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運命が変わるまであらがい続けろ  作者: scan
能力競技大会
7/7

招待状

 ポストから封筒らしきものを取り出し部屋に上がる。

 蒼空は一人で暮らしている。親は一度もこの家には来たことが無く、蒼空は親に会いたくも顔を会わせる事も嫌っている。

 何故嫌がっているかはまたの機会にでも話をしよう。

 鞄を壁際に投げ封筒を片手にソファーに座る。

「何だこれは?今まで学校の成績以外で封筒なんて届いた事無いぞ」

 学校の成績は、生徒には学校で紙切れに自分の成績を書かれて手渡しで渡し、親には封筒に入れて郵送で送られる。

 このシステムは最近になってからは珍しい。

 パソコンの普及率が百パーセントを越えた今そんなお金と時間が掛かる方法を取っている学校は多くない。寧ろ少ないほうだ。

 今やほとんどの学校が電子メールで各家のパソコンに送るのが一般的になっている。

「中身を見れば分かるか」

 封筒の口を剥がそうとしたが中々剥がれず表面だけが剥がれてしまい、薄い紙の残りで封筒の口がまだ塞がれていた。

 蒼空はこういう細かい事はあまり得意ではなく、逆に不得意なほうになる。

「おれやっぱり不器用だな」

 その後、何度も挑戦したが結果的に開けることが出来ず、諦めてしまった。

 ソファーの上で横になるとテーブルの上にあるものが目に入った。

「いい事思いついた」

 テーブルの上にある物を手に取る。

 手に取ったものは広げればX字の形になり、閉じればI字のようになり、刃のようなものが二つついている。それは閉じて開いたりして使う物のようだ。

 その刃のついた物を封筒の口に近づけ、広げてX字の形にしてI字のように閉じる。それを数回繰り返していく。

 閉じたり開いたりしていくと封筒の口は二つに切断される。

「ハサミって便利だな」

 封筒が開かないならハサミを使うという世の中では常識にもあることを思いついた蒼空は自分のことを天才だと思っていた。

 何も知らない一般人(知り合いでも)なら絶対且つ確実に「こいつ馬鹿だな」と呟きたくなるだろう。 それでも、蒼空はそんなことも知らない。

 封筒から少し厚い紙とノートの切れ端のようなものを取り出した。

 少し厚い紙は葉書と同じぐらいの厚さはあり、二つ折りにされている。ノートの切れ端は二つ折りにされ英語のような文字でメッセージが書かれているのが透けて見えた。


==================================================

The fate which began to

move cannot be stopped.


However it may struggle,

it cannot escape from fate.

==================================================


と書かれていた。

「って読めるかーーーー」

 当然のことだ。

 蒼空は真面目に勉強して学年順位は上位に入っているが、どう頑張っても英語だけは出来ないのだ。だから、英語で書かれたメッセージは読むことが出来ない。

 辞書で調べようとしたが、気分が乗らなかったので辞書を持ってきたが辞めた。

 また、ソファーに横になるとメッセージが書かれた紙を見ていた。

(この字は見覚えがあるよーな)

 メッセージは手書きでしかも綺麗な字で書かれている。

 それから、少しの間紙を眺めていた。

 眺めていても英語で書かれたメッセージを解読することは出来ない。

 ただ時間ばかりが過ぎていく。

「そういえばもう一つ入ってたよーな・・・・・・・・・・あった、あった。これこれ。」

 葉書と同じぐらいの厚さを持つ紙をテーブルの下から手に取る。

 それもメッセージ同様に二つ折りにされている。

 二つ折りにされた厚紙を開いていく。

 開いた厚紙には大きく『招待状』と書かれている。

=========================================



        招待状



----------------------------------------- 

      期日 7月06日

時間 17時00分

      場所 グランホテル三階大ホール


      参加される事をお祈りします。

               

               国際能力開発研究所

=========================================


 厚紙に書かれていた事はパーティーへの招待状だった。

 ただ、普通のパーティーなら見て驚くことも無く、況してや招待状を送ってくることなどあまり無い。現在は日本国籍を持つ者ならば誰しもがIDを持っている(他国でも同様)ため、招待状が無くても入り口でIDを確認しなければならない。 

 だが、今回は招待状を送ってきた。

 それも、国際能力開発研究所から。

 国際能力開発研究所は能力の発現方法や能力の種類、能力の遺伝、能力が人体へ及ぼす害など幅広く且つ深く調べている。世界でも有能な科学者達が集まっている。日本が誇る分野の一つでもある。

