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世代の勇者「短編シリーズ」

世代の勇者「シャル」

作者: グミ

本編「世代の勇者」に登場するキャラクターの短編小説です。


勇者候補補佐[シャル]。この話は彼女が勇者と関わった時のお話です。

蒲公英の種が風に吹かれ、空を舞う。いつもと変わらない空。雲。川の流れ。魚。心地の良い草原に腰を掛け、今日もまた。いつもと同じ時間を過ごす。


「シャルねぇね!これみて!!」

茶髪のツインテールの女の子。[リーシャ]は蒲公英で作った髪飾りを持って走って来る。


「可愛いね!ほら?」

私は髪飾りを受け取ると、リーシャの頭の上に置き、クスクスと笑った。


「わぁ!なんて可愛いお姫様なんでしょう。」

「おひめさま!」

「えぇ。そろそろお昼の時間だし、お屋敷に帰りましょうか?お姫様?」

「…!うん!!」

小さな手を私は握る。9歳年の離れた妹は今日で7才の誕生日。小さな小屋に戻り、道中疲れて寝てしまった妹を布団に寝かせ、頬を触る。


「もう7才かぁ〜。起きた時。ケーキがあったら喜んでくれるかな?」

サプライズを考えていると村の住民が窓から話しかけてくる


「シャルーー!おるかーー!!」

(しーー。今疲れて眠ってるのー。)

(おっと…それは悪かったな)

(どうしたの?)

(いや…今日リーシャの誕生日だろ?村のみんなでパーティでも開こうかって話してたんだ。小さな村だから…子供達には、楽しく育って欲しいからなぁ)

(本当に!!丁度サプライズ考えてたの!)

この集落は、どこの村にも属さないとても小さな村で村人の数も指で数え切れる程。その分。みんなで協力し合い、みんなが家族の様な関係を築き上げていた。



          「シャル」



「卵に小麦粉…チョコに、クリーム…」

人通りの多い商店街に訪れたシャルは、サプライズの肝になるチョコケーキの材料を近くの王国。[デルタ]に訪れていた。


「お金…足りるかなぁ。ん〜…うん!こんなにあれば足りるよね!早く買って、早く帰って!可愛いお姫様を驚かせたいなぁ〜」

数十分程歩くと、さらに人通りは多くなる。シャルは疑問に思いながら進む


(いつもこんなに多いのかな?それともイベント?早めに買い物済まさないとなぁ…)

