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第18話。ジェイコブとグレゴリ村長。

前回までの話では、集落の子供達がレオ達を見ていた。そしてレオとユリアは集落の子供達と遊ぶ事になる。ユリアは心が大人ゆえに子供達の行動についていくのに必死であった。

 一行は村長の家に招かれた。村長は一行を部屋に案内し、テーブルへと促した。テーブルは長方形の木製で、椅子は10人分用意されていた。どうやら、客間として使用される部屋のようだった。


 グレゴリ村長が席に着き、次にジェイコブが座った。ジェイコブと村長は対面する形で席に着き、左側にホワイトとセリナ、右側にサムとミランダがそれぞれ90度ずれた位置に座った。


 最初に口を開いたのはホワイトだった。軽く全員の自己紹介をした後、ホワイトは村長の目を見つめ、深く頭を下げた。そして、丁寧な口調で話し始めた。


ホワイト「グレゴリ村長様、我々を温かく迎え入れてくれて感謝いたします」


グレゴリ村長「『様』を付ける必要はない。村長で十分だ」


村長はホワイトの丁寧な言葉遣いに微笑んだ。


ホワイト「では、グレゴリ村長、せめて1日だけでも宿屋を貸していただけないでしょうか」


ホワイトは真剣な表情でその提案を伝えた。


グレゴリ村長「うむ、構わん。自由に泊まるがよい」


 村長は長い髭を撫でながら答えた。そして、話を続けた。


グレゴリ村長「部屋を2室用意しよう。女性もおられるからな」


 村長はセリナとミランダを交互に見つめた。セリナとミランダは深く頭を下げて感謝の意を示した。


グレゴリ村長「長旅で疲れただろう。今日は解散としよう」


 村長は微笑みながら手で合図を送った。一行は立ち上がり、全員で深く頭を下げた。


そのとき、村長はジェイコブを引き止めた。


グレゴリ村長「どうだろうか?お互い年を重ねた者同士、話をしてみんか?」


 村長はジェイコブが自分と近い年齢であることに気づいていた。ジェイコブは軽く頷き、ホワイトに目で合図を送った。


 ホワイトは「承知した」と小さく呟き、一行はその場を後にした。部屋にはジェイコブとグレゴリ村長だけが残った。


   今宵の主人公はジェイコブである。


村長は立ち上がり、酒を取りにいった。


グレゴリ村長「お酒は飲めますかな?ジェイコブ殿」


ジェイコブ「おお、酒は久しぶりじゃ!」


 ジェイコブは喜んで付き合うことにした。この先は、年老いた二人の会話が繰り広げられるだろう。どんな話が飛び出すのか。


グレゴリ村長「生まれは、何処か?ジェイコブ殿」


ジェイコブ「元はヴェネツィアでしてな」


グレゴリ村長「ほぅ〜海の都とも呼ばれてますな」


グレゴリ村長「難攻不落の国だとか」


ジェイコブ「そうですじゃ、難攻不落ですぞ」


グレゴリ村長「なにゆえ?ヴェネツィアから出られた?」


ジェイコブ「はっはは、恋人の為にとでも」


グレゴリ村長「ぶはは!危険を起こしてまで恋を優先いたしたか!」


グレゴリ村長「実に久しぶりの来客だ。嬉しい限りなのだ」


ジェイコブ「この村には旅人があまり訪れないのですかな?」


グレゴリ村長「ピサとジェノヴァの中間の位置なのだ」


ジェイコブ「今、何とおっしゃいましたかな、村長?」


グレゴリ村長「ここはジェノヴァ共和国の領内じゃ」


ジェイコブ「北へ進めば神聖ローマ帝国ですな!」


グレゴリ村長「そして隣にはフランス王国じゃ」


グレゴリ村長「この地は辺境にあるため、訪れる者も少ないのだ」


グレゴリ村長「さあ、ジェイコブ殿、もう少し飲み語り楽しもうではないか!」


ジェイコブ「村長、喜んでお付き合いしますぞ」


 そしてジェイコブとグレゴリ村長は約5時間にわたり酒を酌み交わした。いつの間にか時刻は夕方近くになっていた。


グレゴリ村長は立ち上がり、こう言った。


グレゴリ村長「ジェイコブ殿、そろそろお開きにしようか」


 村長はジェイコブがやや酔っていることに気づいた。ジェイコブを支えながら、村長は彼を宿屋まで送ることにした。


 その途中、ジェイコブは酔いのせいか、つい口を滑らせた。「うぬ……皆……逃げ……」


その小さな呟きは、グレゴリ村長の耳に届いた。


グレゴリ村長「ふむ、やはりあの男は…」


 村長は静かに護衛兵を呼び寄せた。2人の護衛兵が物陰から現れ、緊急時の備えとして待機していたことがうかがえた。


グレゴリ村長「明日までに例の物を用意しておけ」


 村長は2人に具体的な指示を伝え、「急げ」と一喝した。護衛兵たちはその場を離れ、命令を実行に移した。


 グレゴリ村長はジェイコブを宿屋まで送り届けた。宿屋の扉を開けたホワイトが、村長に丁寧に頭を下げた。


こうして、ジェイコブとグレゴリ村長の長い対話は幕を閉じた。

次回、第19話。明日の計画を立てます!。

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