 普通の一般人なら国がらみのパーティーに呼ばれる事は無い。

 それが一般人ならばの話しだ。

 蒼空は違った。

「なんだで今更こんなもん送ってくるんだ」

 過去の記憶が頭の中を巡る。

 楽しい記憶も悲しい記憶も嫌な記憶も全てが回る。

 突然立ち上がると招待状をソファーに投げ捨てて自分の部屋に向かった。

 その日は部屋から出ることは無かった。


 国際能力開発研究所からパーティーの招待状が届いてから一周間が経っていた。

 あの日から蒼空は学校に来ていない。それどころか、百合にも楓太にも智久にも連絡が来ていない。こっちから電話を掛けても出ることはなく折り返しかけてくることもない。

「今日も来てないのか」

「電話しても出ないし・・・・・もう一週間たつのよ」

「何か事件に巻き込まれてなければいいが」

 三人は蒼空が学校にも来ないで連絡もしない状況で心配していた

 空席になった場所を見る。

 学校では体調が優れないからしばらく休むという連絡があったらしい。クラスでも国際能力開発専門学校の侵入者事件で自分の無能さに気づいて逃げたという噂が流れ、それが休んだ理由として確定されていた。

 でも、蒼空はあんな事件で逃げるようなクズではない。学校にだって無欠席で来て、筆記試験は常にトップ3には入るほどの努力家でもあった。そのことを知っている三人は余計に心配になる。

(変な事に巻き込まれるなよ)

 その日もまた蒼空が姿を見せることは無かった。

 放課後、百合と楓太(能力競技大会の練習のため)と分かれた智久は一人で夕日の沈む方角へ向かっていた。

 本屋の横から薄暗い路地に入る。そこから少し進むとマンションにたどり着いた。

 入り口からID認証を行いエレベーターに乗り込み上へ向かう。扉が開くとすぐに部屋の前でカードを翳す。認証が終わると扉のロック解除される

 扉が開き中に踏み込む。

「蒼空いるか?」

 薄暗い空間に呼びかける。

 今いる場所は蒼空の自宅になる。蒼空が学校に来ないことを心配してやって来た。

 何故、智久が蒼空の自宅のカードを持っているかというとよく泊まりに来るからではなく、何か遭った時に家にある物を引き取ってもらう為でもある。

 呼びかけることはなく物音ひとつせず人がいる気配がしない。

 奥へ足を進める。

 部屋の中は生活している雰囲気がなくゴミさえもない。

 リビングに差し掛かるとテーブルの上に紙が置いてあるのがわかった。

「これは・・・・・」

 手に取り中身を確認する。

 英語で書かれているメッセージに目を通す。

 智久は蒼空とは違い英語、イタリア語、フランス語など何カ国かの言葉を理解し、話すことができるため書かれている内容を理解できた。

 メッセージの書かれている紙を置き、近くにある『招待状』と書かれた厚紙の紙を手に取る。

「・・・・・・・」

 無言のまま、招待状を持ったまま隣の部屋の扉に手を掛ける。

 今、智久が何を考えているか心理学者でさえ分からない。

「誰だ?」

 後ろから殺気の篭った声がする。

 でも、その声は聞いたことのある友の声でもある。

 返事もせず後ろを振り返る。後ろには銃を構え銃口をこちらに向けている蒼空の姿があった。

「智久か。ここで何をしている?」

「それを聞くのはこっちだ。学校にも来ないで何をしている?」

「少し用事が出来てな」

 手に持つ袋をテーブルの上に置きソファに座る。

「用ってのは話してもらえないのか?」

「今はむりだ・・・・・悪いな」

 智久は拳を握り、テーブルの上にある国際能力開発研究所のパーティーへの招待状をみる。そしてまた、蒼空の方を見る。

 確信に迫るため尋ねる。

「招待状絡みか?」

 えっ!という顔をして智久を見る。

「見たのか?」

「あぁ。テーブルに置いてあれば嫌でも目に入るぞ」

「そうか!やっぱり隠し通すの俺に向いてないな」 

 頭をぐちゃぐちゃに掻き回して吹っ切れたように話し始める。蒼空が今まで調べてきたものに目を通す。内容は驚くものばかりで現実味が無かった。そして、これから行うことも。

「分かった」

「なら、協力してくれるな」

「いいだろう。ただし、学校には来いよ」

「OK」

 



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