第8話。もうすぐ夜になります!
前回までの話では、ホワイトが目を覚まし、セリナ、レオ、ミランダ、サム、ジェイコブたちがホワイトを崇めていた。
それは騎士だからなのか?それとも神の使いである騎士だからこそなのか。
ホワイトはユリアに剣を向けるが、それは異端者としてではなく、「真実」を知るための行為だった。
ユリアは限界が来て泣き、そして「真実」を話した。ホワイトとユリアはお互いを理解し、みんなで新天地への道を進むことにした。
ホワイトとユリアのわだかまりもなくなり、7人全員が協力して新天地を目指すことにした。今まさに計画を練っているところだ。6人は円になって話し合いをしていて、言うなれば雑談みたいな感じだった。
ホワイトはヘルムと白いチュニックを脱ぎ、鎖帷子も外して軽装になる。装備をチェックして、剣と盾だけを持つ。心の中で呟いていた。
ホワイト(さらば、我が同胞たちよ……)
目を閉じて、ヘルムと白いチュニック、鎖帷子を捨てることにした。
それは異端者となったテンプル騎士団の彼の最後の姿だった。
こうして彼は「ホワイト」として生まれ変わった。皆のところに戻ると、話が続いていた。
ミランダ「新しい土地はどこにするのさ?」
ミランダは土地勘が分からないから、さっぱりだった。生まれてこの方、故郷から出たことがないからだ。
サム「俺はホワイト様が行く道なら、どこでも行くつもりだ」
サムは単純だ。火の中、水の中までも行くだろう。でも、そこがサムの良い所だろう。
ジェイコブ「ヴェネツィアの魚料理が美味かったのぅ〜」
ジェイコブは昔、ヴェネツィアに住んでいた記憶が蘇る。
(※ヴェネツィアの定番料理、ビゴリ・イン・サルサは魚介類の全粉を使ったパスタだった。サード・イン・サオールも定番の魚料理だ。)
レオ「お母さん〜お腹空いた〜」
レオの腹の虫が鳴く。空腹だったのだ。母の袖を掴んで訴える。
セリナ「そうね〜夜が近いわね、お腹空くわよね」
セリナはレオの手を握る。セリナもお腹が空いていた。空を見上げると、夕方が過ぎようとしていることに気づく。
ホワイト「ひとまず、ここから離れて狩りをしよう、ユリア姫、それでいいだろうか?」
彼はユリアのことを「姫」と呼び添える。これは主に対する礼儀だった。
ユリア「私はあなたの主君じゃないのよ」
姫と呼ばれるのは嫌いな方だった「そもそも貴族のご令嬢ではないのだから」
心の中で呟くユリアだった。
ホワイト「だが、あなたは我々の命を救ってくださった恩人、騎士が…」
ホワイトは何故か途中で言葉が詰まってしまった。そして話題を切り替える。
ホワイト「夕方の食事にしよう、皆、お腹が空いているようですからな」
ユリア「そうね、結界を解除するわ、狩りはどこでするの?」
狩り場が気になっていた。ユリアにとってこの世界での初めての狩りになるからだ。もっとも簡単な方法は知っている。
それは魔法のストレージ内にある食事アイテムを使えば腹を満たせるだろう。しかし、ユリアは考えた。
この世界での魔法ストレージ内のアイテムは貴重だし、緊急時以外は使わないことを決めたのだ。
ミランダ「狩りは魔術を使えばいいんだろ」
サム「ここは魔女様に狩りをお願いしよう、魔術使えるだろ?」
ジェイコブ「サム、ミランダよ、本当にそれでいいのかのぅ?」
そんな2人の話を聞いたホワイトは、あることを伝えた。
ホワイト「どんな魔術かは知らないが、はっきり言わせてもらう、我は反対だ」
彼は魔術を使うことに反対していた。眉間にシワを寄せる。それを聞いたユリアは…。
ユリア「ど、どうして反対なの…?」
「やっぱり私のことが嫌いなのかな…」ユリアは心の中でそう思っていた。
ホワイトの顔をうかがうと、彼は一息ついて語りだした。
ホワイト「もし魔術を使ったら、ユリア姫はどうなろうか?無闇に使えば異端者の烙印を押されることになるのだぞ」
