開始いたします」
小鳥遊は急いで隠れる場所を探した。隠れる猶予は5分しかない。急いで隠れないと鬼に見つかってしまう。
とりあえず小鳥遊は二階のクローゼットの中に隠れた。そして5分がたった頃、一階からゴトンという音が聞こえてきた。
鬼だ。
そう確信した小鳥遊はクローゼットの中で声を殺した。依然下からは廊下を歩く音やドアを開ける音などが聞こえてくる。
しかし人間には好奇心というものがある。小鳥遊も例外では無かった。不覚にも鬼を見ておきたいという考えが頭をよぎったのだ。
(ダメだダメだ……!今出て行っては鬼に見つかってしまう……!!)
そう自分に言い聞かせた小鳥遊だったが、溢れ出てくる好奇心には勝てなかった。
小鳥遊は気づかれないようにゆっくりとクローゼットを開けて出る。そしてそのまま音を立てないように階段へと向かった。
階段は金折れ階段になっていて、少し階段を下ると下の階を確認する事が出来た。
小鳥遊は音を極力立てないように慎重に階段を降りた。そして下の階の様子が確認出来る所まで来ると、息を殺して下の様子を見た。
すると階段の直ぐ近くに位置するドアが開いた。恐らくリビングだろう。小鳥遊は気づかれないように身を潜めた。
その時リビングから小学校低学年くらいの華奢な女の子が出てきた。黒い髪はくくられ、ツインテールになっている。
だが小鳥遊が驚愕したのはそこでは無かった。なんとその女の子の手には包丁が握られていたのだ。
小鳥遊は血の気が引くのを感じた。
ーー見つかったら、殺される。
そう直感した小鳥遊の身体はほぼ無意識に階段を登っていた。
そしてそのままクローゼットの前まで行くと、気づかれないように慎重にクローゼットを開け、静かに中に入った。
(ふぅ……、危なかった)
安心し、小鳥遊が上体を動かした時だった。
思っていたよりすぐそこにあったクローゼットの内壁に頭をぶつけてしまったのだ。
緊張が解け、そこまで頭が回らなかったのだろう。
その時だった。
「見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた」
抑揚の無い女の子の声とダダダダダと階段を駆け上がる音が聞こえてきた。
ーーーヤバイーー!!!
思わず小鳥遊は自分の口を塞ぐ。汗が滝のように流れ、心臓は張り裂けそうなほど鼓動を打っている。
二階に着いた女の子は小鳥遊の部屋とは違う隣の部屋から探索を始めた。
「いない。いない。いない。どこ?どこ?どこどこどこどこどこどこどこどこどこ?」
隣からはタンスやクローゼットを開ける音が聞こえてくる。そしてその音が止んだかと思うと、すごい勢いで小鳥遊が隠れている部屋のドアが開いた。
恐怖でまともな思考が出来ない。もはや心臓の鼓動や鼻息すらうるさいと感じた。
女の子はベッドの布団をめくる。
「ちがう」
タンスを開ける。
「ちがう」
机の下を見る。
「ちがう」
ベッドの下を見る。
「ちがう」
「どこ?どこ?どこ?どこどこどこ?」
女の子の足音が徐々に小鳥遊へと近づいてくる。確実に。着実に。
そしてついにクローゼットが開けられた。
だがそこに小鳥遊は居なかった。否、確認出来なかった。
「いない。いない。いない。どこ?どこ?どこ?」
女の子はクローゼットを閉めるともう一つ隣の部屋へと向かっていった。
小鳥遊はゆっくりと最初の位置に戻り、壁にもたれた。ここのクローゼットはかなり広く、開けたドアの死角になる所に人1人が隠れられるスペースがあったのだ。小鳥遊はそこに隠れていたワケである。
「……あ…、ぶなかったぁ………」
極度の緊張の糸が途切れ、安堵したせいか小鳥遊はそのまま気を失ってしまった。
霧島は銃を片手に身を潜めていた。
なんと霧島は鬼である少女を殺そうとしていたのである。
(殺しちまえば見つかるもクソも無えだろ!)
そして霧島は鬼の少女を確認した。
銃を構え、一瞬瞬きをした瞬間だった。
視界から女の子が消えたのだ。
まるで煙のように。初めからそこに存在しなかったかのように。
「なっ!?どこにーー」
その時だった。
背後から激しい痛みに襲われた。
恐る恐る後ろを見てみると少女の包丁が霧島の腰を刺していた。
少女は満面の笑みで。
「見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた」
「うっ、うあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
霧島は全力で階段を駆け上がった。後ろを見ると少女は満面の笑みで追いかけてきている。その笑顔に絶望的な恐怖を覚えた。
「死ねぇぇぇ!」
霧島は少女に向けて弾丸を数発放った。だが少女は全弾直撃したにも関わらず、笑顔で金切り声を上げながら追いかけてくる。
そしてついに霧島は捕まり、少女に馬乗りにされる。必死にもがく霧島だったが、少女は微動だにしなかった。明らかに少女の体重では無かった。
すると少女は霧島の背中から抜いた包丁を高く掲げると、こう言った。
「霧島 恭さん、見ーつけた。」
その声は最早少女の声では無かった。