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病室

かわいそうなパイプ椅子よ

この小部屋は向かっている

薄暗い壁と破れた真白の紙が純粋に待っている


明日の朝にも同じように

しかし少しの一致もない会話が

もう自分では開けることのない

あの重苦しい扉の向こうから

ささやき声のように聞こえてくるだろう


湿った空気が流れ込む

灰色をした床としなびた手足は

何かあれば気配を感じる

光でも闇でもない

彼方でもない

すぐ側でいつも助けようとしてくれるが

触れられたら一瞬で

こんな体は燃え尽きてしまう

心はどこに行こうとするか

不確かなもの、しかし

真実に最も近いものが

空気の間にひっそりと存在している

吸いこんでも血液まで届かない

血はすぐにでも戻ろうとしているのに


机の上に皿がある

白い皿の上にりんごがある

包丁が側にある

一体誰がこの刃物を突き刺すのか

パイプ椅子を見よ

金属が怯えている

朽ちた人間の肉体にも増して

悲しいくらい震えている


何がそこに座っているのか

それは何も知らない者だ

りんごの過去も未来も

ここに集まっている不可視のものも

おそらく私自身がここで

考えていること、感じていること

それらのどれひとつ知らない者

知ろうとしない者

善でも悪でもない

しかしおそらく私にとっては

限りなく悪である者が

パイプ椅子に座り

包丁でりんごを切り

無言で部屋を出ていった


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