第19話。明日の計画を立てます!
前回までの話では、村長の家に招かれた一行は手厚いもてなしをされ。宿屋さえも使わせてもらえる事に、そして村長は歳の近いジェイコブと語り合ったのである。村長は飲み過ぎたジェイコブを宿屋まで送る・・・。
ジェイコブが村長と長時間話し込んでから、夕方になっていた。宿屋は村長の家から徒歩5分の場所にあり、すぐ近くである。宿屋は2階建てで、1階は受付と食堂、2階は客室となっている。
ホワイト達とユリア達は隣同士の部屋に宿泊している。女性陣の部屋では、ユリアがレオと遊んで帰ってきたところだった。レオは母セリナと同じ部屋に泊まっている。
ユリアは呟き、ベッドに飛び込んだ。ベッドに横になり。「疲れた~! レオ、覚悟してなさい〜」
ミランダ「まったく、だらしないね。まだ子どもなのに」
ミランダは呆れた様子でユリアの靴を脱がせた。
それを見たセリナは小さく笑った。
レオ「ねえ、お姉ちゃん? 何を覚悟するの?」
ニヤニヤしながら尋ねると、また遊びたいと思うレオ。
セリナは微笑む。「ユリア様、もうすぐ食事の時間ですよ」
皆で食事をする、予定だったからだ。
それを聞いたユリアは勢いよく起き上がり、目を輝かせて尋ねた。「セリナ! パンや野菜の料理はあるの?」
セリナは再び小さく笑い、「ええ、ございますよ、ユリア様」と答えた。
そのとき、扉をノックする音が聞こえた。
ミランダがすばやく扉に近づき「誰だい?ホワイト様かい?」と尋ねた。警戒しているような様子だった。
ホワイトは応える「我だ、ホワイトだ、ミランダ」
ミランダが扉を開けると、ホワイトは微笑みながら「ミランダ、警戒してくれて助かる」と伝えた。
ミランダは少し顔を赤らめた。ホワイトは皆を食事に誘いに来たのだった。
一同は1階に下りた。ユリアはジェイコブがいないことに不安を感じていたが、ホワイトがその経緯を説明した。
ユリア一行は木製の丸テーブルに着き、食事を注文した。幸い、費用は村長が負担してくれることになっていた。
この当時の「お金」事情を軽く説明しておこう。これは中世ヨーロッパならではの通貨だ。
フランスの通貨は金貨でフローリン、大型銀貨はグロ、小型銀貨はソルドまたはドゥニエ。
イギリスの通貨は金貨でフローリン、大型銀貨はグロート、小型銀貨はペニー。
イタリアの通貨は金貨でフィオリーノまたはデュカット、大型銀貨はグロッソ、小型銀貨はデナロ。
ドイツの通貨は金貨でグルデン、大型銀貨はグロッシェン、小型銀貨はデナールまたはペーニヒ。
金貨の初めての発行は1250年頃とされている。銅貨は16世紀頃から登場した。
現代の価値に換算すると、金貨1枚は約12万円、銀貨1枚は約3,000円に相当する。
話を戻しましょう。
注文していた食事が運ばれてきた。ユリアはそれを見て喜んだ。
次々と料理が運ばれてくる。こんがりと焼き上げられた肉、野菜スープ、パン、野菜のサラダ。7人前ほどの量だった。
ホワイトが突然、祈るように手を合わせて合掌した。そして次のように述べた。
ホワイト「父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます。アーメン」
一同も同じ言葉を繰り返した。ユリアは驚いた表情を浮かべる。セリナは片目をつぶり、もう片方の目でユリアを見て微笑んだ。
セリナは小声で言った「真似すればいいだけですよ、ユリア様」
ユリアも同じ姿勢をとり「いただきます!」とつぶやいて食事を始めた。ユリアはふと疑問に思った。
ユリア「なぜ食事の前に祈るの?」
サムがパンを取る。そしてユリアもだ。
サム「キリスト教徒は食事の前に神に感謝の祈りを捧げるんだ」
ユリア「変わった文化ね〜」
ユリアはパンを食べながらつぶやいた。そこにミランダが会話に加わった。
ミランダ「あたいはキリスト教徒じゃないさ」
キリスト教や神の存在は、ミランダにとって関係のないことだった。
ホワイト「ユリア姫、ここはキリスト教の地だ。こちらの慣習や決まりに従っているのだ」
彼はレオに食べやすいようにパンを半分にちぎって渡した。レオはそれを受け取り、食べ始めた。サムが尋ねた。
サム「ホワイト様、明日の予定はどうしますか?」
サムは今後のことを心配していた。この集落に長く滞在するのか、それとも。ホワイトが答えた。
ホワイト「ジェイコブ殿が起き次第、計画を立てるつもりだ。村長から何か情報が得られるはずだ」
ホワイトはジェイコブの情報に期待を寄せていた。
皆で食事を楽しみ、いつの間にか夜が訪れていた。
こうして、また一日が終わろうとしていた。
次回、第20話。こうして2日が終わりました。