「あの!道を聞いても?」

「!!!っ!びっくりしたぁ?!」

シャルが話しかけた紫髪の青年は、肩を大きく震わせて振り向いた。


「っ!!ごめんなさい。」

「女?んだよ」

「ケーキを探してるんだけど…知りませんかね…」

「知らねーよ!マジビビったわ?!」

「ごめんなさい…」

「ケーキを探してるんだって?」

「!!」

シャルが振り向くと、髭を生やした男性が笑顔で話しかけて来た。


「知ってるよ!ケーキ!こっちだ。うちの店なんだけど、お客さんがなかなか来なくて、何かのお土産かい?」

「!妹の!誕生日で…ありがとうございます。」

「良いって!ほらおいで!」

「はい!」

シャルは男性について行く。ふと振り向くと、紫髪の青年の姿はどこにも無かった。少し歩くと大通りから抜け、小道に入る。人通りの減った道には地下に降りる階段があった。


「ほらここだよ!」

「こんな所に地下があるんですね…」

階段を降り、扉を開くとシャルの目の前には数100を超えるケーキがガラスケースに並べられている光景が入った。


「わぁぁぁ!!!」

「あら?お客さんかい?いらっしゃい!」

「凄い!これ全部ケーキですか?!」

「ハッハッハ!!あんた!良い反応するねぇ!」

リーシャも連れてくれば良かったと心の底からシャルは思った。可愛く、色鮮やかで、小さなケーキいっぱいの店。シャルはいろんなケーキを見ながら店主に質問する。


「凄いですね…こんなに凄いのにどうしてお客さんが来ないんですか?表に出したらもっと儲かるんじゃ??」

「それがねぇ…うちの旦那が…」

「それは悪かったって!」

「?」

「その…なんだ!一部の人しか知らない隠れ店。みたいな?憧れだったんだよ。それで地下に作ったんだ。でも一部の人どころか誰も知らない店になっちまった。」

「私みたいに誘ったら良いんじゃ?」

「それが笑っちゃうのよ!連れて来るなり、「怪しすぎる」なり「ケーキが地下にあるわけない!」なり。いつの日から悪い噂が立つ様になって、ますます来なくなったわ」

「勿体無い話ですね…お客さんも素直に来てみたら良かったのに…」

シャルが呟くと夫婦は顔を合わせて驚き、笑った。


「あんた!良い場所で育ったんだな!」

「え?」

「うんうん。王国に住んでたら悪い人の話がわんさか。知らない人について行くって事だけでも、怖かったりするのが普通なのよ。」

「そうなんですね」

一通りケーキを見終わったシャルは気に入ったチョコケーキを見つける。


「あの!」

「いいのがあったかい?」

「はい!このチョコケーキを…2つ!下さい!」

「あいよ!」

ケーキを箱に入れてもらい、お代を渡す。シャルは扉を開けると夫婦が大きな声で見送った。


「またいらして下さいね!!」

「はい!また来ます!」

扉を閉め、階段を登る。再び大通りに出たシャルは急いで家に帰った。


「今度はリーシャも連れて来ようかな!」



--------------------


しかし。運命の歯車は動き出していた。変わらない日常。シャルの村はとても平和で、みんな。家族の様に優しくて。私には。可愛い妹がいて。


そんな日々を。当たり前の様に過ごして来た。


人混みを歩いていると、シャルの耳に話し声が入った。その内容。シャルは持っていたケーキを捨てて走った。人を押し退け、息を荒げて。王国を出て西。故郷がある方角にシャルは視点を動かした。


「リーシャ!!!!!」



視点の先。村は燃えていた



煙を出しながら、炎は次第に小さくなる。


人混みで聞いた内容は、「魔王軍が来た」と言うものだった。ただひたすらにシャルは走る。スキル[超能力(サイコキネシス)]を自身のハンカチに使い、掴む。と、同時に。シャルは空中を最高速度で飛んだ。


「みんな!!!!!」

この時。シャルのスキルは以上なまでの成長を見せていた。普段はイタズラにしか使えず、人一人動かすことすら出来なかったのに対し、[心配]がスキルを成長させた。



だが、シャルは間に合わなかった。



村に着くと、あるのは炎が消え、炭になった家のみ。悲鳴は聞こえず、崩壊した家の前でシャルは叫んだ。声が掠れ、涙は枯れ。何度も何度もシャルは叫んだ。地面を叩き、手に石が減り込む。その痛みすら、シャルは感じなかった。


「リーシャ…」


地面に頭をつけていると遠くから足音が聞こえる。どんどん大きくなる足音は近くに止まると、動かないシャルに声を掛けた


「…大丈夫かい?いや。村が燃やされて。大丈夫と聞くのは…品がなさすぎるかな?」

「…」

「この村の最後の住民だね。ここは危ないからついて来てもらうよ。」

「…ぃや…」

「何故かな?」

「みんなと…一緒にいたい…」

「ここにはもういないよ。」

「?!私は…」

心の無い言葉に、シャルは痛みを感じる。顔を上げ、笑顔を見せる男性はシャルの顔を見るなり、爆笑した。


「あははは!!!いやいや!!君最高!!」

「?!」

「悪いね!軽いジョークだよ!村の人達全員。我々勇者が保護している!!」

「え?」

突如、後ろから大きな声がした。


「どこが軽いんや!!ブラックジョークにも限度があるぞ」

振り向くと、緑髪の男性は慌てて現れた。どこから取り出したか分からない手袋を、怪我したシャルに渡す。


「それつけときや。治癒付きのレアモンやで」

「センスのない見た目で悪いね」

「お前のジョークの方がセンスないわ!!」

「フッ」

「?」「あ?」

自分でもよく分からない。みんな死んだと思って絶望していたら。既に勇者様が来て、みんなを助けていた。まだ確証してないのに、保護されていると思うと、シャルは安堵し、目の前で起きているコントの様な会話に、笑いが込み上げて来た。


「なんや?イカれたんか?」

「ますます気に入ったよ。」

シャルは生まれて初めて、涙を流して笑った。




この出来事がキッカケで、シャルは勇者と関わった。後に勇者候補補佐の座に着き、多くの勇者と関わるのは。また。別の話。





---------------

「シャーちゃん!今日はどこに行くの?」

「…ケーキでも食べに行こうか。」

「ケーキ?!やったぁ!!」

「良い店を知ってるんだ。」

「何ケーキ食べよっか?」

「チョコケーキを…ちょこっと。」

「ちょっとだけで良いの?!」

「…ジョークだ。アイスは何を?」

「私はミント!」

ご覧頂きありがとうございます。シャルは本編「世代の勇者」にて、物語に深く関わります。いいねと感想。宜しくお願いします!











------------

「やっと見つけた!」

「?!ビビった!!お前かよ!」

「相変わらず面白い反応」

「…んだよ」

「俺達の事噂になってるぞ。そろそろ帰ろう」

「はぁ…ビビリだなぁ。きゅうりの酢漬け食ってからな」

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