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運命が変わるまであらがい続けろ  作者: scan
動き出した闇
3/7

無能力の実力

 翌日、時間ぎりぎりに起きてしまった。

 昨日の事で疲れ深い眠るについて目覚まし時計の音に気づかなかったのだ。意味の分からない三人組みに襲われたのだ。怪我をした部分は知り合いに治癒能力を使う奴がいて、そいつに治してもらった。と言っても痛みはまだ少し残っている。治癒能力を使える者は一握りだと言われている。

 時間がないため準備を済ませてすぐに家を出た。朝食を作っていると遅刻してしまうのだ。遅刻ぐらいならいいと思うがそうはいう訳にはいかない。俺は能力が使えない。そのため、能力の単位がないに等しい。そのため、遅刻、欠席はあまりしたくないのだ。ちなみに能力についての学力は誰にも負けない。能力を補うためでもあるが襲われた時の対処法などが必要なのだ。

 走る。とにかく走る。時間がない。運がないのがこの時間はバスがない。待っていても20分後にしか来ない。学園までは、10分ぐらいにで着く。だから走る。この時、テレポートの能力が欲しいと思った。

全力で走ると5分ぐらいで学校に着いた。そのままの勢いで教室に飛び込んだ。その時、みんなの視線を浴びたのは言うまでもないだろう。

「五十嵐遅いぞ」

「すいません。寝坊しました」

「明日からは気をつけろ」

「はい」

結局、遅刻してしまった。全力疾走が無駄になった。

「蒼空ドンマイ」

「あぁ少しぐらい許してもいいと思うよな」

「仕方ないな。それがこの学校の規則だから」

 遅刻したとは言え朝のHL(ホームルーム)はまだ始まったばっかりである。

「五十嵐か秋雨どちらか城田の事知らないか?」

「いや知りません」

「僕もです」

智久が来ていない。珍しいなあいつはよっぽどの事がない限り学校には来る。って事は何かトラブルでもあったのか?まさか昨日の事に関係してるのか?蒼空が来ていないことに疑問を抱いていた。

「お前らに忠告しとく事がある。昨日、銃による発砲事件と能力者同士の争いがあったみたいだ。二つの事には関係性はないが十分に気をつけろ。とくに発砲事件は誰も目撃者が居ないからいつ起こるかわからない。街中で無闇に能力を使ったりするんじゃないぞ」

 銃による発砲事件と聞いたとき蒼空はギクッとした。まさか昨日の事が問題になっているとは思わなかったからだ。

「それと言い忘れてたけど今日は能力を使ったトーナメントみたいなのをやるから覚悟しとけ。これは、能力に対する防衛術を身に着けてもらうからな。じゃ終了」

 坂本は話をするだけして教室を出て行った。

「蒼空ドンマイ。不幸が続くな」

「なんでこんなことやるんだ?力のない奴の事考えろよ」

「それもそうだけど、蒼空ならいけるだろ?一応武器も持ってるし」

「その事なんだけど銃が使えないんだ」

「え~なんで?」

楓太は驚いた。蒼空の武器の要になるはずの銃が使えないことに。銃がないとなると大分きつくなる。

「昨日の発砲事件・・・・俺なんだ」

「はぁ~~。何が遭った?」

「変な奴らに絡まれてな仕方なく」

「それでか。確かに怪しまれるな」

「そうだよな」

落ち込む。大事な武器が使えないから。

「でも、大丈夫だろ。クラスの半分ぐらいはお前が持ってるのぐらい知ってるし、学園だって認めてるんだから」

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫だって。それよりも智久が来てないのはおかしいな?」

「確かに。何かあったのか?」

「まぁ気にしても仕方ないからグラウンドに行くか?」

「そうだな」

 クラスのほとんど居なく俺達と2、3人いる程度だった。急いで行ってみると授業はすでに始まっていた。

「お前ら遅いぞ!次は五十嵐だから準備しろ」

クラスの半分程度は終わっていて各自、自主練みたいのをやっていた。

「蒼空がんばれ。本気でやれよ」

「相手次第かな・・・・と言っても無能力じゃ高が知れてるけどね」

「嘘吐くな。力隠してても戦えるくせに」

「何のことだよ?」

「五十嵐早く来い」

楓太と長く話して先生に呼ばれてしまった。

 走ってグラウンドの真ん中に行った。先生は「待ちくたびれた」と言わんばかりに重たい腰を上げて、説明を始める。

「能力は使っていいが人は殺すなよ。怪我しても保健の佐藤先生がいるから思いっきりやれ」

 グラウンドの隅にある木の下に手を振っている人が居た。佐藤先生は治癒能力を使う事の出来る先生。治癒系の能力は人数が比較的少ない。

「五十嵐。お前、能力ないよな?大丈夫か?」

「一応何とかなると思います。こういうのは馴れてますから」

「そうか。でも、気をつけろよ」

「はい」

 白線で囲まれてる中に入る。白線で囲まれている面積は50、50の2500平方メートルぐらいはある。なかなか広い。

「君が相手で良かったよ。思いっきり楽しめそうだ」

「・・・・だから何だ?」

「余裕だね。まぁそうして居られるのも今のうちだ」

相手は森の仲間?みたいなやつだ。加藤とか言う奴だったような。森と居るせいかこいつも上から目線になっている。

「じゃ勝手に始めてくれ。危険と感じたら俺が止めるから」

適当な教師だな。よくそんなんで教師やれてんな。

「じゃ始めようか?いじめになるけど」

加藤の手には水が集まり始める。

「簡単には死なないでね」

手に集めた水を銃のように飛ばしてくる。

左に避け小刀を取り出し距離を縮める。小刀は戦うには近距離戦に有効だ。一気に距離を縮めて、小刀を下から上に振り上げる。しかしギリギリのところで避けられる。

「君って以外に素早いね」

「黙れ!」

「荒々しくて怖いね」

「うるせー」

小刀を逆に持ち走り出す。

「どんなに突っ込んで来ても無駄だよ」

そう言うと加藤は手に水を溜めて行く。その水の塊は次第に大きさを増し5秒経つ間もなく直径1メートルまで膨らんだ。

「これくらい耐えてね」

水の塊を蒼空に飛ばす。塊が当たった蒼空は後ろに飛ばされる。バウンドを繰り返して5メートル後ろで止まる。

「ゲホッゲホッ・・・・・ハァハァ」

「まだ生きてたね」

「当たり前だ・・・・・馬鹿が」

(加藤ってこんなに強いのか?これは出し惜しみなんて出来ないな)

