今年初めの出来事は?気付かぬままに異世界交流
久しぶりの投稿です。
よろしくお願いします(*ˊ˘ˋ*)。♪:*°
拙いと思いますが、生暖かい気持ちで見守って下さい。
「ふう、今日も気持ちがいいなぁ」
ナオヤは40代になり、会社の健康診断に引っかかって以来運動を始めた。
今日もいつものように、近くの山でジョギングをし、ゆったりとウォーキングに切り替え歩いている。
腰にはウェストポーチを装備。
母が用意した、一通りの常備薬、ケガや虫刺されの塗り薬、湿布にテーピングなどなど。
ナオヤが準備したのは、休憩中に必要だろうと思う物一色。
スマホ、お楽しみのお茶セット(スポーツ飲料粉末、コーヒーポーション、ティーパックなど)、小腹の嗜みセット(カロ〇ーメイト、飴やグミなど)。
景色を眺めながらの一服は、至高の癒しなのだ。
いつもの山道だが、今日はなんだかいつもと違って見える。
まぁ、新年明けましておめでとうございますという事で、いつもと違って見えるのだろう。
先ほどご来光を眺めながらの1杯は、至福のひとときと言える。
今年は最高な1年になりそうだ。
木々の合間から、薄い霧のようなものが漂っている。
「朝霧にしてはちょっと濃いかな。まあ、朝が早いから仕方ない。すぐ晴れるだろう」
のんびり歩いていると、木立の奥から賑やかな?騒がしい声が聞こえてきた。
「くっそー!マジかよ。こんなところで魔物が出るとか聞いてねーぞ!」
「リーダー!シェリーの出血がヒドいわ!」
「回復薬のストックは、もうないぞ!」
ワイワイ騒ぐその声は、どう聞いても深刻な状況のようだ。一部理解しづらかったが……
立ち止まって様子を伺っていると、木々の狭間から布と革の鎧をまとい、剣や杖を手にしたラノベに出てくる冒険者らしき集団が、どんどんナオヤの方へ近づいて来る。
(おぉ〜!最近流行りのコスプレ撮影か?それとも何かのイベント?しかしスゴいな!めっちゃくちゃリアルじゃないか!)
ナオヤは邪魔にならないよう、慌ててその場を離れようとする。
しかしその集団の中に、苦しげな表情で脚を引き摺る女性が見えた。太ももから下が血に濡れて、赤黒い傷は深そうだ。
(ん?偽物? 特殊メイクにしてはやけにリアルだな?もしかして本物の怪我なのか?)
ナオヤは足を止めて悩み、とりあえず声をかける事にした。
「あのー、すいません。撮影中だったら申し訳ない。あ〜、怪我されてますか?もしよければ、これ使って下さい……」
彼はポーチから、使い慣れた消毒液と塗り薬を取り出し、ついでに首にかけたフェイスタオルも差し出す。
「あの~大丈夫ですか?救急車呼びます?使ったもので申し訳ないけど、これで血を拭って下さい。あと痛み止めの薬です。炎症も抑えてくれるので!アッ!その虫刺されには、このム〇使って下さい!」
突然薬を進めてくる男に、驚きと警戒の目を向ける冒険者たち。リーダーらしき男性が、戸惑いながら声をしぼり応えた。
「あ、ありがとうございます……あの、これは……」
ぎこちない動きで受け取りつつ、ナオヤを見つめる。ケガをしている女性も、キョトンとした顔でナオヤを見ていた。
どうやらそこまで深刻ではないようだ。
「気にしないでください。こんな山奥で撮影されて大変ですね。お疲れ様です。アッ!もしよければ、これもどうぞ!」
ナオヤはさらにポーチから、休憩中に使う癒しのセットを取り出し渡す。
それを戸惑いながらも、受け取る。
さすが役者なだけに、ワイルドで男の色気が半端ない。もちろん他の役者さんも、それぞれに味があり、存在感が一般人とは違う。
「大変なお仕事ですね。これでも飲んで一休みしてください。このティーパックとコーヒーポーション!ちょっと良いやつで、香りがとてもいいんですよ。熱いお湯か水で割って飲めば安らぎますので、休憩中にどうぞ!」
渡した品に指差しながら、ニコニコと人の良さそうな笑顔で、ナオヤは「差し入れ」の中身についてリーダーに話す。
「作品が出来たら、必ず観に行きますね!お疲れ様です!頑張って下さい。応援しています」
そう言い残しナオヤは手を振って、スタスタとウォーキングを再開する。
そんなナオヤの後ろ姿を、冒険者達は呆然と見送っていた。
少し色づき始めた木々を見ながら歩く。
時おり吹く風は心地よく、葉擦れの音に癒されながら、実は恥ずかしさに悶えていた。
「うあぁあ~、やっぱり撮影だった!」
まだ見える位置で我慢するが、本当は走って逃げたい。恥ずかしさに叫びたい。
だが……
「思い出すだけでかっこいい人たちだったなぁ。汗やら息遣いやらスゴいし、目付きなんかギラギラして!限界にまじか、死と隣り合わせって感じで!本当にリアルな演技だったなぁ。役者魂極まれりってヤツか!」
ナオヤは気を取り直し 、鼻歌交じりに歩く。
すると 突然藪の中から、巨大な何かが飛び出してきた。
「ブギャァァァーーー!!」
それは、尋常ではない大きさの猪!
