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書架の一冊



手に取った本はある神秘家のもので

私の家の古い黒板に

彼であったものが絵を描きだした

柔らかな陽の心地良い熱に包まれ

私は本を開く

栞がはさまっている頁には

書架に置かれるべき数多くの書物の名が

私の名前と共に書かれていた


黒板の絵は荒々しく

それはあらゆるものを壊すための

神聖な力であった

彼は急に手を止め、呼吸を整えると

白いチョークで絵を叩きながら言った


――これが何か分かるか

――それは人間です

答えると

彼は怒りにまかせて

絵を全て消した


私は別の頁を開いた

そこには秋から冬にかけて

世界が失っていく色のことが書かれていた

灰色に覆われた景色のなかで

残虐な一人の女が歩いていると書かれていた


彼が絵を描き始めた

一本の、たった一本のナイフが

いくつの命を奪うことができるか

それが絵のテーマだった


大砲の音がして風が吹き

本の頁がいくつもめくれた

彼であったものは消え

黒板には巨大な爆発の天に昇る煙が描かれていた

陽の下は灰色で静かだが、それは

ただ聞こえていないだけだった


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