第105話。災害の時は助け合いなんです。
前回までの話では、ユリア一行の馬車は暴風後の泥土道を前進していた。障害物を避けながらの移動である。
そして、その道中にある馬車が目に入るサムとミランダであった……。
ユリアたちを乗せた馬車はひたすらフランス国内の北上を横断していた。まだパリから遠い。パリの北上を目指しカレー港町が目的地である。
時刻は午前11時を過ぎようとしていた。ユリアたちを乗せた馬車は途中で止まる。目の前に1頭引きの馬車が目線に入ったからだ。男女が外に出て困惑していた。泥濘のせいで車輪が沈んでる。
本来なら馬の力で窮地を脱出するが馬の力でも動かない泥濘であった。サムとミランダは立ち往生している。馬車の所まで駆け込む。
サム「大丈夫ですか?お手伝いしましょうか?」
高齢の男性「おぉ、これは、天の助けだ!」
高齢の女性「哀れな夫婦を助けてくれるとはねぇ」
ミランダ「年寄りには無理だろ!どいてな!」
サム「し、失礼しました、ミランダ、謝れ!」
高齢の男性「はは、本音を言う、良いお嬢さんだ」
高齢の女性「後で、焼いたパンを食べてねぇ〜」
そして馬車で待機していた4人は馬車から下りていた。4人はサムとミランダの所に近寄る。
ユリア「いきなり止まるだもの驚いたわ」
レオ「サムお兄ちゃん!?どうしたの?」
セリナ「車輪が沈んでるのね!私も手伝うわ」
ジェイコブ「うむ!ワシも手伝おうかのぅ!」
一斉に叫ぶ「ジェイコブお爺ちゃんは駄目!!」
ユリア「こんなの魔……ん――!!」
レオはユリアの口を抑える「僕たちは役に立ちそうにないから馬車に戻るね!」
一斉にレオを見つめて「よく阻止したレオ!」と親指で「グッジョブ!」と合図を送る。
サム、ミランダ、セリナで力を合わせて馬車の車輪を持ち上げる。それに合わせて高齢者の夫婦は馬を巧みに誘導して抜け出すのであった。
全員が大喜びする。高齢者の男性はサムに感謝の意を込めて強く抱きしめる。サムは少し照れてる。
すると高齢者の女性はある物を渡す。それはパンが入ったバスケットであった。セリナはそれを見て驚く。
セリナ「これは貰えません!2人で食べ……」
高齢の女性「よいのよ、よいのよ!食べてねぇ」
高齢の男性「お願いしますだ、お食べくだされ」
サム「セリナ姉、貰っておこう、失礼に値する」
ミランダ「報酬さね!あたいらの!」
セリナ「ミランダ〜もぅ!言葉を選びなさい」
高齢の男性「だはは!お嬢さんには敵わないな!」
高齢の女性「あなた、そろそろ時間ですよ」
高齢の男性「いかん!いかん!そうだな」
サム「お気をつけてください、良い旅を」
セリナ「パン、美味しく頂きますね」
ミランダ「風に気をつけな!御老体!」
2人は御者席に乗り込む。そして手綱を握り馬車を発進させる。2人はサムとミランダとセリナに手を振るのであった。だんだんと遠退いていく。
すると微かに声が聞こえてくる『良い〜お旅を!お若い者〜!』『年寄りを大事にするんだよ〜』
それを聞いてたサムとミランダとセリナは手を振るのであった。
サム「本当に良かったな2人とも」
ミランダ「はん!報酬はパンだからねぇ」
セリナ「これも助け合いですよ、ミランダ」
3人はこうして馬車へと戻るのであった。
次回、第106話。魔法も人の命を救えるわ。