鋭い牙と、異様にギラつく澱んだ瞳。
普通のイノシシではない、何か異様な空気を纏っている。
(や、やばい!クマじゃなくてイノシシだけど、デカいだろ!)
ナオヤは硬直し冷や汗がでる。
その巨大イノシシはナオヤを無視し、背後にある茂みに突進していく。
”ガシャン!”
「ブギャァアアア!!」
どうやら罠にかかり、苦しげな叫びを上げ暴れる巨大イノシシ。
まるで誰かが仕留められたかのように、突然あっけなく動きを止め倒れた。
(あれ?なんだったんだ?罠で倒れたぞ?もしかして撮影の延長線か?)
訳が分からないナオヤは、先ほどの撮影隊の仕掛け?もしや自分は「ちょい役」抜擢で、この巨大イノシシの大きさ比較の対象役かと都合よく解釈する。
「スゴいなぁ、あんな大きなロボット!まるで本物ソックリだ!さすがプロ集団!必ず作品観に行こう!」
彼は撮影隊が潜んでいるであろう茂みと、倒れた巨大イノシシに向かい「頑張って下さい!」と声をかけ、 笑顔で立ち去っていった。
いつもの駐車場所に戻ったナオヤは、愛車の運転席にウンショと座り込む。
「ふう、なんか今日は賑やかで、若さと英気を貰ったなぁ」
フロントガラスから眺める景色は、いつもとまったく同じだけど、気持ちはいつもとまるで違う。なんとなくワクワクした気持ちと、冒険をした後のような心地だった。
車に置いたポータブルスピーカーから、お気に入りのBGMが流す。
そしてエンジンをかけ、バックミラー越しに居るであろう場所を眺めて、いつものように車を走らせた。
家に着くころには、妹家族がきているだろう。
(双子で大学生だから、1人1万かぁ。叔父さんの懐は寂しいぞ)
今日の出来事は、いい話のネタになるだろう。
***********
一方、ナオヤが立ち去った後の山中では……
冒険者たちは、リーダーのガイアスを中心に顔を見合わせ戸惑っていた。
妙に笑顔な男性の後ろ姿を見送っていたら、先ほど苦戦したワイルドボアが茂みから現れ、慌てて助けに行こうと走った。
だが……
「なぁ……あのおっさん、どこ行ったんだ?」
メンバーの中で斥候担当のラキアが、戸惑ったようにガイアスを振り返る。
ボアもなぜか、突然死んで倒れた。
「確か、この辺で消えたよな!?」
消えた辺りの地面をペシペシと叩き、皆に同意を求める。
苦悩するガイアスの手には、ナオヤから貰った”差し入れ”が存在していた。
つまりおっさんは確かにいたという事だ。
「とにかく危機は脱したんだよな?」
仲間を見回し確認をする。
とてもグダグダ感満載だが、とりあえずそういう事なのだろう。
貰ったアイテムをガイアスはしみじみと眺める。
メンバー達も、その品々を興味津々だ。
「あ~~…、とりあえず使ってみるか?」
先ほど教えて貰った品を使い、けがの手当をしていく。ム〇も虫刺されの患部に塗る。
血を流し過ぎグッタリしているシェリーに、豆のような粒の薬を飲ませる。
数分後には、薬が効いて眠っている。
「ちょっと!?これを見て!この消毒液傷口からブクブクと泡がでるの!さらに傷薬は塗ると、傷口がキレイに塞がっていくわ!」
傷の手当をしていた回復師のロゼッタは、余りの驚きでケガをした患部を見せる。寝ているから良いものの、際どい所まで服を捲り上げる。
近くにいた剣士のライアンは、ギョッとし目を逸らす。
「この、なんだ?アンメル〇ヨコヨコ?なんで読めるんだろ、オレ?疲れた筋肉に塗る?……、おぉー!一瞬で痛みが引いたぞ!まるで最高ランクの回復師か、それ以上だ!」
プンプンと独特な匂いも気にせず小躍りする。常に苛む痛みが完全に消え去った。
容器を天にかざし、全身で喜びを訴える。
「彼は、俺たちが絶体絶命の危機に現れた。それにあの巨大なボアを、彼は通り過るざまに一瞬で仕留めていった」
忽然と現れ、忽然と消えるあの男は!