ホワイト「我々には我々の知恵がある、その知恵で戦えばよいのだ」
彼はユリアに近寄り、頭を撫でる。ホワイトはユリアを子供だと思っている。確かに子供なのであろう。
ユリア(そうか、ホワイトは私を子供だと思ってるんだ)
心の中で呟くしかなかった。言われてみれば、自分は外見が子供だから仕方ないことだと思っていた。
だからこそ、ホワイトは私を危険から避けるために反対してくれたのね。ユリアはクスッと笑った。
ホワイト「ひとまず、森林へ向かう。軽い木を切って弓を制作するのだ」
彼は森林へ向かうことを提案した。森林には動物が繁殖していて、狩り場にちょうどいいからだ。全員が頷く。
ユリアは結界を解除する。ホワイトを先頭に、皆で森林へ向かう。ジェイコブの足の速さに全員が合わせる。
時々、サムがジェイコブをおんぶして進む。歩くこと40分は経っただろうか。森林に到着した一行は早速、準備に取り掛かる。
まずホワイトは切りやすい木を見つけて切り倒し、枝をもぎ取って簡単な弓を作る。そして枝から矢じりを作る。
それを見ていた一同は「さすがだ」と頷く。
ホワイト「では、狩りに行ってくる。みんなは安全なところにいてくれ」
彼は自作の弓と矢を持って狩りに出かけた。ユリアはもう一度、周りに結界を張る。
数時間が経っただろうか。するとホワイトが戻ってきた。しっかりと獲物を確保していた。ユリアは結界を解除してホワイトを中に入れる。仕留めた獲物は野良ウサギと野良イノシシだった。
ホワイトは獲物を解体し始める。腎臓や胃を取り除く。それを見ていた一同は。
ユリア「ホワイトは、こういうの得意なんだね」
ミランダ「さすが騎士様だ、流石だ!」
サム「当たり前だ!騎士は修道長や主君といろんなところに行くんだからな!」
セリナ「クスッ、サムがまるで自分のことのように自慢してるわね」
ジェイコブ「サムはまるでホワイト殿の従士みたいじゃな」
レオ「なんだか、美味しそう〜」
まずは焚き火を用意するために、木の枝を探すことにした。ホワイトは乾いた木の枝を見つけて折った。「パキッ」という音がした。
ホワイトは頷いて、「これがいいだろう」と心の中で呟く。
焚き火には火が必要だからだ。
ホワイトはお気に入りの火打石や火打金を使って火を起こす。
(※火打石は石と石を擦り合わせて火花を出すもので、黄鉄鉱フリントとも呼ばれる。昔はメノウ、玉髄、チャート、ヒスイ、黒曜石なんかも使われていた。)
時代によって変わってきたが、無論、中世ヨーロッパだけじゃなくて、日本の戦国時代でも使われていた。さて、話を戻そう。全員が焚き火の近くに寄って、お肉を枝で刺して焼き始める。
女性陣は事前に水を汲んできてくれていたから、水分補給も心配なしだ。お肉が焼けるいい匂いが漂う。結界の中では匂いも外に気を使わなくて大丈夫だった。
焼けたお肉は、最初にレオから順番に渡されていた。
レオ「おいしい〜!うまいよ、お母さん!」
あまりの美味しさに、レオはほうばっていた。
セリナ「ほら、慌てないで。お肉は逃げないから」
彼女は我が子の口の周りを拭いてあげる。
ミランダ「く〜、美味いね〜ホワイト様!」
ユリア「ん〜、なんだか久しぶりに食べる気分!」
ユリアもお腹が空いていたのか、美味しそうに食べていた。
ジェイコブ「うむ、美味いのぅ!ホワイト殿よ!」
ホワイトは、ジェイコブが食べやすいように肉をカットしていた。今で言う「肉バラ」だ。
ホワイト「はは、みんな、慌てずに、ゆっくり食べような」
彼は皆の食べっぷりに喜んでいた。そして、ホワイトは空を見上げる。空は暗闇に包まれようとしていた。
ホワイト(もうすぐ夜か……)
こうして、夜を迎えようとしていたのだった。
次回、第9話。もうすぐ一日が終わります!。




