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何でも屋「スケープゴート」をどうぞご贔屓に!  作者: ねんねこ
1話:よくある探し物のお仕事
9/10

09.午後の探索(1)

 報告の関連性を繋いでいたのだろうグレンが口を開く。


「収穫祭で収穫されるのは俺達で間違いなさそうだな。アルブスが見て来た隣の部屋も、俺達のように異変を察した人物が逃げようと足掻いた形跡に思える」

「じゃあやっぱり、祭りに参加しないでいいのなら――参加しない方が安全そうですね」


 真白の意見に肯定の意を示したグレンが次の行動について言及し始めた。

 タイムリミットと不穏過ぎる収穫祭のせいで空気がピリついている。


「魔導書の在処を本腰入れて探すぞ。午後からは入手できればブツを入手して、さっさとトンズラしよう」

「どこを探しますか? やっぱり教会とかですかね」

「教会、村長・ゲーアハルト自宅――怪しいのはこのあたりか」

「ちなみに教会の表にどん、と安置されていたりはしませんでした。裏に入らないとゲットできないかも」

「教会の内部構造がどうなっているか分からないな……。最悪、場所さえ分かれば祭開始直前に奪取して逃走が良い気もするが……」


 今調査できるのは、と窓から外を見ながらアルブスが意見を述べる。


「一般開放されている教会の聖堂だけだ。村長宅は入り込むのは厳しいだろう。見咎められれば即アウトだ」

「教会の調査は俺が請け負う。真白の報告によればシスターがいたそうだな? この久墨さんに文字通りお墨付き頂いた顔面でどうにかしよう」

「神職者だぞ……」


 アルブスはかなり引いた顔をしている。

 ただし対女性であればグレンの顔面ゴリ押し大作戦は案外刺さる時には刺さる。そういうのに微塵も興味が無い人物にはむしろ悪印象を残すが。


「とはいえ、いくら久墨さん絶賛のこの顔面でも魔導書を持って来させるのは恐らく不可能だ。精々、凡その保管場所を探るくらいが関の山だな。だから収穫祭の情報を入手してきてくれ。どの辺に会場を設営して、大体何をするのか――だとかをな」

「分かりました。真白、行きます!」


 情報収集はアルブスに任せるととんでもない事になりかねない。

 何を聞けばいいのか分かれば、あまり警戒されない真白が聞き込みを行った方が効果的である。

 肩を竦めたアルブスが仕事を探すように一瞬だけ逡巡し、やがて思い付いたかのように作業内容を並べた。


「――では、私は村の資料でも漁るとしよう。ないとは思うが、万が一資料庫にでも魔導書が紛れ込んでいれば、それで終了だからな」


 魔導書など価値が分からない者が見れば、古ぼけた書物でしかない。

 この村が実はシロであったならば、資料として保管されていてもおかしくはないだろう。


「聞き込みに私が役立つとは思えぬが、資料倉庫などが無ければ真白の方と合流しよう。私のような元別教団の所属者はニオイがあるらしいからな。教会へ入れば警戒されかねん」

「私はウロウロしているので、声を掛けて下さいね!」

「見つけられればな」


 午後の探索、スタート。


 ***


 真白は早速、収穫祭について情報を集める為に村へと繰り出していた。

 とはいえもう祭の開催は明日だ。何らかの準備を始めている頃合いだろうし、人が集まっている所に向かえば万事問題ないのである。

 ――と、思ったのだが。


「……え? 何の準備もしてなくない……? 本当に明日やるんだよね、お祭り」


 驚く程、何の準備も開始されていない。

 収穫祭が野菜やら何やらを指さなかったとしても、何の準備も出来ていないのはおかしいのでは。明日催し物が始められる状態ではないのだが。


「あの? あの、先程から困惑した様子で行ったり来たりされていますが、どうかされましたか?」


 不審な動きをしていたのだろう。非常に指摘し辛そうな顔をした村の女性に呼び止められてしまった。

 と思えば、やはり目立っていたのかもしれない。

 先程の報告でグレンから注意喚起された武装した人物達がチラチラと真白の方を伺っている。変な返答をすれば腰の銃をぶっ放してきそうな空気だ。


「あわっ……! あわわわ、いやその、明日お祭りをやるって聞いてぇ……」


 緊張のあまりしどろもどろになってしまった。対する女性もこちらの慌てぶりに深刻そうな顔で頷く。


「はい、はい。そうですよ、明日は収穫祭です。あ、皆様もご参加されますよね?」

「えぇ!?」

「えぇ……?」

「あっ、いや、参加とか以前に……どんなお祭りなのかなあ、と……」


 あまりの慌てっぷりに単純なコミュ障だと思われたのか、武装した村人はそのまま巡回へと戻って行った。そう、グレンの言う久墨のお墨付き、警戒を抱くに値しない人物と思われる、それが真白という従業員なのである。

 恐すぎるチャカ持ち村人がいなくなった為、心がやや平静を取り戻す。


「き、緊張されてますか? 祭りについてなら何でも聞いてください」

「どうも……。えーっと、準備とかしている様子が無いのですが……? 何かトラブルが起きて人手が足りないとかなら、お手伝いしますけど」

「大丈夫ですよ。こんな小さな村ですから、盛大にとは言っても収穫祭で得た食物を料理して並べるだけなんです。長机を出したりするだけですし、明日料理チームと会場設営チームに分かれてささっと準備しますから」

「料理……こう、飲み食いメインのお祭りって事ですかね?」

「そうですよ。タダで食べ飲み放題です」


 ――すっごいあるあるの収穫祭をお出しされたな……。

 よくあり過ぎてもう逆に不自然。もっと地域色とかが出るのが真の祭というものなのだ。

 しかも準備の話は現在やはり準備されていないので本当らしい。

 そんな急場しのぎの会場で「 」に対する敬意は足りているのだろうか。やはり宙ぶらりん信奉者の集まり、やる事がいちいちあるあるとないないに別れて困る。


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