迷いの森の深奥で魔物の襲撃に遭い、生き残れるかどうかの瀬戸際に現れた。
妙にニコニコしながら「がんばってね」「お疲れ様」と声をかけ応援し、異様に効く不思議な素材の薬や食料を渡していった。
「彼は、この魔の森の守り神じゃないのか?」
「俺たちの窮地を救うために現れた救世主!」
ガイアスはナオヤが消えた場所に膝まづき、深々と頭を下げた。
他のメンバーもそれに習い頭を下げる。
そして……
「今日は奇跡としか思えない。神に感謝を!」
「感謝を!」
晴れやかな声は、空高くこだまする。
彼らが祈りを捧げるその時、ナオヤは自宅のリビングでコーヒーを飲んでいた。
のんびりとくつろぎ、甥っ子達との会話は楽しい。
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ガイアスは、渡されたカロ〇ーメイトなる物を見つめる。固形のブロックが4つ。
ちょうど目を覚ましたシェリーに、その一つを渡した。
「この妙な見ための固まりの菓子。これを食べるのですか?」
ガイアスはコクリと重々しく頷き、他のメンバーは好奇心丸出しでシェリーを見ている。
ヤレヤレとため息を吐き、クンクン匂いを嗅いで、恐る恐る口に運ぶ。
「ん……? 甘い? フルーツの香りがします!すぐに溶けて体に染み渡るようです。これは……疲労回復系のレーションでしょうか?」
不安げな表情は一気に晴れやかになり、ニコニコ笑顔で食べる。
それを見た他のメンバーたちも、違うタイプの”差し入れ”を試食し始める。
ガイアスはシェリーと同じカロ〇ーメイトをたべてみる。
「ん!これは食べやすくて良いな。空腹が満たされる感覚もあるぞ」
ライアンに、ロゼッタがグミを渡す。
半透明の可愛らしいピンクの粒。
「これは魔物の卵か?匂いはよく分からん。いや、妙な弾力がある」
ウンウンと頷き、はよ食べれと促すロゼッタ。
眼力の強さに敗北し、ライアンは勇気を出し食べてみる。
腹から魔物が飛び出す事態になった時、ロゼッタに向かえと思いながら……
「……う、美味い!ウソだろ!?力が湧いてくるぞ!こ、これは気力回復の宝石菓子だー!」
「やっぱりタダモノじゃなかったのね!」
キラキラの目でグミを見つめ、グリーンの粒を摘み、恭しく口に入れた。
効果は同じで、色は関係ないようだ。
ラキアは喉が乾いていたので、スポーツ粉末を試していた。
水を入れたコップに粉末を少量入れ、クルクルと木の棒でかき混ぜる。
「粉末が一瞬で消えたな。変な匂いもないし、大丈夫だろ」
神に感謝をと呟き、一口飲んで味わう。
甘みと微かな塩気を感じる。
複雑なハーモニーを奏でた味わいだが、爽やかな美味さがあるのだ。
「ついでに体力と魔力も回復してやがる。こりゃすげぇな!」
粉末故に持ち運びは楽だし、入れる量によっては、効果の違いがあるかもしれない。
もったいなくて試す気はないが、とんでもない代物なのは確かだ。
ラキアの横では、ガイアスがティーパックを手に取り、まじまじと見つめていた。
「この紙の袋に入った乾燥ハーブ……普通の薬草ではないんだろうな。しかも紐がついて、これだけで便利さが格段に上がっている」
熱いお湯を用意し、慎重にカップにティーパックを沈める。
「ふむ、これが安らぎの儀式か……」
すると、たちまちお湯が琥珀色に染まり、辺りに心地よい香りが広がる。
「わあ……なんていい香り!心まで安らぐようだわ」
ロゼッタが目を細める。手にはお湯の入ったカップ、ガイアスは紐を持ち上げカップに入れた。
「フフ、なぜか楽しいわ!」
色が染まるとシェリーのカップに入れる。
シェリーはニコニコ微笑み、紐を持ち上げたり浸したりして遊ぶ。
そして皆で一口飲むと、さっきまでの緊張と疲労が一気に溶けていくような感覚に包まれた。
「これは守り神が勧めるだけの事はあるな」
口の端を上げ、ガイアスは胸の奥で感謝した。
ロゼッタとシェリーは楽しげに話している。
「なぁ、ライアン半分飲まないか?」
ラキアはコーヒーポーションを手に取り、ライアンに提案する。
ライアンも興味があるのか、コップを差し出す。
中から毒々しいモノが出てきたが大丈夫なのだろうか?
