急な来訪者と王女様
「うわぁ〜!すっごい綺麗なお家!!こんなところに住んでるなんて彩ちゃん凄いね!!」
「う、うん!ありがとう…」
放課後の我が家。
普段なら私と優くんの2人だけがいるはずのこの場所に今日転校してきた有紗ちゃんが居る。
事の発端は遡る事3時間前…
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「今日の放課後彩ちゃん家に勉強しに行ってもいい?」
有紗ちゃんの口からとんでもない言葉が発せられた。
その言葉を聞いた瞬間に私は頭をフル回転させた。
もし私の家に有紗ちゃんが来たら優くんと私が同棲しているのがバレてしまう。
普通の人だったら何かしら理由をつけて断ればいいのだがこんな純粋で小動物みたいな子に嘘なんてつけるはずがない!
そして私はひとつの解決方法を導き出した。
「ごめんね、ちょっと家に友達を呼んでもいいか親に聞いてくるね」
「はぁ〜い!いってらっしゃ〜い!」
私は携帯電話を持って教室を出てトイレの個室に入ると即座に優くんにメッセージを送った。
もちろん親に許可をとる必要なんてものは無いためメッセージは優くんにのみ送っている。
『優くん!今日有紗ちゃんが家に来ることになりそうなんだけど同棲のことバレるとめんどくさいから早めに帰ってどうにかして欲しい!私は有紗ちゃんを引き連れてスーパーかどこかで時間を潰すからその間にお掃除をお願いします!!』
と、長文のメッセージの返答は『了解』のスタンプで返ってきた。
スタンプの絵柄で特にどうも思っていなさそうに思えるが恐らく内心すっごく焦っていると思う。
…頑張って、優くん。
私は心の中でそう優くんを応援をした
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というのが今日のお昼休みに怒った出来事だ。
私が有紗ちゃんと家に着いた頃にはもう優くんの靴は玄関には無く、もう外に出て行ったと分かり一安心した。
悠くんは今、月城くんと一緒に遊びに出かけたようで19時頃までは家に帰らないと言っていた。
なので遅くとも19時までには解散する必要がある。
そうしないと優くんがここに帰ってくることによってバレてしまうからだ。
「ねえねえ彩ちゃん!!早く勉強しようよ!!」
「あ、うんそうだね。じゃあリビングでしようか」
「やった〜!買ってきたお菓子食べながらするぞ〜!!」
何故か有紗ちゃんはすっごくテンションが高いがあまり気にせず私たちは家のリビングへと向かった。
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「…でここはねぇ、右の公式に代入して答えの式を求めてから左の公式に代入して計算するの」
「ほぇ〜、なるほど〜」
有紗ちゃんは思っていたより頭が悪いわけではなかった。それどころか教えた所を直ぐに覚えて問題に当てはめれているしそれを応用して問題を解くことができている。
1つ問題があるとすれば
「…お菓子いっぱい食べるね」
「私頭使うと直ぐに糖分とか欲しくなるんだよね」
「あ〜なるほど」
ものすごく勉強などに対する燃費が悪いという事だ。
事実ほんの20分前に開けたお菓子の袋がもう空っぽになっている。
中身はだいぶ量もある大きめの袋に入っているものだったのでかなりの衝撃を受けた。
でもこれで勉強が捗るなら別にいいかなと思える。
「そういえば彩ちゃんがずっとテストで勝てない人ってどんな人なの?」
「えっとね優く…『如月 優希』っていう人だよ」
「あ〜あのちょっと前目の席に居た黒髪赤目の人?」
「そう、あの子。テストでずっと1位を取り続けている子…それどころか運動もできるし性格もいい。そんでもって顔も良い…欠点が無いんだよね」
「ほぉ〜、彩ちゃんがそこまで高評価を与えるような人物…少し話してみたいですなぁ」
「それにしてもその如月くんの話をしている時の彩ちゃんはなんだか嬉しそうというか自慢げというか」
ギクッ
「しかもあんまり話してなさそうな雰囲気なのに凄い細かいところまで知ってるし」
「そ、それは!色々な人に聞いた話というか!周りが噂してるからそうなのかなぁ〜っていう感じというか!それにそんな人とテストで張り合えるのは嬉しいなぁ〜っていうか!」
「あ〜なるほど!確かにそんなすごい人と並んでるんだから嬉しいよね!!」
私は有紗ちゃんを上手く言いくるめることが出来て一安心した。
普通の人ならさっきの言葉で何か関係性があるのかと疑うところだが人を疑わない有紗ちゃんだからこそ今のを回避出来たのだ。
今だけはこの有紗ちゃんの天然な性格で良かったなと心の底から思えた。
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「ふわぁ〜勉強おしまい!!疲れた〜」
「お疲れ様、有紗ちゃん。これジュースだけど飲む?」
「飲む!!」
地面に寝転がっている有紗ちゃんは私の質問を聞くと飛び上がった。
ここだけ見ると本当に子犬にしか見えない。
「じゃあ私はこのジュースを飲み終わったらもう帰ろうかな」
有紗ちゃんの言葉を聞いて私が壁にかけられている時計を見ると時刻は19時に迫ろうとしていた。
元々19時くらいには解散にしようと伝えてあったため有紗はもうすぐ帰ると言い出したのだろう。
それ以上になると優くんとばったり会う可能性もある為、それだけは絶対に避けたいからだ。
そして私は有紗ちゃんを見送るために玄関に向かった。
「じゃあ帰るね!バイバ〜イ!」
「うん、バイバイ」
私は手を振りながら何とか有紗ちゃんにバレずに済んだと心の中でガッツポーズをした。
その瞬間扉が開いた。開けたのは有紗ちゃんでは無く開いた扉の奥にいる人…
そう優くんだ。
優くんは「やっちまった」という顔をしながらフリーズしている。
…最後の最後で最悪の事態が起きてしまった。