背中に手を回して力強く握る。

「これで終わりにするね」

加藤の周りに無数の水の玉が浮く。それが合図と共に一斉に飛んで行く。

水の玉は蒼空に当たる前に飛び散る。

蒼空の手には拳銃が握られている。それで飛んでくる玉を壊しているのだ。拳銃は一丁ではない両手に持つ二丁で壊していく。

「簡単に死んでたまるか」

攻防一戦を繰り返していく。蒼空の銃の弾がなくなり応戦できなくなくなるか加藤の体力がなくなるかのどちらかひとつ。見ている者は蒼空が負けると予想した。いや見ていなくてもそう思うのが普通だろう。

無能力の者が能力を持つ者に勝てるはずがない。それがこの世界の常識なのだ。

「君、しぶといんだよ。早く負けなよ」

「お前こそ早く倒れろ」

(こいつやっぱり強いな。どうなるのか分からないけどあれをやるか)

周りを見渡すと蒼空と加藤の周りには大きな水溜りが出来ている。

(これなら出来る)

蒼空は一丁で加藤の足を狙って発砲する。もうひとつで水を打ち落とす。そして走り出す。

「突進してきても何も変わらないよ」

加藤は水を棒状に打ち出す。

「これで終わりだ」

(今だ)

ポケットからスタンガンを取り出す。それを棒状の水の中にスタンガンを持った手をつ込む。

「君は馬鹿だね」

「消えろ」

スタンガンのスイッチを入れろ。そのとたん棒状の水と周りにある水に電気が走る。それは目に見えることなく加藤を襲う。

「うぁーがぁーあぁぁぁぁぁーーーーー」

加藤は悲鳴を上げる。断絶の叫びをあげる。そのうち悲鳴は聞こえなくなり地面に倒れた。が、電撃を浴びたのは何も加藤だけではスタンガンを使った蒼空も同じだ。蒼空は悲鳴を上げることもなく地面に倒れる。

「五十嵐何をやってるんだ?」

「す・・・いま・・せ・ん」

そこで意識は途切れる。その後何があったかは分からない。

  


目が覚めるとそこは見慣れた真っ白な天井が広がっていた。

「うっ・・・痛っ」

「おっ!やっと目が覚めたか」

「ここ保健室だよな」

「あぁ」

何故ここが保健室だと分かったかというと今まで何度もここに来たことがあるからなのだ。無能力者にとっては誰もがここに一度は来る。

「蒼空は無茶しすいだぞ。まさかスタンガンを水に突っ込むなんて死ぬ気か?」

「あぁでもしないと勝てなかったからな」

「勝った?あれがか?二人共倒れといて」

「それは言うな。俺らが倒れた後どうなったんだ」

俺らが倒れたいろいろと遭ったらしい。加藤が病院送りになったり、水が校舎に届いていてスタンガンのせいで学校中が停電になったりとやばかったらしい。他にもいろいろと話してくれた。

「今何時だ?」

話に夢中になっていて今が何時なのかが分からない。

「今は12時半ぐらいだぞ」

「・・・・・12時半!!そんなに寝てたのか?」

12時半。それは俺が倒れてから3時間は経っている。たかが3時間と思う者や授業をサボれてラッキーと思う者が居るだろう。だが、俺にとってはその3時間は大事なのだ。ただし、時間ではなくて大事なのは授業の方だ。何故、授業だ?と思うだろう。俺にとっては授業は大事なのだ。特に能力についての授業は、どんな能力がどれだけ存在するかを覚えるための希少な時間なのだ。ちなみにインターネットや図書館では国の許可が下りないと見ることが出来ない。

「それがどうした?」

「能力の授業が?」

「それならノートにまとめたから貸してやるよ」

そう言って鞄からノートを取り出した。

「サンキュー。それと智久来たか?」

「あいつは来てないぞ」

「そうか。・・・・この後の授業は何?」

「今日はもう終わりだぞ」

えっ!

「明日は国際能力専門学校、明後日は国際能力開発研究所の見学だからな」

なんだそれ?聞いてないぞ。

「一週間前に言ってたけど聞いてないのか?」

「さっぱりと」

「話ぐらいは聞けよ。まったく。まぁ兎に角、明日は八時半に学校集合だから」

「分かった。何かいるか?」

「たぶんいらない。・・・・じゃ俺帰るな」

楓太は保健室から出って行った。

「毎年だけど研究所には行きたくないな」

 誰にだってひとつはあるだろう。知られたくない過去、嫌で忘れようと心に封じた過去が。前に進むために、欲望をかなえるために犠牲にしてきた過去や人たちが存在するだろう。

 研究所は周りから見れば功績が高く、有能な科学者の集まりかも知れない。俺にとっては忌々しい所なんだ。

 あれからどのくらい経っただろう。真っ白な天井は淡く夕焼けの色に染まっていた。

「そろそろ帰るか」

 近くにある鞄を手に取り保健室を跡にした。

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