第100話。こうして10日が終わりました。
前回までの話では、ユリア一行を乗せた馬車は、いよいよ北を目指していた。そしていつものように雑談が始まっていた。
ユリアはいつもの調子でセリナお母さん「ごっこ」へと甘える。
それを見てたミランダたちは……。
ユリア一行の馬車は野宿が出来る場所まで移動していた。平原のど真ん中に野宿する旅人は居ないだろう。
時刻は午後18時を過ぎようとしていた。太陽が西に傾き始めていた。もうすぐ夜になる。北上から少しずれて北東へ進路をとる。
平原の北東を進むと、そこは川になっていた。ユリアたちは、そこで野宿する事に決めた。川は鼻と目の先になる。洗い物に困らないだろう。
馬車を止めて下りる6人、ユリアが真っ先に口を開く。
ユリア「ここで魔法お風呂台を作っても?」
サム「駄目だそ?ここは駄目だ」
セリナ「ここは人が通りそうだわ……ユリア」
ミランダ「そんなに毎日、入浴しないと駄目なのかい?」
レオ「昨日、入ったんだよね?お姉ちゃんたち」
ユリア「結界を張るわよ!心配しなくても……」
ジェイコブ「結界のうんぬんではのぅ……」
サム「ユリア姫、本当に結界は万能なのか?」
ユリア「うっ……それは〜……言えないわね」
サム「なら駄目だ、確実に安全でないとな」
セリナ「そうですよ、肌のまま殺されるのは嫌ですよ」
ミランダ「あたいも賛成だよ、セリナのね」
ユリア「わ、分かったよ!なら川で……」
一同「それ余計に駄目だ!!」
渋々、ユリアは諦めて次の機会を待つ事にした。
とにかく、馬車の中で女性陣はお互い協力して背中を拭く。ときより馬車中で暴れる。
いつの間にか空は暗闇になっていた。ユリアは結界の魔法を展開する。そして6人は円になり焚き火を囲む。ユリアは大きなアクビをした。
いつものように他愛ないのない雑談が始まる。
サム「本当にユリア姫は、大人なのか子供なのか」
セリナ「ユリアはユリアですよ、ねぇユリア」
ミランダ「はん!子供だよ、ユリアはね」
レオ「お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ!」
ジェイコブ「今日は早く寝ようかのぅ」
ユリア「もう?寝るの?年寄りは早いのね」
サム「ユリア姫の世界が変わってるだよ」
セリナ「まさか勇者様が朝まで起きてるなんて」
ミランダ「朝まで起きて何してるんだい?」
レオ「凄いよね!勇者様は!」
ユリア「そして朝方に寝るのよねぇ〜勇者は」
一同「朝方に寝る〜!!」
サム「朝方に寝たら危険だろ!」
セリナ「治安とか、ここの世界とは違うのかしら」
ミランダ「かぁ〜羨ましいねぇ〜」
レオ「いいなぁ〜僕もいつか……」
ユリア「レオ、称号があるのよ、しっかりとね」
ジェイコブ「称号とは何じゃ?」
ユリア「それはね、『ニート勇者』の称号よ!」
サム「ニート勇者だと!?凄いのか?」
セリナ「サム、勇者様ですよ?当たり前です」
レオ「凄い〜!強そうな称号だね!お姉ちゃん!」
ユリア「そ、そうねぇ!あっはは……!」
ジェイコブ「うむ、是非に会ってみたいものじゃ」
ユリア「それは無理かしら!」
サム「なぜ?そう言い切れる、ユリア姫?」
ユリア「転移は皆が………」
セリナ「どうしましたか、ユリア?」
ユリア「ううん、何でもないわ」
ジェイコブは立ち上がる、そして馬車に戻る。
サム「ミランダ、先に仮眠をとっておくんだ」
ミランダ「次の見張りは、あたいだね?」
サム「そうだ、見張りは必要だろう」
ユリア「結界を展開してるのよ?」
サム「完全とは言えないなら見張りは……」
ミランダ「サム、分かってるさ、分かってる」
ユリア「好きにしてちょうだい、私も寝るわ」
レオ「おやすみなさい〜ふぁ〜」
セリナ「では、頼みましたよ、2人とも」
ユリア、レオ、セリナたちは馬車へと戻る。
サムとミランダは2人だけになる。2人は焚き火の炎をじ~っと見つめていた。するとミランダが語りだす。
「あたいたち2人で守れるのか心配さね」
「ミランダ、俺たちは従士だ」
「分かってるさ!戻ってくるまで鍛錬さね!」
「その調子だ、ミランダ、仮眠をとれ」
「おやすみ、サム、あとは任せたよ」
こうして、魔法使い少女ユリアの10日が終わった。
次回、第101話。11日目の朝が始まります!