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002  友人達


 称徳高校。

 悠緋の通っている高校だ。一学年六クラス、総生徒数七百名あまり。片田舎の山の麓に居を構えたその高校は、地元に根付いた進学校だ。

 都会のようなお洒落さはないが、自然に溶け込んだ落ち着きがある。

 その、昼休み。

 田舎だから可能な広い中庭に、悠緋はいた。整然と木が植えられていて、芝生が短く刈り揃えられている。木で作られた机とベンチのセットがぽつぽつと置かれている。

「あっつー……」

 悠緋は、三人の友人と一緒にベンチに腰掛けていた。

 周防真人すおうまひと常磐鴇ときわとき氏苑海瀬うじそのかいぜ。この三人が悠緋の特に仲の良いグループだ。昼食はいつもこの四人で食べている。ちなみに先ほどの発現は鴇によるものだ。

「こんな暑いのに外で食べるって、無謀だと思わんの?」

「誰だよ外で食べるって言い出したの」

「……お前じゃん」

 鴇と真人の非難に、悠緋が突っ込む。

 四人は各々の昼食を机の上に置いた。その内訳は弁当とコンビニの食品が半々。悠緋は弁当だった。

「春のうちは丁度良かったけどさ……夏は別の場所に行くべきだよな」

「どこだよ?」

「教室とかあるじゃん」

 真人と鴇のやり取り。

 学校の職員が、中庭に向けてホースの水を放ち、打ち水をしていた。

 四人は全員、一年E組の生徒だ。全員出身中学校は違い、出会ったのは高校入学してからだったが、意気投合し今に至る。

「相変わらず悠緋の弁当は美味そうだな!」

 悠緋の横に座って弁当を眺めていた海瀬の瞳がきらきらと輝いていた。海瀬はかなりの食いしん坊で、持ってきている弁当も普通の二倍くらいはある。

 真人は、背は普通で線が細い。優等生然とした風貌。話しているときは比較的クールだ。

 鴇は中肉中背だが、悠緋よりも筋肉質。部活はバスケ部。四人のうちのみならず、クラスの中でもムードメーカー的存在だ。

 海瀬は、四人の中では一番小柄。だが、一番良く食べる。顔も中性的で、癒し系の存在。

「貰ってもいい?」

「……少しだけな」

 溜息は、了承の合図だ。海瀬は自分の箸で悠緋の弁当の中から豚のしょうが焼きを取り、口にした。

「うまーい!」

「はいはい」

 周りを全く気にせず叫ぶ海瀬を、悠緋は恥ずかしがりながら、真人と鴇はにやにやしながらたしなめた。

「ラブラブだなあ」

「違うって」

「そうだな、悠緋にはほかに好きな人がいるもんな~」

 鴇が茶化す。うるせえ、と悠緋は鬱陶しそうに言った。

「いいよなあ、東條さん可愛いじゃん」

「うるせえ」

「しかも役割分担で二人きりだろ? 役得じゃんか」

「……はったおすぞ?」

「ごめんごめん」

 頬が赤い。悠緋はそれをごまかすように弁当に食らいつく。鴇も自分のパンを食べながら悠緋を見ている。

「そういう、恥ずかしがるところがお前のいいところだよ」

「……気持ち悪いな、鴇」

「校内で一番ツンデレなんじゃないか?」

「ツンデレじゃないし……てかそれ、男に言う言葉か?」

「男に言う言葉じゃなくても、悠緋に言うのはアリだろ」

「お前は一体オレをどうしたいんだよ!」

「愛でたい」

「お前の将来が本気で心配だぞ!?」

「悠緋は優しいなあ、俺のことをそんなに考えてくれるなんて」

「曲解!」

 賑やかな二人とは対照的に、真人と海瀬は黙々と食事を進めていた。真人は行儀がよく、食事中には話はしないようにしている。その考えを他の人に押し付けない辺りが本当の育ちのよさだと、悠緋はつくづく思う。一方の海瀬は、ただ単に弁当を食べるのに夢中で話を聞いていないだけだった。

 悠緋は、彼らのことが大好きだ。称徳高校に入学して一番良かったことは、彼らに出会えたことだろう。

 いや――一番ではないかもしれない。

 一番は、紗桐さんと出会えたことかもしれない――

 そんな気恥ずかしいことを考えてしまい、悠緋は一人赤面した。それをまた鴇に笑いの種にされ、また怒る。

 そんな、平穏な日常。

 変わらず面白い、日々。

 悠緋はそれが大好きだ。



 いただきます言わせるの忘れた……

 あと、噂の東條さんは次話で出てきます。


 第二話でした。

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