「黒い液体……これは、毒か?」
警戒しつつも、コップに水を注ぐライアン。
ラキアはお湯を入れてみる。
すぐに黒く染まり、お湯を入れた方から香ばしい、今まで嗅いだことのない独特な香りが立ち上った。
「お湯の方がよかったか?まぁ水も近づけばいい香りがする」
「好みだろう。とりあえず飲んでみるぞ……うっ、苦い!」
思わず顔をしかめるラキア。
それを見て警戒するライアン。
しかし、その後に続く覚醒感に驚き、ラキアは頬を染めてライアンに振り向いた。
「目が覚める!頭もスッキリ冴え渡るぞ。これなら徹夜の警戒も大丈夫だ。疲れを感じさせなくていい♪」
恐る恐る飲むライアンは、首を傾げる。
「そこまで苦いか?香りはいいなぁ。スッキリするのは確かだ 」
互いのカップを交換し、飲み比べてみる。
どうやら温度によって、効果が多少変わるらしい。
「お湯は香りがリラックス効果を高めるみたいだな」
「水はスッキリし、感覚が冴え渡る感じが強くなるようだ。とにかくスゴいな」
彼らはこれらを、神様がくれた安らぎのアイテムと認めた。特にティータイムは、魔の森の過酷な任務後の、ささやかで極上の楽しみな時間となる。
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後日、ガイアスが献上した「聖遺物」の報告を受けた辺境伯は、その効能に驚きつつも、その出どころの奇妙さに首を傾げていた。
「なに? その神とやらが着ていたのは、体型が丸分かりにする服で、肌に密着する下着のような物だったと?奇妙に柔軟で、緻密性があり光沢を放つ生地だったか?」
破廉恥極まりないのだが?
「ハッ! 神様は彼らに『大変な仕事だね。作品ができたら観に行くよ』と、よく分からないお言葉を残していかれたとか?」
報告をあげる者自身が戸惑い、何を言っているんだという気持ちだった。
聞く辺境伯にとってもそれは同じで、馬鹿にされたような気持ちを味わう。
だが至って真面目な報告で、だからこそ頭が痛い。
実際「聖遺物」は存在しているからだ。
その後、辺境伯が最も戸惑い困った物は、研究のために受け取ったアンメル〇ヨコヨコの瓶だ。
「クソッ、この瓶の蓋はどうやったら開ければいい!?」
現代の密閉容器の蓋の構造を理解できず、辺境伯付きの錬金術師たちが何時間も格闘することになる。
「閣下、この瓶には魔法的な封印が施されています!我々ではとても開けられません!」
「神はこの霊薬を、必要とする者(ガイアス達)以外は使うなと戒めているのかもしれません」
そうしてアンメル〇ヨコヨコは、ガイアス達の下に戻って来る。ラキアは泣いて喜び、我が子のように大切にしている。
あの様子では二度と手放す事はないだろう。
(ただのスクリューキャップなんだけどなぁ)
ガイアスは心の中でそっと呟いた。
その事に気付かない奇妙さが、神のお力故なのだろう。ガイアスはそう納得する。
神の差し入れは、「奇妙な封印が施された、効果は絶大だが、使い方がよく分からない神の贈り物」として、ガイアス達に大切に扱われる事となった。
読んでくれてありがとうございます!(´▽`)
感謝感激です。




