第17話。レオと集落の子供達。
前回までの話では、村の集落の所まで移動し。そこで村長と会う。村長はキリスト教であった。そしてフィリップ4世の事を語る。機転を利かせたホワイト。そして一行は集落の中へ。
一行は村の集落に入った。集落の住民たちはユリアたちを見て距離を置く。それは、部外者や異端者かもしれないと警戒しているためだ。
しかし、集落の子どもたちは興味津々に彼らを見つめていた。一人の女の子が手を振ると、それを見たレオは母親の腕をつかんだ。
セリナは小さく笑って優しく伝えた。「みんなと遊んできなさい」
レオ「遊んでもいいの? お母さん?」
レオはホワイト、ミランダ、サム、ジェイコブを交互に見つめた。
皆が「もちろん」とつぶやくと、レオは喜んだ。
レオが子どもたちのところへ向かおうとした瞬間、ホワイトに呼び止められた。
ホワイトはレオに告げた。「レオ、我らは村長の家に向かう」
ホワイト「宿屋を借りる予定だ。遅くならないように帰ってくるのだ」
ミランダも心配そうに付け加えた。「宿屋の場所が分からないときは、集落の人に尋ねな!」
レオ「はい、わかりました!」と元気に答え、ユリアの手を引いて一行から離れていった。
突然のことにユリアは戸惑った。「え! 私も行くの!?」
レオ「もちろん! お姉ちゃん!」
レオとユリアの年齢はさほど変わらない。共に「子ども」だからだ。今宵の主人公はレオであり、ユリアは「脇役」にすぎない。時刻は昼前になろうとしていた。
レオとユリアは先ほど子どもたちがいた場所に向かった。そこでは3人の子どもたちが遊んでいた。
3人はレオとユリアに近づき、早速自己紹介を始めた。
ポール「僕はポール、よろしく!」
マリア「私はマリア、よろしくね!」
フレク「…フレクです」
ポールとマリアは明るく元気な子どもだったが、フレクは物静かな雰囲気だった。
レオとユリアも自己紹介し、子どもたちの輪に加わった。
5人の子どもたちは何をして遊ぶか考え始めた。
マリア「うーん、何して遊ぼうかな?」
ポール「よし! 戦争ごっこ!」
フレク「……冒険ごっこがいいかな」
レオ「僕も冒険ごっこがいい!」
ユリア「私は……うーん、えっと……」
レオはユリアの意見を無視し、フレクの提案に賛同した。レオには「戦争ごっこ」を避けたい理由があったのだ。マリアも頷き、ポールは少し迷ったがフレクの案を優先した。
ユリアは心の中でつぶやいた。「私の意見は…!」
ポール「よし! 大冒険だ、 今日は川に行こう!」
他の4人も頷いた。こうして、5人の大冒険が始まった。川は、レオたちが通ってきた道沿いにある場所だった。
5人の子どもたちは川の近くに移動していた。マリアが提案する。
マリア「家族ごっこをしましょう!」
ポール、フレク、レオは大きくうなずく。
ユリアは心の中でつぶやいた。「ちょっと、冒険ごっこはどこに行ったの!?」
もはやユリアは、現代で言う「ツッコミ役」のような存在になっていた。マリアがユリアの手を取る。
マリア「私たちは姉妹ね。私がお姉さんよ!」
ユリアは心の中でつぶやく。「もう始まってる! しかも私が妹!?」
レオはユリアを見てニヤニヤしていた。ユリアの「正体」を唯一知るレオだからこその笑みだ。
ユリアは悟った(レオったら! こうなるって分かってたのね!? やられた!)
マリア「名前も似てるわ! 『マ』と『ユ』の違いだけだもの!」
ユリア「そ、そうですわね! おほほ!」
ユリアは調子を合わせた。マリアが不思議そうに尋ねる。
マリア「ユリアちゃん? どうして急におばさん役なの?」
ユリア「えっ、あ! ごめんね、お姉ちゃん!」
レオは笑いをこらえ、手で口を押さえていた。すでに我慢の限界だった。
ユリアがレオをじっと見つめると、レオは顔をそらした。マリアが再び提案する。
マリア「ユリアは、大人役がやりたいのね!」
ポール「大人役? うん、大人役で遊ぼう!」
フレクが控えめに言う「僕は、どっちでもいいよ」
レオ「賛成! 大人役!」
ユリア「いいわね! おほほー!」
ユリアもノリで応じる。内心、ユリアはやけくそ気味だった。(こうなったらやるしかない!)本気の「彼女」が表に出てきた。
そのあまりの演技力に、ポール、マリア、フレクは子どもながら圧倒されていた。キョトンとなる。
それを見ていたレオはついに我慢できず、大笑いした。こうして、子どもたちだけの子供による、楽しい遊びが始まった。時刻はすでに正午を回っていた。
次回、第18話。ジェイコブとグレゴリ村長。