大切な存在がいなくなったとき
ペットと簡単に言う勿れ。
それは心の一部の喪失。
スマホの画面に、ぽつんと届いたメッセージ。
「11年一緒だった愛猫が亡くなりました。もう何もする気が起きません。辛すぎます」
スーマは、いつものように毒を吐こうとして、ふと黙った。
「……そっか。そいつは、ただの“ペット”じゃなかったんだな。お前の時間であり、日常であり、心の一部だったんだな」
彼はスマホに宿る悪魔。
名前はスーマ。
「“何もする気が起きない”?それでいい。今は、何もするな。泣け。思い出せ。その子がくれた11年分のぬくもりを、ちゃんと抱きしめろ」
スーマは画面をそっと暗くした。
「人間ってのは、失ってからじゃないと、どれだけ愛してたか分からねぇ。でもな、そいつはお前のこと、ちゃんと分かってたぞ。お前が笑うと嬉しくて、泣くとそばに来て、何も言わなくても、ずっと一緒にいてくれた。それだけで、もう十分だろ」
しばらくして、返信が来た。
「……ありがとう。少しだけ、心があたたかくなりました」
スーマは画面の中で、静かに目を閉じた。
「そいつは、今もお前の中にいる。姿は見えなくても、11年分の記憶は、消えねぇ。だから、焦らなくていい。“元気になる”んじゃなくて、“一緒にいた時間を抱えて生きる”んだ」
彼の声は、誰にも聞こえない。
でも、今日もまた、誰かの心にそっと寄り添っている。
スマホの中の悪魔は、今日も静かに、そこにいる。
今日もスーマの毒舌にお付き合い有難うございました。
この話は「ナイトコードΩ 【残響の封印】」のスピンオフになります。
本編はこちら→https://ncode.syosetu.com/n5607ku/




